「ねぇ隼人ちゃん隼人ちゃん」


「なんだよ」


「僕絵本を作ってみたんだ。聞いてくれる」


「絵本? お前が?」


「うん」


「お前が絵本ね。…どんな話なんだ? 聞いてやるから話してみろよ」


「うん! あのねあのね、昔々あるところに、白い王子様と銀のお姫様がいました!」


「………」


「王子様はお姫様が大好きでした! だから毎日お姫様に愛の告白をしていました!!」


「………」


「けれど、お姫様は照れ屋さんなのかなんなのか、なかなか王子様の想いに答えてくれません…」


「………」


「王子様はもしかして自分は嫌われているのかなぁ、とか考えました。けれどお姫様は王子様相手にやさしくもしてくれるのです。王子様は訳が分からなくなりました」


「………」


「お姫様は王子様を、どう思っているのだろう? と王子様は最近毎日考えています」


「………」


「………」


「………続きは?」


「まだここまで…だから、隼人ちゃんに続きを考えてもらおうと思ってきたんだ」


「ふーん…」


「考えてくれる? お姫様パート」


「そうだな…昔々、あるところに白い王子様と銀のお姫様がいました」


「………」


「お姫様と王子様の関係は、ただのお友達でした」


「えー!?」


「どうした?」


「い、いいや? 別に…」


「…お姫様は王子様をただのお友達だと思っていたので、王子が告白する度に実は内心うざがってました」


「そうだったの!?」


「だから何の話だ?」


「い、いいや!? 別に…」


「……普段の王子様は、普通に好きです。ですが、告白してくる時の王子様のテンションは馬鹿のように高くて、お姫様は一人になるといつも溜め息を吐いていました」


「……………」


「なんで泣いてるんだよ、お前」


「別に……」


「………そろそろ王子と縁を切ろうかな、とかお姫様は思っています」


「隼人ちゃん縁切らないでーーー!!!」


「ぬわーーー!! 引っ付くな馬鹿暑苦しい!!!」


「ごめん少しテンション下げるから! 毎日告白は止めるからお願いだからここにいてーーー!!!」


「引っ付くなっつってんだろ!! 大体、これは絵本の話だろ?」


「え?」


「これはお前が作ってきた絵本のお姫様の話だって言ってるんだ」


「え? え?」


「…それともまさか? お前は? 絵本に近況を見立てて誰かの本心を聞き出そうとかそんなせせこましいこと考えてないよな?」


「かかかか考えてないよ!? 考えてないともさ!! うんそうこれは絵本の中だけの物語に決まっているじゃないいやだなぁもう隼人ちゃん!!」


「ああそうだよな。絵本の話だよな」


「うんそうだよそうともさ! あははははは!!」


「あははははは」


「ははは…」


「………」


「で、本心は?」


「どっちにしろ聞くのか…」


「だって…」


「うざい」


「酷い!?」


「大体お前の告白、意味ないだろ。だって―――」


「うううう僕はこんなにも隼人ちゃんが大好きなのに!! 隼人ちゃんのばかああああああああ!!!」


「って、白蘭? …行っちまった…オレの台詞、まだ終わってないのに」



やれやれと、獄寺は溜め息を吐いた。



「…関係持って一緒に暮らしてるのに、今更告白って………なぁ?」



そう呟いた後、獄寺は自分で言って少し照れたのか少し赤くなった頬を指で掻いて、何かを誤魔化すかのように煙草に火を点けた。





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ああ、煙草が美味い。


月虹様へ捧げさせて頂きます。