「おーい、ツナー」


ボンゴレリングを賭け、独立暗殺部隊ヴァリアーの面々との死闘に無事勝利を果たしたツナのもとにリボーンが現れた。


「どうしたのさ、リボーン」


「こないだ戦ったヴァリアーの中に気になる奴がいただろ」


「…ビアンキの…弟さん?」


「そうだ。名前は獄寺隼人」


「獄寺…くん……」


今でもよく覚えてる。黒くて大きな集団の中にいた、小柄で銀色の彼。


同い年ぐらいだった。もし彼と同じ学校に通えていたらクラスメイトにだってなれたかもしれない。


なのに彼は裏の世界、闇の住人の一人として自分の前に現れて。ツナを、姉を、仲間たちを殺そうとした。


しかもその戦い方は爆弾を使うもので。下手をすれば彼自身も死んでしまいそうで。なのに彼はまったく怯んでなくて。


怖いと思った。恐ろしいと。


だけど…


何故だか、どうしてだか、悪い人には見えなかった。


その目付きの鋭さだけで、少し前まで一般人だったツナは殺されてしまうかと思ったのに。


彼と話したいと思った。


それは彼の姉たるビアンキや昔馴染みだというシャマルが彼のことをまったく悪く言わなかったからかもしれない。


むしろ二人は、別れる前の彼がどれほど可愛かったか、愛おしかったかを力説していた。


何があって、どうあって今、暗殺部隊の中にいるのかは分からないが…きっと訳があるのだと思った。


「…その獄寺くんが、どうしたの?」


「オレも気になったから、少し調べてみた」


言って紙の束を懐から取り出すリボーン。読み上げる。


「獄寺隼人14歳。9月9日生まれの乙女座。趣味はピアノ」


「何そのお嬢様」


リボーンは0.1秒で突っ込まれた。


「お嬢様で何が悪いのよ」


ツナは背後から現れたビアンキに首を絞められた。それを見ながらリボーンは続ける。


「得意武器はダイナマイト。それでか二つ名は人間爆撃機。他にも悪童とあるな。あとナイフや体術の心得もあるらしい」


「ぎゃーーー!! び、ビアンキ…!! ギブギブ!!」


リボーンの説明をツナはまったく聞いちゃいなかった。


「隼人はね…城にいた頃はそれはそれは優しくて愛らしくてお姉ちゃん思いで可愛い子だったんだから! それに病弱!!」


「び、病弱…?」


「そう…ピアノの発表会の度に身体を壊してた…きっと緊張してたのね。私は少しでもリラックス出来ればとクッキーを作ったけど、無駄だった…」


「………」


ツナはある程度の事情を察し、獄寺に深く同情した。


「そんな病弱な獄寺が城を飛び出たのが八歳の時だったそうだな」


「そう…一体何が不満だったのかしら……」


少なくともその要素のひとつはビアンキだろうな。とツナは思った。


「それから数年獄寺はスラム街で過ごし、そして何があったのかヴァリアーに入隊した」


「本当に…一体何があったのかしら」


「決まってる! 騙されたんだ!!」


と、憤りながら現れたのはシャマルだった。


「し、シャマル…どうしてここに」


「ふ…隼人の話あるところにオレの影有りだぜ」


意味がわからなかった。


「…そ、そう。で、シャマル。騙されたに決まってるって…何か心当たりでも?」


「あいつは言われたことを疑わず何でもかんでも信じちまうからな…きっと美味しい話を持ちかけられて騙されてるんだ……」


よよよとシャマルは泣き崩れる。一体どのような悪魔の契約書にサインしてしまったんだと嘆いている。


「あいつは本当に可愛くてなあ…オレのあとをまるでひよこみたいにひょこひょこひょこひょこ着いてきて…オレに憧れてオレの髪型真似してオレを先生先生って……」


シャマルが遠い過去を見ている。それを無視してリボーンは続ける。


「とにかく、ヴァリアーに入隊した獄寺だが…見所があるんだろうな。幹部総員で鍛えているらしい」


「鍛えてる?」


「ああ。スクアーロが剣術、ベルフェゴールがナイフ、マーモンが策謀、レヴィが交渉術、ルッスーリアが茶道と華道だそうだ」


「最後おかしくない?」


「確かな筋の情報なんだけどな」


「ヴァリアーは大和撫子でも作るつもりなの?」


「その辺はボスのザンザスに聞け…そうそう、ザンザスの担当は護身術だそうだ」


「あいつ護身なんてキャラじゃないだろ!! 護身術なんて知らないだろ!!


