え? 10代目ですか?


そりゃお慕い申し上げてますよ。オレの命を救ってくれた方ですし。


―――え、れ、恋愛感情的には…ですか?


それは…オレなんかが恐れ多いというか、相手がオレなんかで良いのかなというか。


だってオレ喧嘩っ早いし 不器用だし 料理出来ないし 手とか結構傷だらけだし。


………女じゃ、ないし…


………。



「あー…獄寺くんってば可愛いなぁもう!!」


え? 10代目!? 今の聞いてたんですか!? どこからですか!?


「最初からだよ! …ていうか獄寺くんそんなこと気にしてたんだ!? オレ全然気にしてないのに!」


…そうですか? でもオレ……


「でもも何もないの! オレがそうだって判断したんだから獄寺くんはもっと自信持つ!!」


はぁ…


「オレの言うこと、そんなに信じられない?」


信じられないといいますか、申し訳ないといいますか…


「………」


だって、10代目はきっとオレに出会わなければ今でも笹川京子のことが…


「獄寺くん!!」


は、はいっ!?


「オレ獄寺くんがそういう人だって知ってるから、今こんなこと言っても仕方ないって分かってるけど。あえて言うよ?」


…? はい。


「オレ獄寺くんに逢えてよかったって思ってるし、オレもう獄寺くんなしの人生なんて考えられないんだから」


……10代目…


「これはオレ一人が思っても駄目なことだから。獄寺くんにも、いつか同じこと言わせてみせるからね?」


え? …10代目、それぐらいでしたらもう叶いますよ?


「え?」


だってオレも10代目に逢えてよかったって思ってますし、10代目なしの人生なんて考えられませんから。


「・・・っ ご、獄寺くん…」


はい?


「どーしてキミはそんなこと平気で言えるかな! いや意味が分かってないからだろうけど!!」


え? え? なんですか? 何の話ですか?


「獄寺くんが可愛いって話! ああもう駄目! 獄寺くんごめん、ちょっと押し倒させて!!!」


え、ちょ、じゅうだいめ―――





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なにを―――――










ん? 雲雀? オレがあいつをどう思ってるかって?


そうだなー…。やっぱり変な奴、かな。


だってあいつ、よくわかんねーけどオレのこと好きらしいし。


や、駄目だろ無理だろありえねーだろ。だってオレ男だぜ?


それにオレ煙草吸うしよくサボるし態度最悪だし。


そんな奴と付き合っても、あいつの信頼が落ちるだけっていうか…



「へぇ…僕の事心配してくれてるんだ?」


…雲雀? なんでこんなところにいるんだよ。


「いや、キミが僕の事をどんな風に思ってるか知れるって聞いてね。ちょっと立ち聞き」


悪趣味。


「ごめんごめん。でも少し興味深い結果で僕としては満足かな?」


………。


はいはいそんなに睨まない。悪かったって。


本当にそう思ってるのか…?


「思ってるよ? まるで予想外の展開に驚いてもいるけど」


予想外?


「てっきり、嫌われてるんじゃないかって思ってたから」


…別に嫌っちゃいねぇよ。何でだ? 10代目を攻撃したからか?


「まぁね」


そりゃ10代目を殴った事は許せねぇけど、でもその10代目が気にしてないならオレがとやかく言うつもりはねぇよ。


「ふーん…」


それにお前、リボーンさんが認めるほど強いし、学校っていう集団施設の長みたいなもの率先して勤めてるし…結構、認めてる。


「………」


だからむしろ、オレの方が嫌われてるんじゃないかって…


「え? なんで?」


だってオレ、初めに言ったみたいに不良だし。知らなかったとはいえ、お前のテリトリーに足を踏み入れちまったし…


(そんなこと気にしてたんだ…馬鹿だね)


そんなオレにお前が好意持つなんて…思わねぇだろ?


