マフィア戦隊ボンゴレンジャー!!



説明しよう! マフィア戦隊ボンゴレンジャーとは、並盛の平和を(守ろうとするボンゴレブルーを)守る為に結成された正義の組織だ!!


前回までのあらすじ!!




並盛の平和を脅かしていたヴァリアーを撃退したボンゴレンジャー。


そこから安息の日々が訪れるのだと…みな思っていた。


しかしヴァリアーを退けたその翌日。ボンゴレンジャーの司令官が姿を消した。


司令を探し街中を歩き回るボンゴレンジャー。


そうしてようやく司令の姿を見つけたのだが…司令の様子はどこか違った。





「ボンゴレンジャー司令最後の命だ。…オレを討ってみろ」





そう言い放ってまた司令は姿を消した。


茫然とするボンゴレンジャー。


そしてそんな中ボンゴレブルーはひとり暗鬱とした感情を抱いていた。


司令が姿を消すその前夜…司令が謎の人物と会話をしているのをボンゴレブルーは目撃していたのだ。


何か関わりがあるのだけは間違いないだろうが…彼の正体は一体。


そうしてボンゴレブルーが悩んでいる間、他の戦隊は落ち込んでいるボンゴレブルーをどう手篭めにしようかと黙々と考えていた!!





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抜け駆け厳禁だからね!! 紳士協定!!










「………はぁ…」


ボンゴレブルーは溜め息を吐きながらひとり。ボンゴレ基地内を歩いていた。



司令がボンゴレ基地から姿を消してから、早数日。


司令にはあの司令が消えた初日に一度会えたっきりでそれからはどれだけ探してもぱったりさっぱり。…影すらも見当たらなかった。


一体司令はどこにいるのだろう。自分を討てという言葉の意味は…一体。


いくら考えても分からず、ボンゴレブルーは掃除道具一式を持ってボンゴレ基地内を歩いていた。


今日はボンゴレブルーがボンゴレ基地の掃除当番なのだ。


ボンゴレブルーは司令の部屋を掃除しに司令室へと訪れた。


「…失礼します」


そう言って室内に入って…けれど苦笑してしまう。



もう、この部屋の中には司令はいないのだ。



「………」


それをそうだと認識すると…途端に込み上げてくる寂しさ。


いけないと頭を振って、ボンゴレブルーは掃除に集中しようと掃除道具に手を掛ける―――と。


ふとボンゴレブルーの視界に入ったデスクの上。


そこには…





「………む?」


その同時刻。とある場所にて司令はある違和感を感じていた。


何かが足りない気がする。何かを、自分は忘れている気がする。


司令はポケットの中に手を突っ込み肩をはたき帽子まで調べてみて…ようやくその正体を知った。


「…やべー」


司令は広々とした室内の中から、大きな窓の外を見て。


「レオン、ボンゴレ基地に置き忘れてきちまった」



そのリボーンの視線のずっとずっと先では。



「………レオン…だよな? なんか干乾びてるけど…」


「………」


そこではまさにそのレオンがボンゴレブルーに発見・保護されている所だった。





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お前いつもリボーンさんといたんじゃねえの?










何事なのかからっからに干乾びたカメレオンを発見したボンゴレブルーはとりあえず水をかけてみることにした。


乾燥ワカメの要領でどうにかなるかと思ったのだ。


と、いうわけでボンゴレンジャーは水差しの水をレオンにぶっかけてみた。


すると見る見るうちにレオンは元の艶やかな姿に戻るのだった。


レオンは自由に動けるようになったからかそれとも主人にようやく思い出してもらえたからか開いたままのドアから外に出ようとする。


「あ―――おい、レオン!」


思わず呼び止めるボンゴレブルー。その声を聞いてかレオンはぴたりと止まり首だけをボンゴレブルーの方へと向けた。


「あ…っと」


しかし呼び止めたは呼び止めたでそれ以上のことは考えてないボンゴレブルー。


けれどレオンがこれから向かう先は司令の所だろう。つまりレオンは唯一の司令への手掛かりなのだ。


かといってレオンを追いかけて無事に司令の元へと辿り着けるだろうか。…あのレオン相手に。


レオンはなんにでも化けることが出来る。例えば鳥に化けて窓から飛び立たれでもしたらボンゴレブルーに追う手立てはないのだ。


でも…だからといってこのまま見過ごすわけにはいかない。


「えーとえーと…そうだ手紙! 今からリボーンさんに手紙書くからそれまで待ってくれよな!!」


言い放つとボンゴレブルーは自室に戻り便箋を取り出した。


けれど…一体なにを書こうかと模索する。


聞きたいことは山ほどある。けれどそれら全てを書いても良いのだろうか。


(いや…それよりもいきなり質問をぶつけまくるってなんだかマナーに反してないか? まずは当たり障りのない事から…)


