■(1)ウサギさんはぴんちです■

ある日、ある時、ある所での話。
リボーンの家に一羽のうさぎがやってきました。
銀の毛並みと緑色の瞳の綺麗なうさぎです。
しかしある朝目覚めると、うさぎは銀の髪の幼いうさ耳少女になっていました。

このお話は我らがリボーンさん(2●才)と一羽の不思議なうさぎの物語なのですが、うさぎのハヤト。前回の続きで大変ピンチな状態なのでありました。


(きゅきゅきゅう〜〜〜〜)


目の前に置かれた温かそうな飲み物。枯葉色に染まったカップの中身に一度視線を落とすと、ハヤトはお茶を注いでくれた少年に頭をぺこりと下げました。


「ありがとうございます」

「いえいえ、お気になさらず」


人に何かしてもらったらまずお礼です。ハヤトはご主人様の言葉を思い出し、言われたとおりお礼の言葉を口にしました。そしてゆっくりと自分の前に置かれたカップに手を伸ばします。

まずは一口。そおっと含んだ瞬間、帽子の中の耳がピクリと動きました。


「あああああああああ熱いいいいいいですううううう」


舌を出して涙目になるハヤト。口に含んだ紅茶を噴出さなかったのはまさに奇跡でした。


「だ、大丈夫ですか?」

「きゅ〜・・・舌がヒリヒリします・・・」

「熱いのは苦手なようですね。冷たい飲み物を用意しますので待っててください」

「あう・・・・すいません・・・」


思えば兎の時に飲んでいたのは新鮮な水だけです。なれない味の上にはじめて飲む暖かな飲み物にびっくりしたハヤトは骸に何度も謝ると、冷蔵庫から出されたばかりの冷たいジュースに口をつけました。


「ふぅ・・・甘いです。果物の味がします」

「リンゴジュースは大丈夫みたいですね」

「きゅー・・・美味しいです」


ニコニコとコップに注がれたリンゴジュースを飲み干すハヤト。その足元でチリンと鈴の音が鳴り響きました。にゃーと泣きながらハヤトの足に甘えるように擦り寄る黒猫。その姿に骸は「あぁ」と短く声をあげました。


「そうでした。クロームにも飲み物を用意しますよ」


クスクスと笑うと骸はもう一度、立ち上がり奥の冷蔵庫へ飲み物を取りに行きます。クロームと呼ばれた黒猫はその言葉に小さく鳴いて答えるとじっと立ち去る飼い主でなく、ハヤトを見つめました。


「きゅ?なんでしょうか・・・?」

「いや・・・ジュースを凄く美味しそうに飲むなぁって」

「きゅ・・・?きゅきゅ!?」


突然聞こえた少女の声にクロームを見つめ思わず椅子から立ち上がるハヤト。キョロキョロと部屋の中を見渡して、そして最後に黒猫に顔を向けます。部屋の中はハヤトとクロームだけです。骸は今、奥にいってしまってるし、ここにいるのは自分と・・・。


「・・・気付いてなかったんだね」


楽しそうな含みのある声にハヤトはパニックを起こしかけてました。ここにいるのは自分と黒猫のクローム。それは小さなウサギの頭でも分かります。


「きゅきゅきゅ・・・ももももももしかしてクロームさんは・・・」

「驚くことじゃないよ。ハヤトも“同じ”なんだから」


クロームはそう言うと床からハヤトの膝に飛び移り顔を寄せます。そして自分の鼻とハヤトの鼻を寄せちょんと触れさせたのです。


「きゅ!!!!!????」


二度目とはいえ猫相手でもこの“挨拶”にはハヤトはなれませんでした。そのショックに立ち上がったウサ耳。そんな耳に押し上げられポトリと床に落ちてしまった帽子。


「クフフ・・・随分二人とも仲がよさそうですね」


人肌に温めた牛乳をもってあらわれた骸の声にハヤトは口をパクパクさせ、声にならない悲鳴を上げました。


『は、ははははハヤト大ピンチですーーーーーーーーーーーーー』


「ハヤト!?」

「だ、大丈夫ですか?」


自分に駆け寄る二人の気配を感じます。が、これ以上はハヤトの小さい頭と体は耐えられないと判断したのでしょう。大きな瞳をくるくると回すとハヤトはその場に倒れこんでしまいました。
同時に閉ざされた視界と音。くるくるとなんだか自分の体が混乱で回っていくのを感じます。