「…ごめん隼人。キミ可愛いすぎ」


へ? ちょ、ひば…


「話の続きは応接間で聞くから。とりあえず行こうか」


え? ちょっと待て、おい―――


「…あ、一応言っとくけど、今から二時間ぐらい応接間には誰も近寄らないでね?」


ぱたん。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ちょ、何しやがる雲雀ーーー!!!










リボーンさんは憧れですよ。はい。


あの人ってなんでも出来ますし、素直にすごいと思えます。


姉貴が惚れるのも無理ありません。…敬愛、しています。


………え? 恋愛的には…ですか?


そ、その…あの人、きっとオレなんか眼中にないでしょうから…


あの人がオレの相手をしてくれるのは、オレがボンゴレの構成員なのに未だ半人前だからで…


オレが一人前になればボンゴレや10代目やリボーンさんが舐められることもないし、リボーンさんも少しは楽が出来るし…


それだけの関係ですから、その、れ、恋愛なんて程遠いというか―――



「そう悲観するな」


―――え? リ、リボーンさんっ!? どうしてここに!? いえ、それ以前にどこからっ!?


「悪いが最初からだ」


わ、忘れて下さい見なかったことにして下さいなかったことにして下さいー!!


「なんでだ?」


なんでって、なんでって…! その…!


「オレは気に入った奴の相手しかしねぇぞ?」


…え?


「それどころか、獄寺だったら正妻にしてもかまわねぇって思ってるが?」


せ、正妻・・・!?


「ああ…不服か?」


い、いえそんな滅相も! でもそんな、オレなんかで良いんですか? 本当に。


「…獄寺。二度は言わねぇぞ?」


―――はい?


「オレは獄寺だから。正妻にしてもいいって思ったんだ」


………っ


「だからもう二度と"オレなんか"なんてつまんねぇこと言うんじゃねぇぞ。分かったな」


は、はい!


「よし。…じゃあ獄寺。少し向こうの部屋まで付き合え」


…はい? 何するんですか?


「まぁお約束…という奴だ。深くは考えるな」


―――? はい。分かりました。お付き合いします。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

リボーンさん、どうして部屋の鍵を締めるんですか?










シャマル? あのヤブ医者?


嫌いも嫌い、大っ嫌いだよあんな奴。


あいつ毎回オレをからかって楽しんでるんだぜ? まったく、顔を見合わせる度に人をおちょくりやがって…


あーもう! 思い出したら腹立ってきたー!!


ていうか、あいつ女しか診ないんじゃなかったのかよ。


何でか知らねーけど、オレだけはいつも診るんだよな…


……ま、どうせきたねー大人の事情って奴なんだろうけどな。…ったく。



「なーにを誤解してるのかはしんねーけど。オレは診たい奴しか診ねぇぞ」


シャマルか…オレは今機嫌が悪いんだよ。あっち行け。


「つれないねぇ。昔はあんなに可愛かったのに」


オレは昔とは違う。


「そうだな。今は可愛さに加えて色っぽさも出てきた」


…シャマル!


「何だよ。本当の事言って何が悪いよ」


は、何が本当の事だ! オレに本当のことなんて言ったことないくせに!!


「…あ?」


いっつも適当なこと言って! 同じような台詞を繰り返して! どうせお前の"妹"にも同じこと言ってんだろ!!


「あー…。お前まだあの娘ら妹だって誤魔化してたこと根に持ってんのか? なら謝るから…」


謝ったって! それで一体何が変わるってんだ! どうせオレをからかうのを止めはしないんだろうが!!


「隼人…」


だからオレはお前が嫌いだ! 分かったらあっち行け!!


「…お前、本当馬鹿だな」


なー! なんだとこの野郎!!


「オレがこれほどまでに相手する奴って。他にいるか?」


てめぇの人間関係なんてしらねぇよ!!


「―――それにしてもからかう、ね…オレがどれほど堪えた上での行動かも知らないで…」


あ…? 今なんて言った?


