「リボーン」


「なんだ」


「お前…本当に獄寺くんのことが好きなのかよ」


「……急にどうした」


「別に。ただのお節介」


「はぁ…?」


「お前、獄寺くんにちゃんと言葉にして自分の気持ち言ったことないだろ」


「それが…」


「獄寺くんはお前みたいに読心術が使えるわけじゃないんだから、ちゃんと言ってやれよな」


「………」










そんなことをツナに言われたのが、今朝のことだ。


まったく、一体なんなんだツナの野郎。ダメツナのくせにこのオレに説教とはいい度胸だ。


大体余計なお世話なんだ。オレたちの話は二人の問題なのであって、第三者であるあいつが何故口出しをしてくる。


まぁツナはツナでオレたちの(主に獄寺の)心配をしているだけなんだろうが、それは取り越し苦労という奴だな。わざわざ口にしなくともあいつはちゃんとオレの気持ちを………





「そんで? どこに行くんだマーモン」


「とりあえず家光のところに…」





……………。



ちょっと待て。



オレは思わずよろめいた。その拍子にゴン、と電柱に頭を思いっきり打ち付けた。痛い。が、いや、そんなことよりも。


…なんで獄寺が、マーモンと一緒に歩いてるんだ?


待てちょっと待て。おかしいこれはおかしい何かの間違いだそうに決まっている。誤解で色々複雑な事情があって止むを得なくて決定的な瞬間を見てしまっただそれだけなんだこれは!


つーか獄寺…なんであいつマーモンを胸元に抱え込んでいるんだ? オレですらあの場所に収まったことないのに!


どういうことだマーモンか。マーモンが全ての元凶というそういう解釈でいいのかそうだなとりあえずあいつはあとで死ぬほど後悔させてやるとしてつか獄寺なんで嫌がってないんだよ!!



お前はオレじゃなくてもいいのか!


お前は小さければなんでもいいのか!



お前はオレの身体だけが目的だったのか!!



………ふぅ。危ない危ない。危うくよく分からない事態に陥るところだった。もう既に陥ってるがそれには目を向けず気にしない。大丈夫。オレは冷静だ。


そんなことは置いといて獄寺だ。つーかオレはなんでこんな電柱の裏からこそこそと二人をストーカーのように引っ付いて追いかけてるんだ?



オレと獄寺は恋人同士なんだからむしろ問い詰めてしかるべきだろう。そうして一体何が悪い。


さてじゃあ前に出るか。んで獄寺に事情を聞いてマーモンを全殺しにして息の根を止める。完璧だ。


…そう思っているのにどうしてオレの足は動かねーんだ? 変なところで腑抜けてんなオレは…


つーか何故オレの脳裏には数秒後の未来視として獄寺に振られてるヴィジョンが描かれてるわけだ? おいおい止めろ。不安になるだろ!





「リボーンさん…」


「獄寺…」


「丁度よかったです。…オレ、リボーンさんにお話しすることがあるんです」


「…何の話だ?」


「オレ……マーモンと付き合うことにしたんです」


「ほ…本気か獄寺!? ちょっと待てそれは一体どういうことだ!」


「どういうことも何も、そのままの意味だけど」


「マーモンてめぇ! オレの獄寺を誑かしやがったな!!」


「止めてくださいリボーンさん! 全部オレが悪いんです!!」


「獄寺…?」


「オレ…ずっと寂しくて………リボーンさん…全然オレに構ってくれないし…会話も……」


「それは…」


「分かってます。それがあなたなんですよね。…でもオレは…それだけじゃ、耐え切れないみたいで………」


「獄寺……」


「女々しい奴ですよね。オレ……でもオレ…もう毎日が辛くて、それならいっそ、別の人と……」


「……………」


「さようならリボーンさん。今まで本当に……本当にありがとうございました」


「獄…寺……」


「じゃあねリボーン。大丈夫、隼人は僕が責任を持って幸せにするから。…行こう隼人。愛しているよ…」


「マーモン……」



「ま、て……行くな、戻って来い獄寺!!!」



「は、はい! どうしましたかリボーンさん!?」


は!?


