「隼人」


「げ…っ、姉貴…!?」


「クッキーを焼いたの。一緒に食べましょう」


「即断で即決で即効で断る! つーか逃げる!!」


「あら…仕方のない子ね…」





「ふぅ…ここまで逃げれば…大丈夫か…?」


「あああもう! 時間がないったら時間がない!!」


「あれ? この声は10代目?」


「急がないとまたどやされる…! あーなんでこんなに時間狂ってるのー!?」


「10代目ー! どうしたんですか? 待って下さい!!」


「あぁ…疲れのせいか幻聴が聞こえるよ…。でもどうせ夢幻なんでしょ? 分かってるよ…」


「10代目ー! 待って下さいってばー!」


「ははは。でもこれってあれだよね。俗に言う砂浜で追いかけっこって奴だよね。嬉しいなー、一回やってみたかったんだよね


「10代目! お気を確かに!!」



「うふふふふふふふふ、捕まえてご覧なさーい」


「10代目ー!!!」



「あ、でも駄目だ! これ追いかける方攻めじゃん!? 駄目だって! オレは獄寺くんを攻めたい!!!」


「10代目! なんていうかもう、せめてそういう発言は心の中だけに留めて下さい!!」


「夢の産物にまで突っ込まれちゃったよ! なんてことだ! オレたちには夢見る自由もないのか!」



「複数形すか!?」





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10代目の他に誰がいるんすか!?










「いって…まさか10代目が木のうろに飛び込むとは思わなかった…」


「あれ? 獄寺?」


「しかも思ったよりも深い穴だったな…10代目はご無事だろうか」


「獄寺、獄寺ー」


「さて、ひとまずここはどこだ…?」


「獄寺ー」


「部屋…だよな? それにしても家具から何から馬鹿でっかい…巨人か? 巨人の部屋なのかここは」


「ごくでらー」


「ドアノブもでっかいし。どうにかして外に…」


「獄寺ってばー」


「―――あああもううっせぇな! 誰だよ! どこにいやがる!!」


「ここー! ここだって獄寺ー!」


「ああん? …誰もいねぇじゃねぇか!」


「こっちー! そのまま目線下げて獄寺ー!」


「はぁ? 目線…?」


「………」


「………」


「―――よ! 獄寺!」


「…さて、どうやってこの部屋から出るか…」


無視かよ! 無視はひでぇぜ獄寺! 無視ってのは存在の否定なんだぜ!? オレを否定しないでくれーーー!!」


「………残念ながらオレの知り合いに小瓶はないんだ」


「仕方ねぇだろ! これしか配役が余ってなかったんだから!!