「隼人可愛くて襲いたいなって」


嘘付け!!


「いや、事実なんだが…」


そうやってまた訳分かんねーこと言って誤魔化しやがって! もういい! オレが帰る!!


「あー、待て待て隼人。お前に用があるんだから帰られたら困る」


…用? なんだよ。


「おじさんとデートしようぜ?」


はぁ?


「たまには二人っきりでさ。うまいもん食ったり、のんびりしようぜ?」


…どうせ他の女見たらそっちに行くんだろ?


「行かない行かない。オレには隼人だけだから」


またそんな口先だけの…


「そう思うんだったら、試してみねぇ?」


………あ?


「今日、オレは他の女に見向きもしねぇ。もちろんお前をからかったりも」


出来る訳ねぇだろ。


「だから言ってんだろ? 試してみねぇ? って」


――おもしれぇ。やってやろうじゃん。破ったらそこでオレ帰るからな。


「望む所だ。じゃあ楽しいデートに行きますか」


…さり気に肩組むな。エロ医者。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…で、どこに連れてってくれるんだ?










跳ね馬? …いけすかねぇ奴。


てか、年上はみんないけすかねぇって思ってるけどな。オレは。


…うっせぇよ。何があったって、何でも良いだろそんなもん。


年上の奴は…特に大人って奴は信用ならねぇ。


別に恨んじゃいねぇけど…あれは騙されたオレが悪いし……


あー、なんか腹立ってきた。つーか大人見たらなんとなく思い出しちまうんだよ!


だからあいつは嫌いだ。あいつが悪いってわけじゃねぇけど…でもどうしても駄目なんだ。



「なんだお前、別にオレが嫌いってわけじゃなかったのか」


――跳ね馬? なんでお前、こんな所に…


「どうだっていいじゃねぇかそんなこと。それより、さっきのは本当か?」


………あ?


「お前がオレを嫌っているのは。オレを見るとお前を騙した奴を思い出すから」


そうだよ。


「そっか…なら、オレにもチャンスがないわけじゃないだな…?」


? 何の話だ?


「長期戦は得意じゃないんだが…まぁいいか。これも試練だと思って」


…跳ね馬? 聞こえてないのか?


「んじゃ、方針が決まったのなら…スモーキン」


お、おう?


「辛いかもしれないがお前を騙した奴の情報をくれ。オレが始末してやる」


………は? なんだいきなり。つーかそんな細かいとこまで覚えてねぇし。


「そこを何とか」


いやいや何とかじゃねぇよ。無茶言うなよ。


「よし分かった。じゃあオレと大人の付き合いをしよう。それできっと思い出す」


いや。意味が分かんねーよ。


「いいからいいから」


うわ、こら…ひっぱんなー!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

何しやがんだこの馬鹿!!










山本…?


別に、どうとも思ってねぇよ。


オレはマフィアで、あいつはただの一般人。


もともと会うはずがなかったんだ。だからどうとも思っちゃいけねぇ。


…でも。


もしもオレが、ただの日本人として生まれてきて、あいつと会ったなら。


――きっと、一番のダチに…なれた気がするな……


「そいつは光栄」


って、山本…今の、聞いてたのかよ。


「途中からな。うん、それにしても良かった」


はぁ…? 何が。


「流石のオレも、ガキの頃から獄寺のこと知ってたらダチ以上の関係なんて持てなかったと思うし」


………? どういう意味だ?


「そのまんまの意味。…あー、でもオレ獄寺ならガキの頃からの付き合いでも好きになってたかもなー」


寝言は寝てから言うものだぞ山本。


「だからオレは本気なんだって獄寺ー!」


はいはい。分かった分かった。


「獄寺ー、信じてくれよー!」


…信じねぇよ。


「獄寺…?」


信じたら、別れるとき辛くなるだろ?


「別れなんて…」


オレはいつかイタリアに帰る。それはもう決まっていることだ。


「だったらオレも・・・!」


お前は来るな。…お前には、似合わない世界なんだよ。


「―――でも、ツナは一緒に行くんだろ…?」


あ?


