獄寺がその日受けた任務は、少し大きな抗争で。


獄寺がボンゴレを出る直前、リボーンと会った。


「リボーンさん」


「行くのか」


「ええ」


どうやら見送りに来てくれたらしい。こんなことは今までなかった。


「どうかされたんですか?」


「いや、たまたま通りかかっただけだ」


そうですか、と獄寺は答えリボーンに会釈を返し歩き出す。


獄寺がリボーンを通り過ぎて数歩。リボーンが獄寺の背に声を掛ける。


「獄寺」


「はい?」


「気を抜くなよ。お前は詰めが甘い。お前の悪い癖だ」


「…分かってますよ」


獄寺は少し口を尖らせてそう言って、ボンゴレをあとにした。





次の日、獄寺は意識不明の重傷でボンゴレに搬送されてきた。


その知らせを聞いたリボーンは思わずため息を吐いた。


「…だから気を抜くなっつったのに」


そう呟かれた言葉は、誰にも届くことはなかった。





獄寺は病室でひとり、眠りについていた。


白い包帯を幾重にも巻き、点滴を打たれ、輸血を受けていた。瞼は硬く閉じられている。


リボーンはベッド脇に置かれている椅子に座った。静かに獄寺を見遣る。


まったく、こいつは本当によく死にかける。とリボーンは一人ごちる。


初めて会ったときからそうだ。初っ端からこいつは自爆しかけた。そのときの獄寺は死を覚悟していた。


それからもツナが入院したとき見舞いに行こうとして車に撥ねられたり。


対柿本千種戦では毒と出血で倒れた。シャマルがいなかったら死んでいた。


対ベルフェゴール戦では全身を切り刻まれた。獄寺が勝ちに執着していたら死んでいた。


ようやく自分の命を大事にするよう考えたかと思ったら、拷問を受けた。長く目を覚まさなかった。


それからも、それからも、それからも。


獄寺は幾度となく傷付き、倒れ、生死の境を彷徨った。


立場上、性格上ある程度は仕方のないことなのかもしれないが…


会ってから今日までを思い返して、リボーンは再びため息を吐く。


ああ、もう。



10年経っても目が離せない。



獄寺が微かに身動ぎしたのを見据えてリボーンは静かに立ち上がり病室をあとにする。


音もなく扉が閉じられるのと同時に獄寺の目が薄く開かれたが、獄寺は意識が戻るまで隣に誰がいたのかを知る由もない。





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彼が告げないのだから、知れる由がない。


リクエスト「リボ様はリボ様なりに獄を思っているて〜き〜な☆」
リクエストありがとうございました。