「えーと…リボーンさんへ。突然の手紙失礼します、獄寺です。…暦上では春になりましたがまだまだ肌寒い日々が続いていますね。お身体に変わりはないでしょうか…」


筆を滑らせていくボンゴレブルー。そうしていくうちにいつしか便箋の枚数は二桁になっていた。



「…というわけで失礼します。乱文乱筆お許し下さい…獄寺隼人…っと」


ボンゴレブルーがようやく手紙を書き終えたときには日が沈みかけていた。


しかもそれだけの量を書いておきながら肝心の質問は全くしていなかった。ボンゴレブルーは忘れていた。


ちなみにレオンは、助けてくれたことに対する恩なのか待てといわれた所で微動だにせずにちゃんと待っててくれていた。


「待たせたなレオン! その…悪いんだがこれをリボーンさんに届けてくれないか…?」


レオンはおずおずと渡された手紙を受け取ると今度こそボンゴレ基地内から姿を消した。





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お。レオンお帰り。…ん? それは…










「………」


「おや。どうしましたかリボーンさん。黙々と紙に筆を走らせて」


「手紙を貰ったら返事を返すのが礼儀だろう」


「はぁ…?」



そんなわけで、ボンゴレブルーからの手紙を受け取った司令は早速その返事を書いていた。


といってもボンゴレブルーの手紙の内容は本当に当たり障りのないことばかりだったのでその返信もまた当たり障りのないものだったのだが。


けれども。



「…あれ? レオン…もしかしてリボーンさんからの返事を貰ってきてくれたのか…!?」


ボンゴレブルーは返事を貰えてかなり嬉しそうだった。



それからボンゴレブルーと司令とのレオンを介した文通が開始されたのでした。


でもやっぱりボンゴレブルーが手紙に書く内容は日常的なものばかりだったが。



そんなある日のことだった。



「…獄寺くん、最近嬉しそうだよね。何かあったの?」


「え? そうですか?」


「うん。…この間の掃除当番以来かな。何か珍しいものでもあったの?」


「ああ、そういえばリボーンさんの部屋にレオンがいましたね」


「レオンが!?」


驚くボンゴレレッド。てっきりレオンはリボーンとずっと一緒にいるのだと思っていたのだ。


「それで、どうしたの!?」



「水ぶっかけたら出て行きました」


「何追い出してるの!?」



ボンゴレブルー、説明をはしょりすぎてとんでもないことになっていた。


そりゃあボンゴレレッドも突っ込みを返すというものだ。


「そしてリボーンさんから手紙を頂いたのですよ!!」



「お礼参り状じゃないよねそれ!?」



ボンゴレブルー、説明を飛ばしすぎてやっぱりとんでもないことになっていた。


「そしてそれ以来オレとリボーンさんは手紙のやり取りをしているのでした」


なんか説明についていけないけどリボーンとのコンタクトが取れていると言うことだけ理解した」