『きゅきゅきゅ・・・ハヤト、もうだめです〜〜〜〜』


そう考えたのを最後にハヤトはうさぎの姿に戻るとバタンと倒れこんでしまいました。




■(2)ゆびきりとないしょのやくそくごと■

くるくると世界が回る中。ハヤトは昨日の夜にご主人様から教えてもらった言葉を思い出してました。


いいか、ハヤト。
人間の世界で暮らしていく中で一番大事な事がある。
他にも覚えていかなきゃいけないこともあるだろうがコレだけは肝に銘じとけ。


キモ?キモって何処ですか?ハヤトの中にもありますか??


・・・・はぁ。言い方が難しかったな。
ようは今から言う事を絶対に守って忘れるなってことだ。


きゅ!わかりました!
ハヤトは守ります!ご主人様の言う事を守る良い仔ですから。


良い仔って自分でいうことじゃないけど、まぁいいか。


きゅ?


良いか、ハヤト。
外に出たら絶対に自分がウサギだって事を人に知られちゃダメだぞ。


きゅきゅ?ハヤトがウサギって知られたらダメなんですか?


あぁ少なくとも俺以外の奴に知られたら大変なことになるだろうな。


大変なこと!?それはどんなことなんですか!?


間違いなく研究所送りだろうな。
人間になるウサギなんて聞いた事がないし。


きゅ!?けんきゅーじょってなんですか?
そこに行くとハヤトはどうなちゃうんでしょうか・・・?


お前相手だと説明も疲れるな。
分かりやすく言えば
『知らない人たちに遠い場所に連れて行かれて色んな事をされる』
くらいに考えとけばいいんじゃないか。


きゅ!!遠い場所ですか・・・。それじゃあ、ご主人様とも離れ離れですか。


まぁ、そうなるだろうな。


きゅ〜〜〜〜〜・・・。


おい、泣くな。


ご主人様と離れるのは嫌です・・・・きゅ〜・・・・。


もしもの話だろ。それにようは俺以外に知られなきゃいいんだ。


はい、そうでした!ハヤトはウサギだって他の人が知らなきゃ大丈夫なんですね!


そうだ。


分かりました!しられないようにします!
ハヤトは口が堅い仔なので絶対にばれないようにします!
絶対絶対知られないようにご主人様に約束しますよーー!


返事はいいな・・・ってなんだ、その手は。


指きりです。指きりげんまんですよ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前は何でそんなしょうも無いことばっかり知ってるんだ?


きゅ?


いや、いい。考えるな。お前の不思議さは今に始まったことじゃないんだった。


はい、じゃあしましょう。
指きーりげんまん嘘ついたらハリセンボンのーます♪



・・・・ゆびきった。
そう無意識に口を動かしながらうさぎの姿でハヤトはエグエグと泣いてしまいました。


『ご主人様ごめんなさい!ハヤトは約束を守れない悪い仔です』


一日も守れないなんて・・・。ハヤトは申し訳ない気持ちで何度も何度も謝りました。
くるくる回る感じはなくなりましたが心の中は悲しみで一杯です。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。骸さんにビックリしてウサギの耳を見られてしまいました。その上、元の姿に戻るところも見られてしまいました。
次に目が覚めたときにはご主人様のいっていた『けんきゅーじょ』でしょうか?