「あの小僧も、金髪の兄ちゃんも、そういえば雲雀も計画表立ててた…」


お、おい…山本?


「三浦も未来はイタリアにいるとか何とか言ってたし…――は、そういえばもイタリア出身だっけ!?」


や、山本! 落ち着け!!


「なのに何でオレだけいけねぇんだよ獄寺ー!! うわああああああん!!」


山本、ちょ、お前どこに行く気だー!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

おいこら待てーーー!!










格好良いですよねお父様! ワイルドです!!


逞しくて、明るくて、家族想いで! もう理想の人なのではないでしょうか!!


10代目は誇り高いでしょうね! そんなご立派なお父様をお持ちで!



「それがだなぁ、マイ・サン (我が息子よ)」


は! お、お父様!? どうなされましたか!? そんなに溜め息吐いて!!


「ツナの奴がな、オレに全然構ってくれんのだ…」


そんな、…きっと10代目は照れているだけですよ!!


「そうかなぁ…そうだといいんだが…」


そうです! きっとそうですよ!


「やさしいな、獄寺くんは…ツナが見込んだ嫁なだけはある」


そ、そんな…(って、嫁?)


「よし、景気付けに一杯やるか! 獄寺くん、付き合ってくれ!!」


は、はい! 喜んでお付き合いさせて頂きます!!


「よし! ならばこれを一気に飲み下せ!!」


は…「なにやっとんじゃあこのくそ親父―――!!!」


ん…げほ。あ、あれ? 10代目? どうしてここにいるんですか?


「そんな事より! 獄寺くんそれ飲んだ!? まだ飲んでない!?」


えっと…その、少し…―――はれ?



ぱたり。



「ご、獄寺くん―――!!!」


「おお、大丈夫か獄寺くん」


きゅー…


「獄寺くんに一体何飲ませたんだよこの馬鹿親父!!」


「ん? ただのウイスキーとキールとジンと焼酎のちゃんぽんだが」


「アホか―――!!」


「それよりも早く獄寺くんを医者に診せんと。顔色がすこぶるやばいぞ」


「誰のせいだよ誰の!」


「まぁ父ちゃん的にはそのままベッドに連れ込んだ方が良いと思うがな。まだ一線越えてねぇんだろ?」


「誰がするか―――!!!」


きゅー…





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

お…オレはもう駄目です……










アホ牛のうざ牛。


…あ? それ以上何があるってんだ? あの牛にはそれで十分だろ?


―――は? 恋愛感情?


いやいや。あるわけねぇだろ。なんでオレがあんなガキに…


…つーかガキ以前の問題か。今はボヴィーノは格下だから相手にされてないけど、未来はどうなるかわかんねーしな。


もしも抗争とかになって。オレとあいつが立ち合ったら。…オレはどうするのかね。


―――撃てるのかな。オレはあいつを。


………それとも…


「ゴクデラー!」


噂をすれば、か。どうした牛。なに泣いてんだ? …またリボーンさんにやられたか?


「今日はそれだけじゃないー!!」


………あ?


「今日はツナにもヤマモトにも黒服にもやられたのー!!」


お前…一体なにしたんだ? 雲雀は…まぁともかく、子供が好きな10代目や山本にまで…


「知らない知らないー! ただ10年後のゴクデラの話しただけだもん!!」


そ、そうか…


「そしたらあいつら、『この怨めしい牛』 って…うぁあああああぁぁああん! やだー! あの家帰りたくないー!!」


やかましい。落ち着け。…今日はうちに泊まっていいから…


「え? 本当!?」


お前…直ぐに泣き止むなんて現金だな……ま、よく分からんがオレにも原因があるみたいだしな。


「わーい! ゴクデラ大好きー!!」


はいはい…





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さて帰るか。ぶどう買ってやるよ。