「ああ。だから獄寺に教えるためにわざわざ習ったらしい


「あいつどれだけ獄寺くんに護身術教えたいんだよ!?」


「で、門限は五時なんだと」


「門限て…!!」


なんということだ。どういうことだ。ヴァリアーとは名高き暗殺集団じゃなかったのか。それが門限て。門限五時て。


「まあ、ここら辺の情報は極秘なのか巧妙に隠されていたらしいからな。どこか間違っているかも分からん」


「そ、そう…」


むしろ間違っててほしかった。しかし獄寺の情報がトップシークレットって。一体彼は何者なのだろう。


やはり彼と話をしてみたい。しかし居場所までは流石のリボーンですら分からないだろう。


ツナがそんなことを考えていると…携帯が鳴った。ディスプレイを見れば山本の文字。どうしたのだろうか。


電話を取ってみた。


『―――ツナ! 大変だ!! こないだのヴァリアーって奴らが…あのビアンキのねーさんの弟がうちに来てる!!』



とんでもない情報をゲットしてしまった。



山本もまさか自分の家まで来るとは思ってなかったのか、ものすごく動揺している。


『どどど、どうしようツナ! 間近にあの綺麗な人が!! サイン貰ってもいいかな!? 頼んだらしてくれるかな!?』


「ひとまず落ち着きなよ山本」



ツナがどうどうと待ったをかけていると視線を感じた。見れば、ビアンキが般若のような顔をしながらこちらを見ていた。


「ひ!?」


「山本…隼人に手を出したら………殺すわ


「急いで行くぞビアンキちゃん!! 隼人を救い出すには今しかない!!」


「オレも行くぞ。超面白そう


ひとりだけお気軽気分だった。うきうきしている。


ツナを置いて行こうとするみんなをツナは慌てて追いかけた。





一方、所変わって竹寿司店。


「よーし何でも食え食え隼人! 兄ちゃんが奢ったる!!」


「まぐろー」


獄寺はベルに連れられて並盛を観光していた。


もうベルはただの弟思いの兄ちゃんだった。


「へいお待ち! まぐろです」


頼んだ品が早くもやってきた。あと何故か色紙も。


何事かと上を見ればマジックを差し出された。そこにはいつだったかのボンゴレメンバーの一人。スクアーロを倒した雨の男がそこにいた。



「すいませんもしよろしければサインください!!!」



そして頭を下げられた。


以前会ったときはまるでプロの殺し屋のような気配を感じたのに、今目の前にいるそいつはただのサインをねだる子供だった。


思わぬ仇敵との再会と、思わぬ要望を叩きつけられてと、早く寿司食いたいという気持ちが混ざり合い獄寺の動きが止まる。


固まった獄寺をその身に引き寄せるのはベルフェゴール。


「駄目に決まってんだろ! 何言ってんだ馬鹿!!」


「そこを何とか! お願いします!! オレ、一目でファンになったんっす!!」


「うちの隼人はそんなに安くねーんだ!!」


「じ、じゃあ今日の会計ただでいいから!!」


「おい武―――」


息子の勝手な交渉に待ったを掛けようとする店主。そこに我らがツナ一行が現れた。


「隼人!!」


「あ、姉貴!?」


我先にと飛び込んでくるビアンキを視界に入れてしまい、獄寺の顔色が悪くなる。過去のトラウマが脳内を過ぎり、身体が恐怖を思い出し、震える。


倒れそうになる獄寺を抱きとめるのは兄代わりでいるベル。


「隼人…大丈夫か? 病院行く?」


多分、誰が見てももうベルをヴァリアーの幹部の一人だとは思わないだろう。


獄寺を弟のように接し、可愛がり、心配するベル。


しかしそう簡単にそうだと理解されるわけがなかった。


「その手を離すんだな、切り裂き王子のベルフェゴール」


殺し屋モードで凄むシャマル。彼から見れば、獄寺がいつ血塗れになってもおかしくないのだ。彼を抱きとめる、ベルの手によって。


「き…切り裂き王子?」


慣れぬ単語にツナが恐々としながら聞く。シャマルはベルから目を離さぬまま頷いた。


「ああ…奴は子供の頃双子の兄をメッタ刺しにして殺害していて、それを筆頭に様々な奴らを遊び半分に殺している。趣味は地元の殺し屋殺し。更に自分の血を見ると我を失い反乱狂になって襲いかかってくるという……」


