某月某日。


ヴァリアーファミリー一行は並盛動物園へと訪れていた。





事の始まりは数日前。


獄寺のもとにボンゴレのツナからメールが届いた。


それは今度の日曜にみんなで動物園に行くのだけど獄寺もどうかという遊びへの誘いだった。


特に用事もなかった獄寺は早速ザンザスへと報告に行った。獄寺のスケジュールは全てザンザスが把握しているのだ。


最初、ザンザスは断らせようと思った。


ボンゴレと馴れ合いをする必要はないと。


必要時だけ手を貸す存在であればいいと。


だが…


同年代に遊びに誘われるなど初めてのことだったのだろう。獄寺はとても嬉しそうだった。


そんな獄寺を前にして、駄目だだなんてどうして言えよう。


ザンザスは承諾した。しかし条件をひとつ出した。


自分もついて行かせること。





「…別にお前らまで来ることなかったんだぞ」


「あらーいいじゃない。獄ちゃん動物園も初めてなんでしょう? そんな一大イベントママとして放っておけないわ」


「オレも兄貴だしー兄貴は弟といつも一緒にいるの!!」


「オレは…荷物持ちとカメラマンとしているだけなので…」


「ヴォイ…それでいいのかレヴィ…」


「僕は獄寺のアクセサリーみたいなもんだから気にしないで」


「お前もそれでいいのかよマーモン…」


ザンザスの出した条件は自分ただ一人が着いてくることだったがいつの間にかヴァリアー総出で着いて来ていた。


なおそれを見たツナは「過保護か!!」と思いっきり突っ込みを入れた。





「お…おはよう獄寺くん…オレは獄寺くんだけ誘ったつもりだけど……」


「おお、ボンゴレ。こいつらに関しては気にしないでくれ」


獄寺は無茶な要求をさらりと言ってきた。


一人だけでも濃いメンツが全員揃っているのに(しかもこっちを睨みつけているのに)気にするなとか。


「今日はツナのイメージアニマルを探しに来たんだ。獄寺、お前も考えてくれるか?」


言われた通り全く気にせずリボーンが言う。マーモンがリボーンを見てとってあかんべーをした。


「イメージアニマルっすか…リスとか…モルモットとか?」


「言ってること京子ちゃんと同じだー!!!」


「カカカ! こりゃおもしれえ!!」


珍しくザンザスが大笑いしていた。獄寺も目を丸くしている。


「おい隼人。オレのイメージアニマルはなんだ?」


「そりゃライオンだろ」


「当然だ」


予想通りの答えにザンザスが満足気に笑う。


「お! 隼人隼人ー! オレは?」


ベルが獄寺の肩を抱きながら聞く。


「あー…サーベルタイガーとかじゃね?」


「おー…いいなー!」


「あら、ならアタシは?」


「………ゴリラ?」


「んま! 失礼しちゃうわ!! アタシの美貌を表せるのは孔雀とかそういう系でしょ!!」


「悪い…ルッスは筋肉が目立ちすぎてどうしてもそっちに目が…」


「僕は?」


「クラゲ」


「アニマルじゃねーーー!!!」


その後も何故か獄寺にイメージアニマルを決めてもらう流れとなった。(ちなみにレヴィはサイ、スクアーロは豹となった)


首を捻りながらも、真面目に考える獄寺が愛おしくも可愛くて。


みんなは獄寺の回答に一喜一憂しながら気付けば全員で動物を見て回っていた。





「……それで、獄寺くん」


「ん?」


暫し歩いて、ツナは獄寺に小声で話しかける。


「獄寺くん…あのさ、もしよかったらボンゴレに…」


「おい、ボンゴレ」


「ヒィイ!!!」


話しかけて僅か7秒でザンザスから凄まれた。


地の底から這い出るような声にビビるツナ。


「隼人に…何の話をしようとしてんだ?」


返答を誤れば即座に死が飛んできそうな声。


ツナは咄嗟に出任せを言っていた。


「ななな何でもないよザンザス…! ただ獄寺くんのイメージアニマルは何かなって……!!」


「隼人のイメージアニマル…? んなもん決まってんだろうが…」


「そ、そうだよねあはははは…」


ザンザスの中では既に答えが出ていたようだ。実はツナも考えてある。獄寺がイメージアニマルを考えているとき、ツナもまた考えていたのだ。


二人は同時に口を開いた。



「アメリカンショートヘアー」


「シベリアンハスキー」



「「………」」



意見は犬派と猫派に真っ二つに分かれた。


「隼人は…気紛れなところもある…なら猫だろうが…」


「いいえお義父さん、獄寺くんは犬です!!


「アタシも坊やに賛成よー」


「いや、隼人は猫だろー」


「僕も隼人は犬だと思うな…」


ヴァリアーで内部分割が起こった。


いや、ヴァリアーだけではない。ボンゴレの中でも猫だいいや犬だと意見が分かれていた。


犬派と猫派でボンゴレヴァリアー混合派閥が出来上がった。


それは新たな友情の始まり、そして亀裂の始まりでもあった。


猫と犬。それはどちらも譲れぬ一線だった。


そして始まる獄寺犬猫戦争。


その様子を呆れ顔で見つめる獄寺。


獄寺は同じく遠くに離れていたリボーンと動物園回りの続きをするのだった。





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「ところで獄寺。オレのイメージアニマルは…」

「…うさぎっすね」

「!?」