ボンゴレレッド、自分に必要・かつ重要な部位だけをどうにか理解した。流石だった。


「…で、その彼との手紙のやり取りで彼の居場所とか消えた理由とか聞いたりしたの?」


「へ? え……あぁ」


ボンゴレブラックのもっともな問いにぽんと手を打つボンゴレブルー。


どうやら、すっかり忘れていたようだった。


「…獄寺くん…」


「だって…込み入ったことを聞いて返事が来なくなったらって思うと聞くに聞けなくて…」


ばつの悪そうに顔を伏せ、もじもじとしながら言葉を紡ぐボンゴレブルー。



「仕方ないなぁ獄寺くんは」



ボンゴレレッド、玉砕。



「仕方ないね。ならレオンのあとを着けて行こうか」


「え? でもレオンは…」


「確かに彼の元へと行く前に見失うかもしれない。でもレオンが向かう方角が分かれば今後の検索ルートを検討できる」


「あ…」


「それに手紙があるのなら近いうちにまたレオンは来るでしょ。返事を持ってきてさ」


「そ…そうか。そうだよな。雲雀頭良いな!!」



「キミは僕を馬鹿にしているのかな」



「では早速リボーンさんへ返事を書いてきますね!!」


ボンゴレブルーは嬉々としながら自室へと走っていった。


「………リボーンの奴…獄寺くんにあんなにも思われやがって。会ったらぶん殴ってやる」


「ならキミも彼から離れてみれば? 心配してくれるかもよ」


「獄寺くんから…距離を…?」


「………」


「………」



「お待たせしました! じゃあこれを早速レオンに…ってどうしました10代目。項垂れて」



「…無理っ」


「だね」


「???」



そんなわけでボンゴレンジャーはレオンのあとを辿っていくことにした。


レオンはボンゴレブルーの手紙を背負って歩いていく。





「………道の端を歩くんですね」


「飼い主とは大違いだね…あいつは堂々と道の真ん中歩いていくのに」


レオンは信号が赤になったので立ち止まった。


「しかも青になっても右左また右と安全確認を欠かしません!


「どれだけ礼儀正しいんだこいつ!」



そんな感じにレオンの後ろをボンゴレンジャーは着いていった。


レオンは別に何かに化けてボンゴレンジャーを撒くわけでも小さな道に入り込んで行く手を眩ますこともなくてこてこと歩いていく。


そして。



「………ここは…」



さぁ…っと冷たく吹く風がボンゴレブルーの頬をなぶる。


角を曲がったレオンに続いて足を進めていくと…そこには巨大な建物があった。


それは並盛高級ホテル…「ボンゴレ」


レオンの姿も気が付けば見当たらなくて。…この建物に足を踏み込む以外道はないように思えた。


ボンゴレブルーは一度だけ立ち止まり深呼吸をして…


「…行きましょう、10代目。…リボーンさんはきっとあの中です」


再びその足を進めていった。





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待っててください、リボーンさん…!