「は…?」


「それはともあれ獄寺! 実はオレを飲むとでっかくなることが出来るんだぜ!」


「へー…だから?」


「獄寺…オレをの・ん・で・☆



「きめぇ」



ガシャン



「…は。あまりにもの気持ち悪さに思わず割ってしまった…まぁいいか


「ははは。色々と酷いのなー」


「ぅわ! 声だけ聞こえる! 気持ち悪!!!」


「ああ…獄寺が酷い。これが神の愛ですか試練なのですか…」


「…頼むからとっとと成仏してくれ。オレも出来るだけ早く忘れるから


「またまた獄寺照れちゃってー。って、なんで花火とか取り出すんだ?」


「お前とこの部屋からおさらばするためだよ」


「…獄寺が最初から最後まで酷いのなー…」





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じゃあな。ついてくるなよ。










「「なんでもない日万歳!!」」



「まった飛んだなぁ」


「おー! 隼人じゃないか! なんでもない日おめでとう!!」


「めでたいのはなんでもない今日じゃなくてお前らの頭の中だろ…」


「はっはっは。手厳しいなぁ隼人は」


「つーか話飛びすぎだろ。変な花とか煙草芋虫とかいっちゃった目のドードーとかおかしな双子とかオールカットかよ」


「意外に知ってるんだな。順番ばらばらだけど」


「うるせぇ」


「まぁ良いや。茶でも飲んでけ隼人」


「いらねぇ…」


「ケーキもあるぞ隼人」


「だからいらねえって…」


「なんと今ならクッキーもついてくるぞ!!」



「嫌がらせか?」



「そう邪険にするなって隼人ー。毒なんて入ってねーから」


「当たり前だ! ていうかオレはこんな所で時間喰ってる暇はねーんだよ!!」


「まーまー。少しは付き合っていけって。そう、今日はなんでもない日! めでたい日なんだ!!」


全然めでたくないから。ていうかもしかして酔ってるのか?」


「ばかやろー! 酒もないのに酔えるか! でも出来れば酔いたい!!」


「確認の必要もなかったな。酔ってるな。間違いなくお前ら酔ってるよな」


「まーまー。いいんじゃねぇの酔ってても。今日はめでたい日だし誰の迷惑にもなってないし」



「オレの迷惑になってるっつの」



「オレたちを見捨てるな隼人!」


「うぜぇ…」


「あとオレらの老後は頼んだ!!


「知らねぇし!! あとお前らの人生計画にオレを巻き込むな!!!」



「「なんでもない日万歳!!」」



「黙れこの酔っ払い共ぉぉぉおおおおおお!!!」





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もう死ね! 果てろお前ら!!










「シャマルとディーノの馬鹿から逃げ出せたと思えば…今度はなんだ?」


「そういうキミこそどうしたのさ」


「雲雀………ああ、なんでお前がここにいるのかって質問はこの際良いや。あのトランプ集団はなんだ?」


「僕の部下だけど。それが?」


「部下…ってことはあいつら全員風紀委員でお前がハートの女王かよ」


「おかげで格好もドレス姿さ


「ああ知ってる。あえて直視しないようにしていたけどな


「どうよこの姿」


「くるくる舞うな。気持ち悪い


「酷い言い草だね。首をはねるよ?



「どうしよう! 配役ぴったりだ!!」



「うるさいね。ところでキミはなんでここにいるのさ」


「オレ? オレは10代目を探してて…」


「沢田綱吉ならここにはいないよ」


「そうなのか? じゃあここに用はねぇや。邪魔したな」


「待ちなよ」


「…? なんだ? どうした?」


僕はドレス姿なのにどうしてキミは普段着のままなのさ」


「知るか。ほっとけ」


「いいや放ってはおけないね。アリスはキミなんだろう? なら相応しい格好をしなければならない


「いや、そんな握り拳をしてまで熱弁されても困るんだが」


「というわけで」


「は!? おい、おま…離しやがれ!!!」


「大丈夫。痛くないしキミが暴れなければ直ぐ済むから」


「ふざけんな! 抵抗するに決まってるだろ!!」


「うるさいなぁ。首をはねるよ?


「それはもう良いから!!!」





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って近付いてくるな! やめ…ぎゃーーーーー!!!










「う…ううう、う…」


「獄寺。どうかしたのか?」


「リボーンさん…オレ…オレ、雲雀に…ううう、もうお嫁に行けません・・・!


「そうか。ならオレが貰ってやるからそう泣くな」


「…り、リボーンさん……」


「それでどうしたんだ?」


「聞いて下さいよリボーンさん・・・! 雲雀の馬鹿がオレに無理矢理こんな格好を・・・!!」


「なんだ。その服装は雲雀の趣味か。まぁ悪くはないけどな



「何言ってるんですか!?」



「ともあれその程度で泣くな。オレだってこんな姿なんだぞ」


「こんな…? って、」



ズッキューン!!!



「? なんの音だ?」



「オレの心臓があなたに狙い撃ちにされた音です!!!



「獄寺。気をしっかりと持て


「無理です! チェシャネココスプレのリボーンさんを前にして平常心を保てるほどオレはまだ強くありません!」


「そうか?」


「そうです! やばいです無理です可愛いですリボーンさん! 一晩いくらですか!!!



「お前マジで落ち着け」



「リボーンさんを思いっきり抱き締められたら少しは落ち着けるかも知れません!」


「まぁそれぐらいなら…」


「こう、ぎゅっと! 背骨どころか首の骨が折れるぐらいちからいっぱい!!!」


(…オレ、いつかこいつに殺されるんだろうか)


「あああ待って下さいリボーンさん! 無言で距離を置かないで下さい!! リボーンさん!!」





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ああんもう特にその帽子から生えてる猫耳が可愛らしいです!!










