「次の問題です。竹馬の友の意味は―――何ですか?」
「んー…悪友?」
「残念外れです。正解は幼友達…だそうですよ」
「へー…知らなかったよ」
「続いていきます。医者の不養生の意味を答えて下さい」
「えっと、忙しくて休む暇もない…かな?」
「だったら良いんですけどね…人にはあれこれ指示しておいて、自分は怠ける事です。…あの馬鹿医者にぴったりですね」
「…そんな意味だったんだ、オレ今までずっとそうだと思ってたよ」
「これから覚えていけばいいんです。…次、情けは人のためならず。この意味は?」
「え、そのまま、人に情けをかけると駄目になる…じゃないの?」
「それが面白い事にですね、人に情けをかけておくと、巡り巡って結局は自分のためになる、が正解らしいです」
「えぇー!? 何それオレ今の今まで誤解してたー!!」
「そうですね、日本の諺は少し面白いです」
「………」
「? どうしました10代目」
「んー…こうして獄寺くんと二人っきりで勉強だなんて、楽しいなーって」
「ああ、いつも野球馬鹿がいますものね」
「そうそう…」
「―――この教室っつー大勢の生徒がいる場所で、よく二人っきりなんて言葉が出るなツナ」
「山本か…丁度良いです10代目、今のこの状態の事を諺で何と言いますか?」
「え……噂をすれば影?」
「はい、大正解です」
「お、そうやって諺を覚えようってか」
「まぁな。お前もたまには有効活用してやんねぇと。馬鹿と鋏は使いようって奴だ」
「あぁ…なるほど」
「納得するなんてツナも酷いなー月の出てない夜に気をつけろー」
「―――はい?」
「…? なんだそれ。日本の諺にんなものあったか?」
「んー、諺とは少し違うのなー。な、ツナっ」
「あ、あはははははは」
キーンコーンカーンコーン…
「あ、チャイム鳴ったな。んじゃ、頑張れよ」
「……山本って、怖ぇ」
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まあそれはそれとしてテスト頑張ろう。
「獄寺くんごめん、次の時間のテスト対策に数学教えて」
「良いですよ。範囲は年齢算ですね」
「…ごめん、年齢算って何だっけ?」
「年齢算というのはですね、文章題の一つで文字通り年齢にまつわる計算の解き方です」
「例えば?」
「そうですねー…では、10代目の年齢がリボーンさんの年齢の四倍になるのはさて、何年後ですか?」
「え、ちょ、いきなり言われても…」
「こんな時使うのが年齢算です。式の書き方は流れる歳月をXと置いて…」
「ふーん…あ、そっか。だから―――二年後?」
「はい正解です。これが年齢算です」
「へぇー、面白いなー」
「でも誰の年齢の何倍になるの〜って日常じゃ使わないよな」
「うるせぇよ馬鹿山! とっとと覚えろ!!」
「あー獄寺くん怒鳴らないで! えっと、じゃあまた問題出してよ! オレたちで解くから!!」
「そっすか? じゃあ…」
「はいはいー!! んじゃあね、オレとパンティーラが20歳のとき結婚したとしてベイビーの年がオレのー、んー、じゃあ六倍になるのはベイビーが何歳のとき?」
「あ…? それを式に書くならこうなって―――」
「へー! 四歳のときかぁ!! 楽しみだね、パン…」
ヒュンヒュンヒュンッ!!
「…まぁ式で書くと四年後なんすけど、本人が結婚する気がないから一生来ないでしょうね」
「獄寺くん教えるの上手だねー」
「あ、京子ちゃん」
「私もやってみようかな? 良い? 獄寺くん」
「ん…まぁ良いけど」
「…じゃあ、私と獄寺くんが中学を卒業してから付き合いだして、高卒のあと結婚したと仮定して…」
「ちょ、京子ちゃん… 前半意味あるの?」
「雰囲気だよ、ツナくん。…で、出来た子供の年齢が私たちの年齢の10倍になるのはいつ?」
「その場合の式は―――」
「ちょっと獄寺くん!」
「はい?」
「い、良いのそんな計算して!!」
「いや良いも悪いも…ただの問題ですから」
「そうだよ、ツナくん。ただの問題だよ」
「………そ、そうだよね。ただの問題、例え話だよね…」
「―――あ、ごめん獄寺くん追加。子供が出来たのは、実は中学三年のときでお願い」
「…ん? そうなるとここの計算が…」
「ちょっと待てー!!」
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計算! 計算付くでしょ京子ちゃん!!