気が付けば眼前に獄寺(とマーモン)がいた。


どうやら先ほどの脳内妄想に口を出して叫んでいたみたいだ。まるで危ない奴じゃないかオレは。


じゃなくて。とにかく今は目の前の獄寺だ。



「ご…獄寺」


「………?」



何故だかオレの喉はからからで。言葉を出すのがやけに難しく感じられた。



「オレは…こういうことはあまり口にしないから誤解されやすいんだが……でもオレはお前のことちゃんと……あ、愛してるんだからな…!」


「―――リボーンさん………」



獄寺の頬が仄かに赤く染まった。たぶんオレの顔も真っ赤だ。そんな顔を獄寺に見られたくなくて、オレは帽子を目深く被り直した。



「ありがとうございます! オレもリボーンさんのこと大好きです!!」



獄寺は感極まったのか、マーモンを横に置いてオレを抱きしめてきた。









「……………何この置いてきぼり感」


うるせぇ黙れ。










「…というわけで、あとはよろしくお願いします。お父さま」


「ああ分かった。オレの方から上手く言っとく」


「すいません、お手数をお掛けしまして…」


「いいって。これも仕事のうちだ。獄寺くんには息子も世話になってるし、それにあのリボーンの恋人からの頼みなら断れない」


「そんな、恐れ多いです…!」


「いいって。つかリボーンは…あいつは基本的に気持ちを口にしない奴だから誤解を招きやすいんだが…でも獄寺くんのこと大事に思ってるはずだから。分かってやってくれな」


「はい。大丈夫です。リボーンさんがどんな人か分かってるつもりですし…それに……」


「それに?」


「それに…実は今日。………リボーンさんにあ…あ……愛してるって。言ってもらえましたからっ」


「あのリボーンが…珍しいな……」



「………やっぱり余計なお世話だったかな…」


「あ。10代目こんにちは」


「いらっしゃい獄寺くん。そのマーモンどうしたの?」


「道端でばったり会って…困ってたみたいだったので」


「ボスに見つかったら殺される…がくがく」


「保護してほしいって頼まれたんですよ」


「ふーん…でも何で抱きかかえてるのさ」


「足を怪我してるみたいで…歩けなかったみたいなので」


「荷物のように小脇に抱えてもよかったんじゃね?」


「お前それひどくね?」


「別にそれでもよかったのですが…」


「よかったのかよ」


「……………その、」


「ん?」


「いつか……リボーンさんを抱きしめられる日が来たとして…その日の予行練習と言います、か………って言うかついさっきその機会得られたんですけどっ」


「……………」


「うわああああああああっ」


「ぎゃー!!!」


「あー、獄寺くん獄寺くん。そのときを思い出したからってマーモンをぎゅーてしない。一応そいつ怪我人だから。マーモン苦しんでるから


「あ。わり」











数日後大空戦応援サイド。





リボ「みんな猛毒喰らってんなー」


バジ「そうですねー」


リボ「マーモンも猛毒喰らってんなー」


バジ「敵対しているとはいえ…一度戦いで敗れたものがまた苦しむさまを見るのは心苦しいですね…」



リボ「マーモンザマァ」



バジ「リ、リボーン殿!? コロネロ殿! リボーン殿がなにやらブラックです!!」


コロ「気にすんな。あいつは時々おかしくなるんだぜコラ」



リボ「聞こえてっぞ二人とも」



バジ「ひ!? すいませんリボーン殿!!」


リボ「ああ…って今度はお前かランボ…! ちょ、そのポジションずるすぎるだろお前!! あいつあとで絶対殺す!!!





ツナ(あっちはあっちで白熱してんなー…)




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ランボも可哀想に。