誰かがハヤトを呼んでいます。遠くから、近くから。その声に恐る恐るハヤトは目を開きました。


「何を泣いてるんだ」


耳に入る大好きなその声。自分を見下ろす顔を見てハヤトはうさぎの姿でぴょんと抱きつきました。


「きゅーーーーーー!」


大好きな大好きなご主人様。ハヤトは精一杯の思いを込めるとそう叫んだのでした。


■(3)かいぬしたちとぺっとたち■

「きゅーーーー」

「おい、いい加減離れろ」

「きゅーきゅーーー」

「・・・・ハヤト・・・・」


無理やり引き剥がそうとすると今にも大声で泣き出しそうなハヤト。しゅんとうなだれたウサ耳に、すがるように見上げてくる緑色の瞳。全てをあきらめたりボーンはハヤトを抱きかかえるとと骸の入れた紅茶の置いてあるテーブルの前に座り膝に乗せました。


「一体、何がどうなってるんだ」

「どうやら僕が驚かせてしまったみたいで・・・。てっきり知ってると思ってたんですけどね。あのペットショップの店長や雲雀君からはなにも聞いてないんですか?」

「聞いてないからこうして困惑してるんだろう」

「それもそうですね」


あっさり納得すると、骸は自分の隣の席に座る少女に話しかけました。リボーンはその少女に見覚えがありました。骸の隣に座っていたのは以前、ハヤトと一緒にペットショップで出会った少女“クローム”でした。
リボーンは突然、スタジオに飛び込んできた骸からハヤトが倒れたと聞いて打ち合わせの最中に此処まで慌ててやってきたのです。ハヤトが大変なことになってるから、と。
・・・それがなんで3人でお茶をする事態になってるのか。意識を失っていたハヤトはウサギに戻ってるし、リボーンに呼び起こされてからくっついて離れようとしません。2人にはハヤトのウサギに戻る所は見られたのでしょうか?それなのに何故、こんなにも和やかなムードなのか。リボーンは出された適温のお茶を口に含みながら状況の把握に困り果てていました、


「とりあえず骸。お前はハヤトがウサギだって知ってたのか」

「えぇ、隠してたわけではないですけどね。僕は昔から“見えないものが見える”たちでして。だからハヤト君も一目見て分かりましたよ」

「じゃあスタジオで始めて会ったときから分かって・・・」

「そうです。君と一緒のときに言っても良かったんですけど何ぶん、スタジオは人が多かったですからね。だから落ち着いて話せるように人気のない場所にしたんですけど・・・まさか話す前にハヤト君が倒れるとは思わなくって」

「それで慌てて俺を呼んだ、と」

「その通りです」


クハハハハと笑って誤魔化す骸。リボーンは溜め息をつくと膝の上で未だにきゅーきゅー鳴き続けるうさぎを撫でました。


「とりあえず、お前はハヤトの何処までを知ってるんだ」

「そうですね・・・ハヤト君がウサギで人間にもなれるってことでしょうか」

「他の奴に言うつもりは」

「無いのでご安心を。僕だって自分で自分の首を絞めるつもりは無いですしね」

「・・・どういう意味だ?」

「僕の飼い猫のクローム。あの仔も“同じ”ですから」


今、君の目の前でミルクを飲んでるでしょう?にっこりと微笑む骸にリボーンは首を横にそらしました
骸の隣で黙ってやり取りを眺めている少女。まさかこの少女も?リボーンが疑問を口にする前に少女は椅子から立つとにっこりリボーンたちに微笑みました。そしてポフという奇妙な音を出すと突然、一同の前から姿を消します。そして消えた少女の代わりに現れる黒猫。黒猫は「にゃあ」と一鳴きするとリボーンの膝の上のハヤトに近寄りました。