「――問題、日本国の三大基本原則を言ってみろ」
「すみません獄寺せんせー。分かりませーん」
「てめーふざけやがって…国民主権、基本的人権の尊重、平和主義だ馬鹿。覚えてろ!」
「あーあー、そーなのなー」
「んじゃ、日本国の象徴とされているものは?」
「…何だろ。総理大臣とか?」
「天皇だ馬鹿野郎! お前それでも日本人か!!」
「お恥ずかしいことに…」
「…ったく。じゃ、次の問題。婚姻は両性の何にのみ基づいて成立するか」
「合意のみ」
「お…正解」
「っへへー」
「次、結婚を禁止しているのは何親等までか」
「三親等。…ちなみに、一親等が親で、二親等が兄弟、三親等が叔父さん叔母さんだよな」
「…ああ、そうだ。大正解だ」
「やー…獄寺に褒められると照れるなー…」
「褒めてねぇよ…次。親が未成年の子に対してもつ養育、監護その他の権利の事をなんと言うか」
「親権。子供を見守るのは親の義務だよな!」
「うあー! てめぇこの偏りは何だ! 何で三大原則や天皇知らないでこっちはパーフェクト何だよ! この日の為に勉強でもしてきたのか!?」
「んー、勉強はしてきたけどこの日の為じゃないな…」
「は…?」
「知ってるか獄寺。ポルトガルじゃ、同姓でも結婚を挙げられるんだぞ」
「は…? 何の話だ?」
「まだ分からないか獄寺。つまり―――」
ゲスッ
「いてっ」
「はい山本そこまでー…大丈夫獄寺くん?」
「10代目? はい、大丈夫ですけど…」
「うん、無事なら良いよ。…それにしても、ポルトガルかぁ……ちょっと良い情報ゲットしたかも」
「? 10代目? どうしたんですか?」
「何でもないよ? 獄寺くん」
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そうですか。何でもないならいいんです。
「WTO」
「ワールド・トレード・オーガニゼーション。世界貿易機関」
「IMF」
「イマジネーション・マネトリー・ファンド。国際通貨基金」
「…発展途上国の児童福祉の為、食料、薬品、施設などを提供しているのは?」
「UNICEF(ユニセフ)国連児童基金」
「教育、科学、文化の国際交流を通じて世界平和に貢献する事を目的としている機関は?」
「UNESCO(ユネスコ)国連教育科学文化機関」
「………国連の安全保障理事会は国際平和に大きな権限を持っているが、常任理事国の数は?」
「アメリカ、フランス、ロシア、中国にイギリスの五ヶ国。ついでに、非常任理事国は10ヶ国」
「国際連合の本部はどこにある?」
「ニューヨーク。……ちなみに、現在の総長はコフィー・アナン事務総長」
「―――オレが教えるところねーよ黒川。お前も教える側に回れ」
「あたし人に教えるの苦手なのよね。それより、獄寺が人に教えているところ見てたい」
「はぁ? そんなもん見てて楽しいのか?」
「楽しいわよ? あの獄寺が実は勉強教えるの得意だったなんて。少し新鮮で、面白い」
「オレは見せもんじゃねーぞ…」
「分かってるって」
「………なぁ、ツナ」
「なに、山本」
「いつの間に獄寺と黒川、あんなに仲良しになったんだ…?」
「オレの方が聞きたいよ…あの二人が会話してるところなんて始めて見た」
「んー? あの二人結構仲良いよ?」
「えっ!? 京子ちゃんそれ本当!?」
「そーそ! 席も近いし、なんつーのかなー…お互い一緒にいて負担にならないって言うの? 結婚するならそんなタイプだよね!!」
「それマジかよロンシャン…」
こくこく。
「パンティーラまで…良し、オレ負けない――獄寺くん!」
「あ、ツナ抜け駆けは良くないぜ! 獄寺!!」
「――獄寺くん!」
「はい? 何でしょう10代目――って」
「うん、分からない所があったからさ、教えてもらおうと思って」
「いやそれは構わないのですが…何でそんな引っ付くんですか?」
「迷惑…かな?」
「いえ、そうでは…」
「獄寺ー、オレもオレも!!」
「山本…? だから何でそんな引っ付くんだ?」
「「気にしない気にしない」」
「―――――?」
「―――ふぅっ」
「あ、花。お帰り〜」
「うんただいま…獄寺と付き合う奴は苦労するわね。少し会話しただけで睨まれちゃったわ」
「それだけ仲良しさんに見えたんだよ、きっと」
「…だと良いけど。でも、あたし別に獄寺と付き合う気はないけどね」
「そうなの?」
「遠くから見てるほうが楽しそうだし、それに…」
「それに?」
「あんたを敵に回したくないからね、京子」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あはは。ありがとー花。
「次は…英語か……」
「10代目英語は苦手ですか」
「うん、とりわけね…全く分からない」
「はいはーい! そんな時は沢田ちゃんこれだよ!!」
「…? ロンシャン、その本なに?」
「英語の参考書だよん。すっごい面白いよ!!」
「へー、てめぇも参考書なんて読むんだな」
「…あ、そうだ獄ちゃん、オレが今から英文読み上げるから、それを訳してみてよ!!」
「オレを試そうってか? へ、受けてやるぜ!」
「んじゃ行くよー、『The disaster happened artificially.』」
「んー…その大災害は人為的に起こされたものだった?」
「大正解〜☆ さっすが獄ちゃん!!」
「このくらい軽いぜ」
「次行くよ〜『Power is justice, l am justice.』」
「は…? えっと、正義は力、オレが正義だ…?」
「ぴんぽんぴんぽ〜ん! すっごいなぁ獄ちゃん!」
「お…おう」
「さらに次ー! ちょっと長いよ? 『57 meters tall and weighs 550 tons. This is the exact specification of the robot.』」
「……………」
「あれ? どったの獄ちゃん。分かんない?」
「いや、それ…文章間違ってねぇか?」
「んー…正しいはずだけど、どんな訳になったの?」
「えっと…そのロボットの正確なスペックは、身長57メートル、体重550トンだ」
「うわ、流石にそれは間違ってそうだよね」
「んにゃ。合ってるよん」
「いや間違ってるだろ! ちょっと見せてみろこの本!!」
「おりょ」
「………うわ、マジで書いてある」
「でしょー?」
「一体何なんだ、それ…」
「萌える英単語、略して『もえたん』だよん♪ ――あ、チャイム鳴っちった。んじゃねお二人方〜」
「……10代目」
「な、なに…?」
「日本って、奥が深いっすね…」
「う、うん…でもその深みにだけは間違っても入らないようにね」
「…? はい」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どうか獄寺くんは綺麗なまま、純粋なままでいてね。