ホテル内に入ったボンゴレンジャーを待ち構えていたのは受付嬢のチェルベッロだった。


「申し訳御座いませんが現在このホテルは全て貸し切られております。またのご利用をお待ちしております」


「全て貸切りって…このホテル丸ごと…!?」


すざましい経済力だった。個人の力で成り立つのだろうか? 何か組織的な物も関与している気がする。


「そういうわけですので、お帰り下さい



チェルベッロ、接客する気ゼロだった。



「あ…待てよ! ここにリボーンさんって人がいるだろ!?」


ボンゴレブルーの声に無表情だったチェルベッロがぴくりと反応を返す。


「…確かに。リボーン氏はこのホテル内にいますが」


「良かった…オレたちはリボーンさんの知り合いで…ずっとリボーンさんを探していたんだ。だから…」


会わせてくれ。そう言おうとしたボンゴレブルーにしかしチェルベッロは無下に言葉を滑らせる。


「なりません」


「…っ!?」


「リボーン氏は現在面会禁止です。何人たりともそれを破ることは出来ません」


「そんな…まさかリボーンさん、どこか具合でも悪いのか!?」


「いえ、毎日ご飯を三杯食べるぐらい健康状態です」



なんだか無駄に元気そうな情報が入ってきた。



しかしボンゴレブルーはどこか憂い顔だ。


「リボーンさん…いつもなら山盛りご飯を五杯は食べてるのに…」


「リボーンってそんな大食漢キャラだったっけ…?」



いつしかそういうことになっていた。



「でも…ならどうしてリボーンと会えないのさ」


「それをお教えする必要はありません」


ボンゴレレッドの問いにチェルベッロは無感情に返す。



その口調、その態度に…ちょっとボンゴレレッドはきれた。



「へぇ…必要ないって、それはどうしてさ」


「貴方方には何の関係もないからです」



ボンゴレレッドの微妙な表情の変化に気付いているのかいのか、チェルベッロはやはり無表情に淡々と返す。


チェルベッロの言葉にボンゴレレッドは笑うばかりだ。…ただし目は笑ってはいなかったが。



「………オレさ。リボーンを探すのは獄寺くんの為だけって思ってたんだけど…今からちょっと改めるね」


「…じ、10代目…?」


少し冷えたボンゴレレッドの声。ボンゴレブルーの前にボンゴレレッドがいるのでボンゴレブルーにはボンゴレレッドの表情が見えない。


それが更にボンゴレブルーの不安を煽っていた。


「―――こんな礼儀知らずな奴らの鼻を明かせるなら、少しはリボーン探し。真面目にやっても…いいかもねっ」


その言葉が終わると同時に、ボンゴレレッドを中心に巻き起こる白い煙。


「っ、煙幕!?」


その通りだった。


「みんな散って! この建物内にリボーンがいることが分かったんだ。…どうせだからこのまま見つけて、引き摺ってでも連れて帰るよ!!」


ボンゴレレッドの言葉にまるで打ち合わせをしていたかのように飛び散るボンゴレンジャー。


そんな中、ボンゴレブルーもまた階上への階段へと走って行った。


全てはボンゴレンジャー司令官を見つける為に…





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リボーンさんは一体どこにいるんだ!?










ボンゴレブルーはひとり、ホテル内を走り回っていた。


部屋を見つけてはそれを開け放つ作業を繰り返していく。


しかし…こうして探し回ってみて分かったのだが、このホテル内には人がいない。


それは今のボンゴレブルーの立場としてはありがたいことだったが、しかし逆に不気味にすら思えることだった。


誰もいない、見当たらない無人のホテル。


この中に本当に自分の探している人はいるのだろうか。探せば探すほど不安になってくる。


そしてボンゴレブルーはそんな不安とも戦いながらも階上へと上がって行き司令を探していった。


けれど見つからない。人っ子一人見当たらない。


不安と、焦りと。そして階段を登り廊下を走り回ったことに対する疲れ。更に追っ手がいるかもと思う気疲れもありボンゴレブルーは少しふらついていた。



そんなときだった。



「…やべっ」


慌てて廊下を走り抜けようとしていたボンゴレブルーは思わず立ち止まり、曲がり角の壁に隠れた。


ボンゴレブルーの視線の先にいたのは…あのバジルという少年。


司令官がボンゴレ基地から姿を消す前に、話していた相手だった。


一階の受付のチェルベッロ以外で初めて見つけたホテル内の人間。


人がいたんだという安堵感と、そしてよりにもよって…という焦りがボンゴレブルーを包み込む。


バジルがどこかへ行ってくれることを念じながら物陰で危機を過ごそうとしていたボンゴレブルー。しかし。


「………」


バジルはボンゴレブルーがいる方向へと歩いてきた。


このままだと見つかってしまう。


(…くそっ)


ここで見つかり騒ぎになっては面倒だ。それにボンゴレブルーは正直彼が苦手だった。


来た道を引き返すも続く道は真っ直ぐで。このままだと隠れる間もなく見つかるのは明白だろう。


どうする。どうすれば…ボンゴレブルーがそう思い悩んだ時背後の扉が急に開いてボンゴレブルーを有無を言わせぬ力で引き寄せた。


「!?」


ボンゴレブルーは抵抗する間もなく扉の中へと連れ込まれてしまった。





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静かにしろ。










…おや? こちらの方向にねずみが紛れ込んでいると思いましたが…ふむ。


―――コンコン、


…なんだ。


ご休息中の所失礼致します。何か変わったことなどなかったでしょうか?


知らんな。別にいつも通りだ。


そうですか。


何かあったのか?


