「リボーンさん…リボーンさんお願いです!! 眼を開けて下さい!!」
獄寺は涙ながらに訴え掛ける。前にいるのはベッドに横たわるリボーンだ。
そのリボーンは額に汗を掻き、荒い息を繰り返している。
一目で分かる。病気だと。
獄寺は何度も何度もリボーンの名を呼び、起こそうとしている。
まるでこのままだと今生の別れになるかのように。
「リボーンさん…寝ないで下さい、起きて下さい…!! リボーンさん!!」
時は少し遡る。
いつもポーカーフェイスのリボーンが、珍しく顔を顰めていた。
それが始まり。
「リボーンさん、どうなされたんですか?」
「…気にすんな。少し…頭痛がするだけだ」
「少し横になった方が…それともシャマルを呼びましょうか? それとも病院に……」
「気にすんなって言っただろ。そこまでのもんじゃない」
「ですが…」
獄寺が心配するのも無理はない。それほどリボーンは具合が悪そうなのだ。
「…少なくとも医者は…いい。薬は効かないからな」
「リボーンさん…」
その話は聞いたことがある。10年に一度、アルコバレーノは病に掛かると。
その病は死ぬことはないものの効く薬が存在せず、治るまでただただ苦しむしかないのだと。
「…そんな顔すんな」
大きな手が獄寺の頬を撫でる。熱い手。熱がある。
「では…せめて、横になって下さい。それだけでも、少しは…ましになるかも知れません」
「分かった分かった」
リボーンは倒れこむようにベッドに落ちた。獄寺が慌てて駆け寄る。
「リボーンさん…」
「獄寺…」
リボーンが獄寺を引き寄せる。
軽く、小さな、淡い口付けをして。
「…愛してる」
言って、寝入ってしまった。
取り残された獄寺は口元に手をやり、赤い顔で今の言葉を反響していた。
そうだ、これも聞いたことがある。この病は寝入る前、思う人物に本心を告げてしまうのだと。
つまり今のは、リボーンの、紛れもない本音―――
「リボーンさん!!」
そして冒頭に戻る。
「リボーンさん…リボーンさんお願いです!! 眼を開けて下さい!!」
滅多に聞けぬ本音を、しかも嬉しい本音を聞けるのが今だけならば。
「リボーンさん…寝ないで下さい、起きて下さい…!! リボーンさん!!」
獄寺は今だけ、鬼にすらなる。
「………ぅ」
獄寺の願いが届いたのか、リボーンの意識が戻る。
「リボーンさん! 起きたんですか!?」
「ごく…でら…?」
「リボーンさん! ワンモア! ワンモア!! もう一回お願いします!!」
必死な獄寺の声。しかしリボーンには聞こえていないのだろう。獄寺の頭を撫でる。
「…ずっと好きだった…けど言えなくて……今まで、すまなかった」
「リボーンさん…いえ、その言葉を聞けただけで…オレは…オレは……」
じんわりと心が温まる。今まで誤解とすれ違いばかりだったのだ。自分達は。
そうだと知ると同時、知らず傷ついていた心が癒えていく。涙すら溢れそう。
その手はリボーンの胸倉を掴んでいた。
「リボーンさん! 寝ないで下さいリボーンさん!!」
そして上下に揺らす。ぐわんぐわんと。締め付ける勢いで。
「リボーンさん! まだ…まだ足りません!! もっと言って下さい嬉しいこと!!」
「ご…ごく……」
リボーンが何かを言おうとしてるが胸倉にあったはずの手がいつの間にかネクタイまで伸びておりリボーンの首を絞めていた。
「あ、失礼しました」
獄寺がぱっと手を離す。
「…そういう馬鹿なところも、正直可愛いと思ってる」
「リボーンさん!!」
きゅん!! と獄寺の胸が高鳴る。
昔から皆から馬鹿だ馬鹿だと言われ続け、敬愛する10代目にすら呆れられることもあるのにこの方は可愛いと思ってくれてた!!
もう獄寺はきゅんきゅんである。身を捩じらせ、感動に打ち震える。
その後も獄寺のリボーンの本音を聞きたい行動は実に一時間にも至ったとか。
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「リボーンさん! もう一回! もう一回!!」
「獄寺…愛しているからもう寝かせてくれ…」