「獄寺氏」
「ん?」
「好きです」
「ふーん」
僕が一世一代の大告白を行ったというのに、当の獄寺氏の返事はかなり素っ気ないものでした。
青い告白
「獄寺氏! 僕は本気です!! 獄寺氏が好きです愛してます!!」
「そっか」
獄寺氏は手に取ってる雑誌から目を離さずに、なんだか上の空で答えてくる。
……そりゃあ僕はまだまだ子供で、獄寺氏にとっては年の離れた弟みたいな感覚でしかないってことも分かりますけど…
でも、僕は本気なんです!!
「獄寺氏!!」
僕は未だ雑誌を手にして僕の方を見向きもしない獄寺氏を座っていたソファに押し倒す。雑誌が床に落ちた。
「…ランボ?」
獄寺氏が僕を見上げる。僕は積を切ったかのように叫んだ。
「獄寺氏! 僕は本当に獄寺氏のことが好きなんです!! 兄みたいとか、そんな好きじゃなく、もっと…こ、恋人とか、そういう意味で獄寺氏のことが好きなんです!!」
途中から涙がぽろぽろと溢れ出た。日本に来てから随分経つのに、泣き虫なのは変わらない。
僕が泣き出したからか、獄寺氏は少し戸惑ったような顔をしていた。
「獄寺氏は…こんな僕、嫌いですか? 迷惑ですか? 男同士で……気持ち悪いですか?」
「えっとな、ランボ…まず落ち着け?」
そこまで言われて、僕は自分がかなり動揺していることが分かった。だけど落ち着くことなんて出来ない。獄寺氏から返事を聞くまでは。
「獄寺氏は……」
「ん?」
「獄寺氏は何でそんな落ち着いてるんですか? こ、告白とかされたら…普通驚くものでは?」
「いやだって。知ってたし」
「……………は?」
このときの僕の顔はかなり間抜けだったらしい。これからこのネタで散々獄寺氏にからかわれることになる。
…まぁそれはともかく。僕は今まで獄寺氏に『好き』だと言ったことはない。だから獄寺氏は知る由もないはずなのに。
「い、いつから…?」
「んー、よく覚えてないけど結構前から……なんか好かれてるなーって」
……顔が赤くなっていくのが分かった。穴があったら入りたい。
獄寺氏は笑いながら床に落ちた雑誌を拾い上げた。僕に押し倒された格好のまま、また読み始める。
………獄寺氏、一応僕、そーゆー知識もあるのですが…危機感なさすぎでは?
「ランボー。今夜の晩飯ピザとパスタどっちがいい?」
「……マルガリータピッツァ。ではなくて!!」
危ない危ない。危うくあやふやのまま流されるところでした。
「獄寺氏の気持ち、聞いてません」
「嫌いだったら張っ倒してる」
「もっと具体的に!!」
獄寺氏は僕を一瞥して、そうかと思うと悪戯っ子が悪戯を思いついたときのような顔をして…
ぐいっ
「うわっ」
片腕を使って、その口元に僕の耳を引き寄せて。囁いた。
「affezionarsi」
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かぁぁぁぁぁっ
今度は、さっきと比べ物にならないぐらい、顔が赤くなるのが分かった。
獄寺氏は赤い銅像と化した僕を放っといて、また雑誌を読むのを再開したけど、僕はそんなことにも気付かなくて。
獄寺氏が雑誌を読み終えて、未だ硬直状態の僕を床に転げ倒すまで。ずっと頭の中でさっきの獄寺氏の台詞をリフレインさせていた。
"好きだよ" なんて。そんな甘い言葉を。ずっと。
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獄寺氏…男前過ぎです。