「………」


ツナは信じられない、といった顔でベルを見る。今目の前にいる彼は普通に心配性の兄ちゃんである。


不躾な視線を当てられ、ベルは不機嫌そうに口を尖らせた。


「まあ、確かにそれは嘘じゃないけど…隼人を切るつもりはねえよ」


「信じられるか!!」


「ま、まあまあシャマル。……本当に…獄寺くんを切ったことないの? 一度も?」


ツナに問われ、ベルは少し回想した。


出会った当初の頃は…というかルッスーリアに兄として守ってやれと言われる直前まで、結構切ってた。


ベルは顔を背けた。


「ほれみろ! やましいことがあるんだ!! 隼人を切るつもりはないってのは嘘でそのチャンスを虎視眈々と狙ってるんだ!!」


「狙ってねーよ!!」


「嘘に決まってんだろ!! 一体隼人にどんなことを言って騙してるんだ!? 隼人、正気に返れ!! こっちに来るんだ!!」


「騙すって…一体何の話をしてるんだ? あのおっさん」


いまいち話についていけないベル。その腕の中で、獄寺が動いた。


「あいつはシャマルといってな…」


「ん?」


「シャマルは…昔、オレの城で医者として働いていて…オレもよく世話になったもんだ……」


ベルの胸の中、獄寺は暫し回想に思いを馳せる。


子供の頃、姉を除いては大人ばかりの世界。そんな中でシャマルはよく自分の面倒を見てくれた。


だが…


「あいつはよくオレを騙しては遊んでたよ」


物凄く恨みがましい声色で、俯きながら獄寺が言う。


「は、隼人…?」


思わぬ攻撃にシャマルが怯む。周りの視線が痛い。


「よくも妹が62人もいるとか嘘付きやがって…!!!」



それは騙される方が悪い。



と、ツナは思ったが言えなかった。そしてシャマルの心配を理解した。


妹62人の嘘を信じる。そんな彼ならば確かに誰に騙されても不思議ではない。


「そっちに行って…何をするってんだ? またオレに嘘付いて騙して面白がるのか!? 誰が行くか!!」


「ま、待て隼人。落ち着け、話し合おう」


「断る!!」


獄寺がそう断言すると同時、シャマルの顔面にパイが叩き込まれシャマルが崩れ落ちる。それをしたのは獄寺の姉たるビアンキ。


彼女は涙をはらはらと流しながら獄寺に訴えた。


「ああ、隼人…あなたはこんなにもこの変態に悩まされていたのね…!! 気付けなくてごめんなさい!!」



悩まされてたのはシャマルだけじゃないよ。



ツナは内心で突っ込んだ。口に出してシャマルの二の舞にはなりたくなかった。


「でもその変態ももういないわ!! これでいいでしょ隼人!! お願いこっちへ来て!!」



「そもそもオレは姉貴が嫌いなんだよ!!」



「あら反抗期? 隼人も大人になって…」



「ちげーーー!!!」



「でも大丈夫よ隼人。そんな心にもないこと言われても私は気にしない。だって私は、あなたが本当は私のこと大好きだって知ってるから!!



「本当姉貴は昔っから自分の世界に生きてるなあオイ!!」



獄寺くん本当昔から苦労して……!!



ツナは思わず涙した。獄寺が可哀想過ぎて生きるのが辛い。客観的に見て悪いのはこちらである。


「…で、獄寺。お前は一体どういう馴れ初めでヴァリアーに入隊したんだ?」


話の流れをぶった切って問い掛けるのはリボーン。ちなみに彼はカウンターに座って特上寿司をもふもふと頬張っている。


リボーンの急な問い掛けに獄寺は一瞬黙るも…姉と会話をするよりはいいと思ったのだろう。答えようと考え初める。


ツナも獄寺のヴァリアーに入るまでの経緯を知りたいと思っていた。シャマルはああ言っていたが、獄寺を心配し守ろうとしているベルはどうしても悪人に見えない。


獄寺は暫し考え…ベルを見た。


「…ベル。なんでだっけ」


「え? えーと、あれだよ。ボスが拾ってきたんだよ」


拾ってきた。行き倒れていた所をあのザンザスが保護したということだろうか。やはり実はいい人なのだろうか。


「あー…そうだっけ。そういやそうだったな……オレを飼うつもりで拾ったんだっけ?