「ごめんね。てっきり聞いてると思ったから」


申し訳なさそうな声。その声は間違いなく黒猫の口から消えたものでした。


「・・・きゅ〜・・・・」

「本当に驚かせるつもりは無かったの。・・・ボスから何も教えてもらってない仔がいるとは思わなくて」

「・・・きゅ?ボス?」

「ハヤトの言う“十代目”のことだよ」

「ようはツナのことか。あいつも色んな呼ばれ方してるな」

「ツナって名前は最近ついたみたいですからね。それまでは彼には名称が無かったみたいですから」

「なんだそれは・・・」


骸な不思議な言い回しにリボーンは眉をひそめます。本当に自分とハヤトは知らないことだらけのようです。そして今自分たちの前にいる骸とクロームはリボーンたちより色んな事を知っているようです。


「聞かせてもらえないか?」


あのペットショップのこと。そして・・・ハヤトたちのこと。
リボーンのその言葉に骸は笑顔で頷きました。




■(4)ないしょのはなし■


「僕が知ってることも少ないんですよ」





あのペットショップは気がつけばこの街にありました。
いつからあって、どこからきたのか。それを知るすべはありません。

ただ気がつけばそこにあり、いつのまにかあって当たり前になっていたのです。

僕は幼い頃の経験から少しく特殊な能力がありまして、先ほど言ったとおり普通の人の“見えないもの”が見える力があります。別に目で見えるだけで、それをどうにかできる能力はありませんが・・・。

ただあの店が出来てから、僕はその力ゆえに面白いものが見えるようになりました。
ハヤト君のような動物でも人間でもない不思議な生き物。それが街のいたるところで見受けられるようになったのです。そしてそれがあのお店が出来てからで、あのお店で売られている『ペット』たちである事を知ったのはそれからすぐのことでした。

興味は引かれた僕はそれからあのお店にしばしば顔を出すようになりました。僕の力に興味を持ってか店長も僕の来店を楽しみにしてくれたように感じます。
あのお店には僕の想像通りハヤト君のようなペット達で溢れていました。しかし店長はそのペット達をとても愛してましたし、買われていく彼らも幸せそうでしたので僕としてはなにも聞く事が出来ませんでした。不思議な生き物のことも店長自身のことも。謎だらけで普通なら気味が悪く感じるところだったのに、なぜか僕は答えを求めなかったんです。

そんなある日のことです。ハヤト君がやってきたのは。お店に着たばかりの頃のハヤト君はとても弱弱しくて、いつも一緒にお店にやってきたお姉さんのウサギと一緒にお店の奥で眠っていました。けどそんなハヤト君を見て彼は誇らしげに言ったものです。


『この仔は俺の最後の賭けなんだよ』


言葉の意味は分かりませんでしたが、彼がハヤト君を特別視する理由は数日後に分かりました。彼が今まで語らならなかった自分の名前を教えてくれたのです。

それがいまリボーンが呼んでいる“ツナ”という名前です。

ハヤト君と彼の名前がどんなつながりがあったか分かりません。けどハヤト君が来た事で初めて彼自身を見る事が出来るようになりました。
僕の目から見て、ただのウサ耳を持つ少女にどんな効果があったのか知りません。ただ彼の中で大きな変化があった。それは確かな答えでした。





「つまりはハヤトは特別なペットだってことか?」

「少なくともあの店の店長にとってはそうですね」

「でもなら・・・なんでそんな大事な奴を俺に売ったんだ?」

「それには僕も驚きました。けど、彼はよく言ってましたよ。“ここのペット達には運命の相手がいる。それを引き合わせるのが自分の役目だ”って。だからウサギのハヤト君にとってはあなたがその、決まった相手だったんでしょうね」

「運命の相手・・・最初からペットと飼い主の組み合わせは決まってるということか」

「そういっても過言ではないでしょうね。実際にあのお店は選ばれた人たちしかいけないみたいですし。『飼い主がペットを選ぶ』んじゃなくって、『ペットによって飼い主が選び出される』。そういうシステムみたいです」