ええ、可愛らしいねずみさんが数匹。そこらを走り回っているようなので見つけ出そうかと。


そうか。…やっぱり知らんな。それにねずみがどこをうろついていようとオレには関係のないことだ。


ごもっとも。…では拙者はこれにて。失礼致しました。


ああ。





「………あの」


「なんだ獄寺」


「た、助けて下さって…その、」


「気にするな。それほどのことはしてない」


「…はい」



ボンゴレブルーが引き摺り寄せられた室内。


その中にはずっとずっと捜し求めていた司令官の姿があった。


彼は別れる前と寸分変わらず元気そうで。その事実は今まで張り詰めていた緊張を強いられていたボンゴレブルーを安心させるには充分で。


「それにしてもお前、何でこんな所にいるんだ?」


「え…あ、それは…」


しどろもどろに、けれど必死に言葉を紡ごうとするボンゴレブルーに司令官は一つ閃いた。


「もしかしてお前…」


「はい?」


「もう手紙の返事を取りに来たのか? まだ目を通しただけだぞ



司令官、かなり着眼点のピントがずれていた。



「い、いえ…いやそれはそれで欲しいですけど、そうではなくて…!」


「違うのか? なら何故、何の為にここまで来た」


「それは…」


真っ直ぐに司令官に見つめられながら問い掛けられ、ボンゴレブルーは暫し言葉に詰まったがやがて意を決したように…


「貴方に…リボーンさんに会いに…です」


「獄寺…」


ずっとずっと会いたかったのだと、話を聞きたかったのだとボンゴレブルーは司令官に告げた。


「…オレとお前はもう敵だと。そう言っただろう」


「オレは納得していません」


引く様子のないボンゴレブルーに、司令官は溜め息を一つ付いて。そして…やがてぽつりぽつりと語り始めた。





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なら、説明してやろう。










「オレは…この星の人間じゃないんだ」


「…っ!?」


思わず息を呑むボンゴレブルー。


しかしその様子に「この人何電波なこと言ってんだ?」な感じはなく、むしろ信じているようだった。



だって、なんかその方が説明がつく。


むしろ彼は宇宙人だった。それぐらいの説明がないと彼の超人振りに納得出来ない節もあったぐらいだ。



「オレはこの星から見れば異分子で、相容れられないものだ。受け入れられもしない。だから敵なんだ」


「そんな…こと、」


何とか言葉を紡ごうとするボンゴレブルー。けれどそれよりも前に別の声が室内に広がる。



「そういうことです。ですので貴方にはお帰り願いたく」



「!?」


突然現れた声。


その方を向いていれば…そこにはバジルが立っていて。



「もう、酷いではありませんかリボーンさん」


「何の話だ?」


「何の変わりもないと。そう言っていたのに嘘とは酷いですねと言っています」



「別にオレは嘘なんかついてねーぞ」



「リボーンさん…?」


「変わったことなど何もない。ただ単に、今日はたまたま知人がやってきた。…それだけだ」



司令官はそう言い放つと沈黙して。バジルは納得したのかしてないのかつられて押し黙って。



「ふむ…まぁそういうことにしておきましょう。それで、その知人との語らいは終わりましたか?」


「まぁ、そうだな」


「リボーンさん!」



このままだと帰らされることになりそうで。ボンゴレブルーは慌てて抗議する。



「オレはまだ納得していません!」


「これ以上話しても時間の無駄だ」


「そんなこと…そうだ、ヴァリアー!」


「ん?」


「ヴァリアーを倒せたのは貴方がいたからじゃないですか・・・! 今後もあんな連中が現れないとも限らないし、まだオレたちには貴方が必要なんです!」



必死のボンゴレブルーの言葉に、けれど司令官は冷たく言い放つ。



「ああ、あれはオレが招いたようなものだ。だからオレ自身の手で始末した。…それだけだ」


「え…?」


