どこにいても 想うのは



…キミが長期の任務に赴いて。もう随分経ちました。


この10年、ずっとずっと傍にいて。…いつも、オレの傍にいて。


これからも、いつまでもそうだと信じて疑わなかったキミが。行ってしまいました。


―――その命を、下したのは…オレなんだけど。


オレがそう望んだ事じゃないけど。キミがそう望んだ事じゃないけど…


世の中、想いだけじゃどうにもならないこともあって。


はぁっと溜め息一つ。それを最後にして、オレは顔を、態度を。引き締める。


彼が任務に行く前に、みんなに無茶言って。オレと彼にオフを貰って。一日中いちゃついていたから暫く休みなし。


…いいけどね別に。彼がいない日に休みがあっても意味ないし。


それよりも、とオレは行ってしまった彼を想い、そして仮にスケジュール通りいったとして帰ってこれる日時を確認して…


その日数の多さに、また溜め息が出そうになるけど何とか堪える。隣にいるリボーンに見られたら何を言われるか分かったものではない。


そう…彼がいない間、彼の、右腕の仕事はリボーンに引き継がれた。つまり、今のオレの右腕はリボーンという事になる。


彼は「リボーンさんなら安心して任せられます!」とか笑いながら言ってたけど。


…オレにしてみれば、右腕は彼にしか任せられないのに。


リボーンに彼のやっていたことを、オレは辿って欲しくなくて。


それが見透かされたのか、リボーンは「だったら自分でやってみろ」って言ってきて。


リボーンとしては自分が楽になるからの発言だろうけど。でも彼以外の人間が、彼の仕事をするのにはやっぱり抵抗を覚えて。


だからオレはボンゴレ10代目の仕事を、右腕の仕事ごとやっている。


やってみて初めて分かる。彼がどれほど優秀であったか。右腕というものがいかに大変か。


………どれほど彼に、支えられていたか。


彼がいなくなってからの生活は、オレが予想していたよりもあまりにも味気がなくて。


…でも、ボンゴレ10代目の仕事と、空いた彼の分の仕事との両立はあまりにも忙しく。


そのあまりの量に、忙殺されるかとも思った。


おかげで寂しさを感じることも、切なさを感じることも。そうはないけど。


…窓の外を見ると、そこにはキミに見せてあげたいぐらい気持ちのいい青空が広がっていて。


視線は空を見上げながら。けれど意識は彼に、愛しい彼に向かっていて。



――獄寺くん、キミは今どうしていますか? 何をしていますか?


オレに逢えなくて寂しいですか? 時折でも、オレを思い出してくれてますか?


…どうか元気でいて下さい。そして、出来る限り早く―――帰ってきて下さい。



―――オレの元へ。





…オレが貴方の元から離れてから、もう随分経ちました。


貴方は今も、アジトの中で激務に追われているのでしょうか。


…リボーンさんがオレの代わりだから、大丈夫だとは思うけど。


オレが任務に行く前日、貴方が半ば無理矢理休暇を取って。オレの元へ来た時は驚きました。


おかげで幸福な一時を貴方と味わうことが出来ました―――けど。


…でもそれで。貴方の休暇が暫くなくなってしまったのが気掛かりです。


そんな今の貴方の生活はどうなっているのでしょうか。


食事はきちんと取れていますか? 睡眠は?


山のようにある資料に押し倒されていませんか?


………たまに、オレの事を思い出してたりしますか?


あ――…これはなしでお願いします。



少し、希望が入りました。



…オレは貴方のいないこの地で。任務をこなしています。


貴方のお傍を離れたくはなかったけど。でもその貴方の命ならば。それも已む得ません。


オレに出来る事といえば、貴方の無事を祈る事。そして一刻でも早く任を終わらせて。貴方の元へと帰る事。


空を見上げれば、貴方にも見せてあげたいぐらい気持ちのいい晴天が広がっていて。思わず笑みが零れて。


平和な街中に響く聖歌を聞きながら。それでも意識はあの方へと向かっていて。



10代目、今貴方はどうしていますか? 何をしていますか?


忙しさのあまり倒れてはいませんか? 雲雀にからかわれていませんか?


…どうか元気でいて下さい。オレは出来る限り早く―――帰ってきますから。



―――貴方の元へ。





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「さてそれじゃあ」「もうひと踏ん張りといきますか」