「じゃあ俺はハヤトに選ばれた、と?」

「それはちょっと違いますね。彼の言葉を借りれば・・・“運命”って奴ですよ」





僕とクロームの出会いも運命的でした。

クロームはまだ仕入れられたばかりの猫でした。不吉と呼ばれる真っ黒な毛並み。黒猫は不幸を呼ぶと最初に言い出したのは誰なんでしょうね。僕はそいつにあったら殴ってやりたいくらいです。
クロームはそんな言われのある容姿のせいでしょうか。うっかりお店を飛び出して迷子になった後、近所の子供達に見つかり酷い仕打ちをされていました。子供達に見つかる前にも色々な目にあったのでしょう。片目には傷を負い、体中が傷だらけ。人間の姿に怯え小さく震えながら石を投げつけられていました。

僕は発見したのはそんなときです。あのペットショップの店長に頼まれて逃げ出したクロームを探していたところで偶然発見したのでした。
子供は人に見られ怒られる事を恐れたのか、僕の姿を見ると一目散に逃げ出していきました。その場に残ったのは傷だらけの黒猫。僕はお店に届けようと抱きかかえたのですがそのとき、彼のいっていた運命を感じたのです。


腕の中に抱いた小さな命。
クロームを抱きしめた瞬間、僕達は出会うべくしてであったのだと感じました。


お店に彼女を届けた後、彼は笑っていましたよ。一言僕達を見てこう言ったんです。


『その仔、クロームって言うんだ。大事に飼ってやってね』


彼にはわかっていたんでしょう。僕がクロームの飼い主になるという事が。





「だから、君も飼うときに感じませんでしたか?運命を」

「・・・・・・・・・ばかばかしい」

「けどあのペットショップには他にもウサギがいたはずです。けどその中でたった一羽、ハヤト君を選んだ。他の誰でもなくその仔を選んだ。コレは紛れもない事実でしょう」

「・・・・・・・」

「クフフ・・・僕が教えて上げられることはコレで全部です。仕事を途中で中断させて申し訳ありませんでしたね」

「かまわない。俺こそ、色々聞かせてもらって悪かったな」

「お気になさらず。またゆっくり、ハヤト君と話をさせてくださいね。ここに連れてくればクロームも喜ぶと思いますし、スタジオには自由に入れるように僕から話をしておきます。」




■(5)おやすみなさい■

スタジオ・黒耀を出て数分。骸と長い時間話し込んでたせいか二人(正しくは一人と一羽)が家に着く頃にはもう真っ暗な時間になってしまっていました。


「なんだか昨日に引き続き、どっと疲れたな」

「きゅー・・・」

「ってお前はいつまでウサギの姿でいるつもりなんだ」

「きゅー・・・・・・・・だって・・・・きゅー・・・」


弱弱しく鳴くとハヤトはぎゅっとリボーンを掴みました。


「ハヤト・・・ウサギだってご主人様以外にばれてしまいました。明日にでも“けんきゅーじょ”にいかなきゃなんですよね?ご主人様とはなれなければならないんですよね・・・」

「あぁ、その事を気にしてたのか」


苦笑気味にハヤトを見つめるリボーン。きゅーきゅーと腕の中で鳴き続けるハヤトを優しく撫でるとリボーンは諭すように話し続けました。


「それなら大丈夫だ。骸とクロームにはお前の正体はばれても心配ない」

「じゃあ、じゃあご主人様と離れなくてもいいんですか!」

「そういうことだ。だから安心して人間の姿に戻れ」


いい加減腕も疲れてきたしな。小さくそう付け加えるとリボーンはハヤトをゆっくりとフローリングの床に下ろします。その瞬間、ポフという音と共に人間に戻るハヤト。
ハヤトはリボーンの言葉に安心しきったのかウサギの耳をピンと伸ばすと、ぴょんと跳ねて今度は人間の姿で抱きつきました。