「あんな連中がまた現れるとしたら、それはオレを追ってだろうな。だからやはり…オレは消えた方が良い」


「何を…」


訳が分からないような言いようのボンゴレブルーの口調に、司令官は溜め息を吐いて…



「…教えたら…お前は一度。ここから出るか?」



「え…?」


「お前が納得をしようがしまいが、一度オレの話を聞いてここを出るというのなら…内情を話そう」


「それは…」


「同意が出来ないというのなら、話はしない。そのままお前は無理矢理にでも追い出す」


「…っ、」


選択肢のない道に、ボンゴレブルーは同意の意を返すしかなかった。





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分かり…ました。聞かせてください。










司令官…いや、リボーンはほんの少し前まで自分の星で暮らしていた。


けれど、それは唐突に起った。


リボーンの父親が倒れたのだ。


彼はその星の王で。皆から9代目と呼ばれていた。


自らの死期を悟った9代目は宣言した。



息子であるリボーンを10代目として自分の座を告がせると。



「それで…どうして星から出たのですか? …まさか暗殺されかけたとか!?」


王位継承となればどこの世界でもそれを快く思わない輩もいるだろう。彼はその犠牲者なのだろうか。



「…もしそうだったら、まだ格好も付いたんだけどな…」



「…!?」


新たに現れた第三者の声。それはボンゴレブルーも知らない声で。


「おや。親方様」


現れた親方様と呼ばれる人物は厳つい、豪快という言葉がいかにも似合いそうな大男。


「聞いてくれよぉそこの少年ー」


男は溜め息を吐きながら初対面のはずなのに何故かフレンドリーな態度でボンゴレブルーに愚痴を零すように話しかけてくる。


「こいつよー、親父がぶっ倒れたってのに王位を継がせるって言われたのにその後どうしたと思うよ」


「え…? どうしたって…」


ちらりとボンゴレブルーはリボーンを見る。


なんだかこの人が真面目に王位を継ぐとは思えなかった。


「その…断った、とか…?」


「惜しいな。こいつ部屋を出たあと「めんどくせー」って一言言って、その15分後には星から飛び出しやがった」



リボーンはとんでもないほど行動派だった。



「…王位は弟に継がせればいいだろう。オレは気ままにやらせてもらう」


「あ、弟さんがいるのですか。リボーンさん」


「お前も知っている相手だぞ。獄寺」


「え?」


誰だろう…というかリボーンの弟というぐらいだからこの星の人間ではないのだろうが獄寺には全く思い浮かばない。


「リボーンさんの弟君はザンザスでありますよ隼人殿」


考え込むボンゴレブルーにバジルが答えてくれたが…そのまさかの人物に思わず思考が止まるボンゴレブルー。



予想外すぎてなんでバジルが自分の名前を知っているのかという突っ込みを放棄したぐらいだ。



「ざ……えぇ!?」


ザンザス。それはあのヴァリアーのボスにして…リボーンを目の仇にしていた男。


まさかそんな因縁があったなんて…とボンゴレブルーはショックを受ける。


「王位を継ぐならあいつの方が相応しいだろ。意欲もあるし」


「…相応しい? リボーンさん、それはどういう…」


「オレは9代目の側女の子供だ。そしてザンザスは本妻の子供…オレの方が早く生まれちまったがな」


「はぁ………あれ? でも…なら?」



ボンゴレブルーは思う。


なんでザンザスはリボーンを追って来たのだろう。


どんな理由であれ、リボーンが星を去ったのだ。王位を継ぐ絶好のチャンスだと思うのだが…



「ああ、確かにザンザスはリボーンのいない間に10代目になろうとしていた。が…」


「国民はザンザスを受け入れませんでした。…というよりも、リボーンさんこそが10代目に相応しいと。そう仰ったのです」


ボンゴレブルーの疑問に男とバジルが応える。



「………」


それに少しだけ俯くリボーン。



「そして…ザンザスはやがてこう考えるようになったのです。…9代目も、兄であるリボーンをも始末すれば…自分が王になれる…と」


