よく分からないけれど…気持ちが悪い。


まるで何かに少しずつ、削られていくように…溶け込まれていくように。


自分が自分でなくなるように―――気持ちが悪い。



過ち



ぞわりぞわりと背筋に沿って、何かが走ってく。


その感覚の気持ち悪さに悪寒が走る。けれど、我慢出来ないほどでもない。



おい大丈夫か? お前足元ふらついてるぞ?


うるせぇな。大丈夫だよ。



―――ねぇ。前から思ってたんだけど…顔色悪くない? あの医者の所に行けば?


あ? お前があいつを紹介する…? それほどまでにオレはやばく見えるのか? マジか。



獄寺。反応が鈍くなってるが何かあったのか?


いきなり銃を突き付けて言う台詞がそれですか?



大丈夫、大丈夫です。大丈夫なんです。


だって、これは…こんなのは、もう何年も前から続いてきているのですから。


ずっとずっと。オレはこの症状と付き合ってきたのですから。


―――ああ、でも。今回のは少しばかり辛いかもですね。


でも、それでも大丈夫です。


オレには特効薬があるのですから。



「―――獄寺くん?」


「10代目」



ほら。辛い症状なんて全部吹っ飛んだ。


本当にすっと。まるで逃げていくように。


「…獄寺くん? 最近調子が悪いって聞いたけど……何かあったの?」



そんな、特に変わったことなんてないですよ。心配しないで下さい。



「―――クフフ…」


「!?」



…え? 今オレ、なにか言いました?



「お久し振りですねぇ。逢いたかったですよ? ボンゴレ10代目」


「六道…骸!! お前、オレの獄寺くんに一体なにを…!」


「貴方は言われないと分からないほどの愚か者ではないはずですが…僕の思い違いですか?」



10代目? どうしたんですか? なんでそんな怖い顔してるんですか?



「骸! まずは獄寺くんから離れろ! お前みたいな奴がオレの獄寺くんを穢すな!!」


「そうは言われましてももう僕と彼は一身に近い関係ですからね。無理です」



10代目…何だか、周りの声が聞こえないです。今何が起きているのですか?



「一身…? お前、一体いつから…!!」


「かれこれそろそろ10年になりますか。貴方に気付かれないように隠れながらの作業でしたから中々骨が折れましたよ」



―――10代目。オレもしかして何か言ってます? 何も分からないんです。何も…



「骸! オレの獄寺くんを返せ! 返せ返せ!!」


「ああ、痛い痛い。痛いですよ10代目。そんな乱暴にしたら壊れてしまいます」



「―――い、た…10代目?」


「ご、獄寺くん!? 獄寺くんなの!?」


「10代目? 今、何かありました? オレ…」


「ああ、いい! いいから! 何も気にしないでいいから! 獄寺くん、獄寺くん、獄寺くん…!」



そう言って、10代目はオレをきつく抱き締める。


その腕は震えていて、その顔は涙で濡れていて。


何があったのだろうと思いつつも、これで10代目が落ち着くならとオレは力を抜いて10代目にされるがままにする。


その時、オレの顔がオレの意思とは関係なく邪悪な笑みに歪められたことになんて気付きもせず。





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オレの心の中に誰かがいるなんて知る由もなく。