「きゅー良かったです!ご主人様と一緒一緒です!」

「わっ!嬉しいのは分かったから落ち着け!!」

「うれしんです・・・きゅーーーー!!」

「はぁ・・・分かった分かった。俺は逃げやしないからとりあえず離れろ」

「きゅ?」


不思議そうに見上げるハヤト。綺麗な銀髪に手を伸ばすと、リボーンは何度も何度も頭を撫でてあげました。


「抱きつかなくても一緒にいてやるっていってるんだ」

「きゅ・・・」

「だから落ち着け」

「きゅ〜vvvv」


ポンポンと撫でられ目を細めて喜ぶハヤト。気がつけばハヤトはその腕の動きにあわせてコクリコクリと首を揺らし始めました。


「きゅ・・・きゅ・・・・」

「おい、ハヤト?」

「きゅ・・・いっしょ・・・です・・・きゅ・・・・ごしゅじんさま・・・・」

「・・・・・・・・」

「きゅ〜・・・・・・すぴすぴ・・・」

「寝たの、か?」


リボーンの呟きと一緒にコテンと倒れこむハヤトからは気持ちのよさそうな寝息が聞こえました。ずっと緊張して気が張っていたのでしょう。安心しきった寝顔はとても嬉しそうに感じられます。


「運命・・・か」


リボーンの腕に擦り寄るように眠るハヤトの顔を見つめポツリと一言。
骸はペットと飼い主のつながりは運命だと例えてました。




『骸』

『はい、なんですか』

『お前はクロームに会ったときに・・・どういう風に運命を感じたんだ』

『・・・・それは、ですね。僕の場合は“見えなかった”からですよ』

『見えなかった?』

『ハヤト君や、あのお店で売られている他のペットたちの姿は僕には人間にも動物にも見えます。けどクロームだけは違うんです。僕には黒猫にしか見えない。人の言葉をしゃべっても彼女が人の姿に変身してもそれは変わらないんです』

『つまり、さっきの姿も?』

『僕にはどうしてか彼女の姿は黒猫にしか見えません。君達が“少女”に見えてた、さっきの姿もです』

『・・・・それがお前の運命か?』

『・・・・僕はただ理由を知りたいだけかもしれない。なぜ彼女だけ違うのか。なぜ彼女だけ“見えない”のか。僕はそれに運命を感じた。それじゃあダメですか?』




それが骸の理由なら自分は何に運命を感じたのでしょう?
ペットショップにいた小さな子ウサギのハヤト。ウサギは他にもいました血統書つきといわれるものもいました。それなのに何故、ハヤトを選んだのか。

偶然なのか運命なのか。その答えはりボーンには分かりません。
けど、あの日あの時あの店で。リボーンはハヤトを選び、今一緒にいるのです。
それを運命の一言で片付けていいのか。リボーンは自分の考えのばかばかしさに苦笑すると、眠るハヤトの髪をずっと撫で続けるのでした。


ある日、ある時、ある所での話。
リボーンの家に一羽のうさぎがやってきました。
銀の毛並みと緑色の瞳の綺麗なうさぎです。
しかしある朝目覚めると、うさぎは銀の髪の幼いうさ耳少女になっていました。

このお話は我らがリボーンさん(2●才)と一羽の不思議なうさぎの物語。
まだ物語は始まったみたいです。



前回の後編でございます!骸さんとクロームさんの登場!!
とりあえずポツリポツリと周りも固めて行きたいです。微妙に伏線が増えたり減ったり。けど登場するキャラは全員出したのであとは絡めて話をつなげていきたいと思います。


それではここまで読んでいただき有難うございましたー!


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花ミドリ恋ワズライ のヒビキ様ことご主人さまの拍手をれいによって強奪です☆
ゆ…指きり! 指きりとか可愛い! もゆるなぁさすがご主人さま!!
リボーンさんにくっついて離れないハヤトとかそんなハヤトに弱いリボーンさんとかにときめきつつも色々出てきた謎にどきどき。
ここからどんな展開になってゆくのか! 熊は絶賛ご主人さまを応援してますぜ☆ はぅー続き続き! 早く!(鬼か貴様)

ではご主人さま、やっぱり萌えーな獄うさぎたんをありがとうございました!