「そんな…」


「ま、あいつは昔からオレの事を嫌っていたからな。それに押さえが利かなくなっただけだろう」


「リボーンさん…」



淡々と無感情に告げるリボーンに、ボンゴレブルーは切なくなる。


例え半分だけでも、血の繋がった兄弟なのに。なのに怨まれ…あまつさえ命を狙われて。


しかもその事を全くと言って良いほどリボーンは気にしてなかった。弟に殺意を向けられているという事実を迎え入れていた。



「―――まぁ、それはともかくだ。星は今指導者がおらず騒然としていて…」


「いや、たぶん別の意味で騒然としているんじゃねーか?」


「…あ?」



男の言葉を遮るようにリボーンは何故か楽しそうに言ってくる。男は何故か嫌な予感がした。



「お前…何をしやがった?」


「別に? ただ、ヴァリアーの連中をザンザスごと国に送り返した。ただそれだけだ」


「な…!」


「リボーンさん、あいつらを倒したのではなかったのですか!?」


「ああ、適当に麻酔打ってあとはあいつらが来た船に乗せてそのまま返した。今頃あいつ、大暴走してんじゃねーか?」


「お前…」



はぁ、と男は盛大に溜め息を吐いた。恐らくこのように度々リボーンに手を焼かれてきたのだろう。哀愁が見えるし。



「………まぁ、暫くは9代目がどうにかしてくれるだろ…」



9代目、倒れたという割には元気そうだった。



「は、あのじじぃが死ぬってたまかよ。殺しても死なさそーなのに」


「…そうかい…あーもう、じゃあ予定を早めに切り上げてさっさと帰るぞ。ったく、もう一波乱ありそうだ…」



「………」


いつしかボンゴレブルーは会話に置いて行かれ、当事者達だけで会話が行われていた。


けれど…それは当然だ。


だってこれはリボーンの家庭の話なのだ。


…自分に…他人である自分なんかに口出し出来ることなど、何もない。



「じゃー仕方ねぇけど適当にひとり攫って帰るか」



…そう、例えこの星の人間をひとり攫われようとも自分には…って、ん?


「何の話だ?」


「なんだ? 言ってなかったか? 星の連中にはお前は花嫁探しに星を出たと説明してるんだ」



「待てやこら」



「なので、形だけでも花嫁がいないと困るわけなのでありますよ」


「何勝手なことしてるんだゴラ」



リボーン、勝手に星を出たツケが今帰ってきました。


「ま、そいつには悪いがこれも何かの縁と思ってもらうさ。じゃあ早速攫ってくるぞ」


「ちょ…待てよ!!」



男の前に立ちはだかるボンゴレブルー。事情は分かったがだからと言って人一人を連れ攫われるのをこのまま見過ごすわけには行かない。



「邪魔を致しますか。隼人殿」


「…ああ。この町の平和を守るのがボンゴレンジャーの仕事なんだ。…人攫いは阻止させてもらうぜ」



ボンゴレブルーが言い終わると同時に、ぴりりと刺すような空気が辺りに巻き起こる。



ボンゴレブルーでは目の前の二人には勝てないだろう。実力の違いというものをボンゴレブルーは肌で感じていた。


けれど…それでも引くわけには行かないのだ。


自分は並盛の平和を守る為に結成された組織の…ボンゴレンジャーの一員なのだから。



「…ふむ。ならばこうしてはどうでしょう。隼人殿がリボーンさんの花嫁になる



獄寺はシリアスに格好よくびしっと決めたが、バジルに素でとんでもないことを言われて崩れた。


「は―――な、なななななななななぁ!? ななな、何を言って…!?」


流石のボンゴレブルーも赤面してうろたえている。リボーンも茫然としていた。


「どうせ花嫁といっても形だけです。我らも星に帰るため一刻を争えませんし…ここは一つ、隼人殿が犠牲になられては如何でしょう」


「い…いきなり、そんなこと言われても…」


「ちなみに少年。リボーンの生まれたてはこんな感じだぞー」


そう言って一枚の写真を取り出す男。ボンゴレブルーがそれを見ると、そこには黒スーツを着こなしたちったいかぁいらしい赤ん坊が鎮座していた。



ずっきゅーん!



