ボンゴレオフィスどたばた騒動
時は夕暮れ。大体の企業ではお勤め終了という時間帯になった。
それはどうやら、マフィアでも違いはないらしく。
「あー、終わった終わった! 獄寺、これから飲みに行かね? オレいい所見つけたんだよー」
「…彼と行くぐらいなら、僕と一緒にいた方が遥かに有意義な時間過ごせるよ隼人。そんな訳で出掛けようか」
「いや、オレはまだ仕事が…」
一体どこのオフィスだと思われそうだが、ここはこう見えてもれっきとしたマフィアのアジトであり、そして彼らもれっきとしたマフィアなのであった。
「仕事なんて明日でもいいだろ〜?」
と、山本がしつこく獄寺を誘っているといきなりドアが開かれた。そして走ってくる牛柄の服を着た少年。
「獄寺氏ーっ!!」
やってきたのはランボだった。獄寺を見つけてはまっしぐらに駆けてくる。
「あれ? ランボ、また来たのか?」
獄寺はというと、まるで年の離れた弟に対するように接していた。それをよく思わない人間が二人。
「こらガキ。獄寺が何も言わないからって調子に乗るなよ。とりあえず離れろ」
「ていうか、ボヴィーノ程度の人間がちょくちょく遊びに来れるここがむしろ問題なのかも知れないね。今度潰そうか」
あからさまに二人を引き剥がそうとする山本に不敵に笑う雲雀。やってる事は違えど、目的は同じであった。
とりあえずとランボを獄寺から離れさせようとする山本。そこに、いきなり煙と子供の喚き声が聞こえてきた。
15歳の伊達な少年は、五歳の泣き虫な子供になっていた。
「…また10年バズーカか」
遥か昔を思い出して獄寺は笑う。山本は怒りの行き場を失くして困っていた。
仔ランボが現在の状況に気付いて。獄寺を見つけると…
「ゴクデラー!!」
と、獄寺に泣きついてきた。獄寺の胸の中で泣き止む仔ランボ。
獄寺にとってはもう慣れたもので。流石に10年バズーカで仔ランボがやってくる度に泣きつかれたのではもう諦めるしかない。
その現状に、どうしても納得出来ないのが他の人間で。
「…獄寺。いくらガキだからって、そう甘やかしすぎるのはよくねぇと思うんだ」
「はぁ? お前が昔からやってたことだろうがこれは。今更なに言ってんだ」
「まったく、キミはいつからそんなに柔らかくなってしまったのだろうね。初対面の頃のあの若さはどこにいってしまったのか」
「…その台詞はお前にそっくりそのまま返してやる。てめぇ昔の自分を思い出してみろ」
獄寺の最もな言い分に、二人は口を紡ぐしかなかった。
泣き止んだ仔ランボはというと、獄寺の胸から離れ、肩によじ登っていた。
「何やってんだ?」
「がはははははっ! よくリボーンがヤマモトの肩に座ってるから、ランボさんはゴクデラの肩に座るんだもんね!!」
それを聞いた山本はとりあえず仔ランボをひょいと鷲掴みにし、それを阻止した。
「それ以上の獄寺との接近は許さん」
行動源は嫉妬心だった。
―――――と、ここで五分が経過した。してしまった。
山本は急に増えた体積に抵抗しきれず、戻ってきたランボを手放してしまう。
その下にいるのは、当然獄寺。
結果。獄寺はランボに押し倒される形となってしまった。
そして、丁度その時。
ガチャ。
「獄寺くん、この書類について聞きたいことがあるんだけど。それでそのあと、一緒に食事にで、も…」
獄寺を溺愛してやまない、獄寺の為なら己の人生や価値観すらも平気で変えてしまう男、沢田綱吉が来てしまった。
「―――――」
時が、止まった。
どのくらいの時が、経ったのだろうか…
気が付くと、沢田の顔がにっこりと。笑っていて――
その直後、瞬速の速さで二丁拳銃を取り出してランボに向けていた。
このあと、ランボは奇跡のボンゴレアジト大脱出を繰り出して伝説を作り上げた。
ちなみにボンゴレの部下たちはいつもの事と、誰も気にも止めなかった。
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またいつものあれが始まったよ。