…ん?


「そうそう。殺すなって命令されてさー。でも実は最初は事故に見せかけて殺す気満々だった。ごめんな」


…ちょっと待て。


「別に構わねえよ。おかげでオレも鍛えられたし、犬らしく尻尾を振る覚悟も出来た



「待て待て待て待てちょっと待って!!」



ツナは流石にストップサインを出した。獄寺が怪訝顔で(ビアンキを視界に入れないように)横目で見てくる。


「なんだよ」


「い、いや…飼うつもりで拾われたとか殺す気で接しられたとか犬らしくする覚悟とか……ど、どういうこと?」


「どういうこともこういうことも、そのままだよ。オレは犬みたいに拾われて、いつ殺されてもおかしくない場所に置かれて、犬になる決意をした。それだけだ」


事も無げに言い放つ獄寺にツナは言葉を失う。あまりにも生きる世界が違いすぎる。


「うう、可哀想に隼人……すっかり洗脳されちまって…!!」


横ではいつの間にか復活したシャマルが涙ぐんでいた。


あとリボーンは、


「店主、まぐろ」


「はいよっ!」


寿司をもふもふと喰っていた。



あいつは寿司を食いに来たのか。



ツナは内心で突っ込んだ。


ともあれシャマルの言う通り、獄寺はヴァリアーのいいように洗脳されてる可能性がある。


ここは彼のために手荒な手段を使ってでも一旦ヴァリアーから引き剥がした方がいいのかもしれない。


「…そうね。隼人…洗脳されちゃって。今お姉ちゃんが助けてあげるから!!


あ、こっちも駄目かも。


ツナは項垂れた。



「…てめえらさっきから聞いてれば好き勝手言いやがって…!!」


怒気を含んだ声に正気に返らされる。見ればベルが怒っていた。


「隼人は言ってたんだぞ! 家族がよくわからないって!! お前らは自分の気持ちを押し付けてばかりで、隼人のことなんて全然考えちゃなかったんだ!! そんな奴らが今更家族面するんじゃねえ!!」


「ベル…」


身を挺し、獄寺を守るベルにツナの心が打たれた。


もう獄寺くんはヴァリアーにいればいいんじゃないかな。とも思った。


「もう行くぞ隼人! こんな状態だし、寿司はまた落ち着いてから食べに行こう!!」


「お、おう…」


獄寺の手を引いて立ち去ろうとするベル。そこに。


「お客さん。お会計」


店主の声がひとつ。


「お、おおそうだった。ほいカード」


「うちは現金のみでさあ」


「何…!? しまったそういやそうだった!!」


ベルは狼狽した。ベルはカードしか持ち歩かない主義なのである。


獄寺が弱々しく懐から財布を取り出す。


「ベル…少ないけど、注文した分ぐらいなら入ってるから……」


「隼人…うっ、兄ちゃんが奢ってやるって言ったのに…!!」


「会計は30万です」


「何!? どういうことだよ! オレらそんなに頼んでねえぞ!?」


「あちらのお客様があなたがたに自分の分も払ってもらうようにと」


言って店主が指さした方角には満腹笑顔のリボーンの姿。



あいつこの場を掻き乱すことしかしてねー! てかあいつ一人でどんだけ食ってんだよ!! とツナは内心で突っ込んだ。



「…悪いベル。流石に30万は入ってねえや……」


弱々しく獄寺が笑う。ベルはどうするか悩む。


すぐ傍では山本が笑いながら色紙を差し出していた。そういえば獄寺のサインで会計チャラだった。


しかし。ベルはその方法を取りたくはない。ボンゴレに借りなど作りたくない。隼人の手を煩わせたくない。だが他にいい方法もない。どうする。どうすれば…


悩むベルの横、獄寺が手を伸ばし、色紙を取る。ベルが驚く。


「お、おい隼人…」


「いいよベル…これしか方法はないみたいだ。オレが犠牲になって、二人が助かるなら……それでいいじゃねえか」


「だけど…っお前嫌だろ!? こんな…こんな自分を切り売りするようなこと、したくないだろ!?」


「んなこと言ってる場合かよ……で、あんた…これにオレの名前を書けばいいのか?」



「ああ! あと山本武くんへって入れてください!!