小さいもの可愛いものだいすきなボンゴレブルーは即座にハートを打ち抜かれた。


「…もしもリボーンの子供が出来たら、きっとこんな感じなんだろうなぁ…」



「オレ…産みます! リボーンさんの子供!!」



「産めねぇよ」



「そして生まれたリボーンさんの子供をぎゅって抱っこしたいです!!」



「聞けよ人の話を」



リボーンは興奮気味なボンゴレブルーを冷たく見据えて…


「なんにしてもだ。獄寺は連れていかねーぞ」


「え…?」


「王位は継いでやる。だから…さっさと帰るぞ。家光。バジル」



ふいっとボンゴレブルーから身体を背けるリボーン。…それは拒絶の意思。



「リボーンさん…」


「獄寺。…話を聞いたら、一度ここから出ると言う約束だったな?」


「………っ」


冷たく言い放たれるリボーンの言葉に何も言うことが出来ないボンゴレブルー。


「ここで別れだ。獄寺。…もう会うこともあるまい」


「そんな…リボーンさん!」


ボンゴレブルーは出て行こうとはしなかったがリボーンに促された家光に捕まり外へと運び込まれてしまった。





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リボーンさん…どうして……っ










家光がボンゴレブルーを連れて室内を出てから暫し経ってから。バジルは静かに口を開いた。


「…宜しかったのですか?」


「何の話だ?」


「別に拙者は、適当に隼人殿を花嫁に提案したわけではありませぬよ」


「………」


「初めてだったからです。楽しそうな貴方を見たのは」


「…くだらねぇな」


「そうですか? でもそれでも…拙者の目にはそう見えました」


「………」



「隼人殿が来て…初めて楽しそうな貴方を見ました。それは…我らが元いた国にいた頃からも含めてのことだったのですよ…?」





―――それから、暫くして。


「…あ! リボーンこの野郎やっと見つけたぞゴラァ!!!」


「ツナか。久しいな、何の用だ?」


「キミもよく言うよね…あの子がキミがいなくて元気がないから仕方なく迎えに着たんでしょ」


「そうか。それはご苦労だったな。雲雀」


「というわけでさっさと基地に戻るよリボーン!!」


「…ああ、ランボ。お前いたの


「酷!」



「つーか、獄寺なら説得して帰らせたぞ。どこかで会わなかったか?」


ボンゴレブルーを退室させてからボンゴレレッドたちがリボーンの所に来るまでにかなりの間があった。


どこかで出会っていてもおかしくはないのだが…



「え…? 会ってないけど…って、ということは今獄寺くんひとり!?」


なんてことだとボンゴレレッドは即座に携帯を取り出す。彼は一人にしてはいけないのだ。



「………繋がらない」



いやな汗がたらりと流れる。ボンゴレブルーには携帯を決して切らないようにときつく言いつけてあるのに。


「ど、どどどどうしよう・・・! 獄寺くんが・・・!!」



「取り乱すんじゃねぇ、鬱陶しい」


「な…何言ってるんだよリボーン! 獄寺くんがひとりで、しかも連絡が取れないんだよ!?」


それは由々しきことなんだとボンゴレレッドは力説する。



黙っていても不埒な輩から犯罪者やらトラブルを引き寄せるボンゴレブルー。


今まではボンゴレンジャーの誰かが傍についていたからこそなんとか対応出来ていたのに…それなのに今彼は一人。



「もー! 獄寺くんになにかあったら全部リボーンのせいなんだからね!! この野郎どう責任取ってくれるのさ!!」


「…分かった分かった。獄寺の居場所だな。調べてやるからそう睨むな」



リボーンはそう言うと腕に付けてた時計に手をかけて何か操作し始める。


ツナがそれを覗き込んで見ると、そこには時計の表示ではなくてなにやら無数の光の点滅が見て取れた。



「…ボンゴレ基地とは真逆の方角にいるな…確かに何かしらの事件に巻き込まれているようだ」


「リボーン…なんで獄寺くんの居場所がそう簡単に分かるの…?」


「ん? そりゃお前、獄寺に発信機を取り付けていたからな



「なにやってんの」



ボンゴレレッドの的確かつもっともな突っ込みにもリボーンは怯まず無視し立ち上がる。


「ま、確かに獄寺を一人で帰したオレにも責任はあるかもな。仕方ねぇからオレも手伝ってやるよ」


「ちょ…待てよリボーン!」


ひとり素早く歩きだすリボーンに、他の隊員も着いていく。


室内に独り残されたバジルは、みんなの出て行ったドアを見ながら…



「やはり…貴方様は隼人殿が絡むと途端に生き生きし始めておいでです。そのことに貴方は…気付いておられるのですか? リボーンさん…」



そう言って、自分もまたそのドアから姿を消した。





一方。ボンゴレブルーは一体どこにいるのかというと。



「………ん…」


「クフフフフフフフ。今回も出番がないんじゃないかと冷や冷やしましたよ」


「骸様…そういう内輪ネタはちょっと…


「まぁそう言わず。…ところで彼の様子はどうですか?」


「あ…はい、大人しく眠っています。暫くは目を覚まさないかと」


「そうですか…クフフ、隼人くんがこの手に入る日が来るなんてまるで夢見たいですねー」


「珍しくひとりで歩いていましたね…しかもなにやら思い詰めたような顔をして」


「あの顔はそそりましたねー」


「………では、手早く黒曜ランドに持ち帰りましょうか」



「……ん―――リボーン、さん…」





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…リボーン、さん……