彼にだけは絶対言えない。


彼と初めて逢ったあのときに、オレの中で何が起きたかなんて。


…彼にだけは、絶対に言えない。



言えない



彼を初めて見たときに、オレが感じたのはそう――


『彼は異質だ』 ということだった。


季節外れの転校生。


初めて目にした帰国子女。


けれどその正体は生粋のマフィア。


おまけに扱う武器は大きな音と破壊を産み出すダイナマイト。


滅茶苦茶だ。彼の何もかもが、出鱈目だった。


…けど。それだけならまだよかった。


近寄らなければ、近付かなければ。そうすればまだ他人事のように受け流せたから。


だけど、そうはいかなかった。


気が付いたときには、オレは彼に『10代目』として固定されていたから。


異質な彼は異質な態度でオレに接する。


『10代目』というよく分からないフィルターの掛かっている彼に『オレ』の言葉は届かない。


理解する。彼は盲目なのだと。狂おしい程に何も見えていないのだと。


だからオレは彼を恐れた。今まで見てきた何よりも異質な彼を。


だって、そうする以外にオレは彼に対して何をすればいいのか分からない。


この生まれ出た気持ちに、どう対処していけばいいのか分からない。


何よりも盲目な彼。


何よりも異質な彼。



―――そんな彼に、何よりも惹かれている、オレ。



誰よりも彼を怖がっているくせに。


何よりも彼を恐れているくせに。


なんて勝手な、この想い。


…彼にだけは絶対言えない。


彼と初めて逢ったあのときに、オレの思考は心ごと彼に奪われたなんて。


彼にだけは、絶対に言えない。





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キミを見るとすごくどきどきして。

キミを真っ直ぐ見れなくて。

キミの行動の一つひとつに一喜一憂して。


キミを怖い怖いと思っていたはずなのに。何かが違ったこの想い。

この気持ちに名前を付けるなら。この気持ちに名前が有るのなら、それは――…