「うう…ん、リボーンさん…」


「呼んだか?」


「う…え? あれ…リボーンさん?」


「そうだな。オレはリボーンだな。それがどうした?」


「いいえなんでも…そうかあれは夢だったか……いやまぁ、薄々は感ずいていたけどさ


「お前はビアンキが運んできたんだぞ」


「姉貴………ということはオレ姉貴を見て気を失ったんですね」


「そうなるな」


「ところで、なんでリボーンさんがここに?」


「言っただろ。ビアンキが運んできたと。オレが昼寝している部屋にな」


「…すいません。姉貴がリボーンさんに迷惑を…」


「別にかまわねぇが。ところでオレは眠い。寝ても良いか?」


「あ、はいどうぞ!!」


「そうか」


ころん。


「………」


「………」


「…あの」


「なんだ」


「その、なんでオレに寄り掛かかりますか…?」


「迷惑か?」


「とんでもないです!!! むしろ光栄です! 大歓迎です!!


「なら問題ねーな」


「はい。……………その、」


「なんだ」


「その…出来れば…その………抱き締めても、良いですか?」


「首の骨を折らないなら、良いぞ」


「はい! …って、え!?」


「…お前の寝言は聞いてて面白かったぞ」


「…今後読書は控えます。特に童話系は。ルイス・キャロルは徹底的に避けます」


「あら隼人。起きたの」


「げ! 姉貴・・・!」


「zzz…」


「…と思ったら寝ちゃったわ。リボーンも。…困ったわね」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

このクッキーどうしようかしら。










「………」


「………」


「また…戻って来てしまいました」


「未だかつてないな」


「オレ…このままもう目覚めたくないです…」


永眠願望か? ぞっとしねーな」


「だって起きたら漏れなく姉貴がいるんですよ!? しかもクッキー持って!! 悪夢ですよ!!



「夢はこっちだっての」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とりあえずしばらくここにいましょう…










おまけ。


不思議の国のハヤト☆





「はぅー、10代目待って下さいー!!」


「あー、時間がない時間がない!!」


「10代目ー!! 待って下さいってばー!!」


「急がないと遅刻しちゃうー!」


「10代目…待って…って…ぅぅう…」


「なんでこの時計こんなに遅れてるかなーもー!!」


「う、ひっく、ううう…」


「…ん?」


「うああああああああん! じゅーだいめー!! じゅーだいめぇぇええええ!!!」


「ってえええええええ!? ハヤト!? 泣くの!? そこ泣く所なの!?


「えぐ、ううう…10代目が酷いんですー! ハヤトを置いて行っちゃうんですー! うあーんばかばかばかばかー!!」


「最低だな」


「ひっく…リボーンさんー! ハヤトは…ハヤトは10代目に嫌われてしまいましたー! うあーん!!」


「嫌ってないから! そういう役だから! ていうかなんでリボーンがここにいるんだよ!!」


「ハヤトが泣いたら来るに決まってるだろうが」



「決まってるの!?」



「つーか急いでるんだろ? とっとと行ったらどうだ?」


「…え?」


「遅刻しそうなんだろ? 泣き叫ぶハヤトを置いて走り去ろうとするぐらいの大事なんだろ? 早く行ったらどうだ?」


「いやあの…」


「うっく…えぐ…10代目…お急ぎの所お邪魔してすいませんでした…どうぞ行って下さいです…」


「え…その、」


「どうした? まさか女を泣かせながら追いかけさせたい性癖でも持ってるのか?



「ねぇよそんなの!!」



(ビク!!!)


「あ…ごめんハヤト驚かせちゃって…大声出してごめんね」


(ぷるぷるぷる)


(怯えてる・・・めっさ怯えている・・・!!)


「最低だな」


「リボーンさんー…」



「………話なりたたねぇ…」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ごめんねハヤト泣かないで。置いてかないから。ね?


リクエスト「不思議の国の獄寺くん」
リクエストありがとうございました。