「お安い御用だ…ついでに握手も、ピアノの弾き語りだって、望めばやってやるぜ」


「マジで!?」


「隼人…!!」


獄寺の自己犠牲っぷりに涙するベル。こんなことさせたくないのに、こうするしか道がないのが悔しくてたまらない。


獄寺がマジックの蓋を取り、色紙に書こうとする。


マジックと色紙の距離があと二ミリ…というところで、



ドーン!!



店の扉が蹴破られた。


辺りの視線がそちらへと向く。開かれた入口からのっそりと現れたのは、我らがボスたるザンザスだった。





辺りを沈黙が包む。誰もが息を呑み、彼が何をするのか。何を言うのか待っている。身構えている。


そんな周りの意思も空気も知らぬように、ザンザスは周りを見渡し…獄寺を見て、言った。


「時間だ。帰るぞ」


時間…?


ツナはなんのことだと思い、ハッとする。まさか、リボーンが言ってたあの門限が本当にあるのか!?


ツナは慌てて時計を見た。3時45分だった。


「…ああよかった。ヴァリアーの門限五時ってのは、流石に嘘か……」


「ああん?」


ツナの思わず漏れた言葉にザンザスが反応する。ツナはびくつく。


「ひぃ!!」


「門限五時…? なんのことだ」


「な、なんでもないよ!! ヴァリアーには門限があるって、何の根も葉もない噂を聞いたことがあるだけで…!!」



「お前オレが仕入れた情報が何の根も葉もない噂だと?」



ツナの後ろでリボーンが静かに切れてた。


嗚呼前門のザンザス、後門のリボーン。逃げ場なし。


そんなツナの事など知らず。ザンザスは宣言する。



「うちの門限は四時だ」





ヴァリアーーーーー!!!





ツナは叫んだ。有らん限りの声で叫んだ。内心ではあったがとにかく叫んだ。


本当に門限あるのかよ! お前一体なんなんだよ!! ふざけてんのか!!


「とにかくもう四時だ。帰るぞ」


「…帰りたいのは山々なんだが、会計で手間取ってて……」


獄寺の言葉を聞いて、ザンザスはふむ。と頷き懐から札束を三つ取り出した。それをレジの前に投げる。


「店主。これで足りるか?」


「へ、へえ…」


寿司代、店の修理費、それまでの維持費纏めて足りそうで、店主は頷いた。


ザンザスは既に店には興味をなくしており、獄寺だけを見ている。


「これでいいだろ。帰るぞ」


「お、おう」


ここまでされてはザンザスの言うことを聞く他ない。獄寺はベルの腕から離れ、ザンザスに向かい歩く。


しかし姉を見てしまった影響はまだ抜けきってないのかその足元は覚束無い。ザンザスの前で倒れそうになる。


ザンザスは獄寺を支え、抱きとめた。


「具合が悪いのか?」


「ああ…少しな」


青褪めた獄寺の顔。震える身体。


それを見て取ったザンザスはすぐに病院を手配した。ザンザスは獄寺を超心配していた。


「すぐに病院に行くぞ。…まったく、慣れぬ気候で身体を壊したか? そんなんじゃヴァリアーでやっていけんぞ」


「わ、悪い…」


「まあいい。今日は休め。今日の分の茶道と華道と書道と香道と料理は来週に回せ



なんか聞いた話より多いし!!!



ツナは今一度驚愕した。


やはりヴァリアーは大和撫子育成コースを作っているに違いないと思った。



「おいベルフェゴール。これを持ってけ」


「ん?」


ザンザスと獄寺に着いていこうとするベルに、リボーンが手にしていたものを投げる。それは土産用に包まれた寿司だった。


「獄寺、寿司を食いたがってたんだろ? 具合が良くなったら食わせてやれ」


「お…おお。まあこれもボスの金だけどな


言って、ヴァリアー面子は立ち去り、危機は去ったのだった。





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おまけ。未来編の一コマ。


『う"お"ぉおおおいお前ら生きてたかぁああああ!!!』

「スクアーロ!! よかった、ヴァリアーも生きてたんだね!!」

『うしし、近々日本まで助っ人に行ってやるよ』

「ありがとう! …そういえば、獄寺くんは?」

『獄寺か。獄寺は…今回の戦いには参加出来んかもしれん』

「ええ!? ま、まさか酷い怪我でも!?」

『いや、日本舞踏の習い事が忙しくてさあ


「相変わらずかお前ら!!」


リクエスト「頑固親父のザンくんお願いします」
リクエストありがとうございました。