リボーンの呪いが解けて、数週間が経った。


リボーンは相変わらず無茶苦茶ばかりして、オレに苦労をかけてばかり。


だけど最近は、前ほどは…あまり嫌と感じてなかったり。


あいつのおかげで…オレは掛け替えのないものを数え切れないほど手に入れることが出来た。


ずっと昔から切望していた友達。守りたいものを守れる力。


口が裂けても言えないけど、オレは…あいつに感謝している。


オレはこの日々が好きで、この日常が好きで。


知り合った人は、会えてよかったと思える人ばかりで。


だから。


守られてばかりだったけど、今度はオレが守ってみせる。


リボーンが、時期ボンゴレ10代目であるオレを狙う暗殺者から陰ながら守ってくれていたことを、オレは知っている。


アルコバレーノの呪いが解け、その力が不安定になっているリボーンを狙う輩だって今後増えてくるだろう。


無論リボーンがそう簡単にやられるわけがないんだけど。


でも、リボーンは最強かもしれないけど完全無敵ってわけじゃないから。例えば、未来に行った時みたいに。


だから、オレが。


頼りないかもしれないけど、オレがリボーンを守る。





「…なんて意気込んでは見たけど、あのリボーンがそうそうピンチになるわけがないよな……」


「よお、ツナ。丁度いい。オレを助けてもいいぞ」


「ああ、おはようリボーン。…助けてもいいって、どうしたのさ」


この際超上から目線なのはスルーする。


「うむ。力が入んねえ」


「ええ!? だ、大丈夫なのかよ!!」


「銃が重くて持てん」


「持たなくていいよ!! 危なっかしいんだから!!」


「馬鹿野郎。オレはヒットマンだぞ? 銃を持ってなくちゃ駄目だろ」


何故か胸を張って自信満々に答えるリボーン。


「…でも今、重くて持てないんだろ?」


「………うむ」


あ。ちょっとシュンとした。


………キュン。


―――は! な、なんだこの胸の高鳴りは!?


「…? どうした? ツナ」


「な、なんでもないよ!?」


「…? そうか」


「そう! そうとも!! って、力が入らないって…やばくない? シャマルに診てもらう?」


「あいつは男は診らんだろ。…うーむ、だいぶ力が落ちてるな。この身体に見合った程度の力か…?」


リボーンが不思議な顔をしながら手を動かす。


…か、可愛い……


は! って、なんでオレはリボーンを可愛いとか思っちゃってんだよ!! 相手はあのリボーンだぞ!!


「………」(チラッ)


「うーん…」(ぐっぱ、ぐっぱ)


くそう、やっぱ可愛い!!


お、落ち着け沢田綱吉……そう、相手はいくら小憎たらしくても赤ん坊。赤ん坊は可愛いもの。だからオレがリボーンを可愛いと思うのは至って普通の事なんだ!! よってセーフ!!


「…ツナ。頭を抱えてどうした」


「なんでもない!!」


「…そ、そうか……」


何故かリボーンは少し引いていた。


「まあいい。おいツナ。オレをリビングまで連れていけ」


「はい!? い、いつもみたいに勝手にオレに飛び乗れよ!!」


「仕方ねーだろ。ジャンプ力も落ちてるんだから」


「そ、それじゃあ…し、しし、仕方ないね」


「ツナ。お前なんで挙動不審なんだ?」


「きき、気のせいだよ気のせい!!」


言いながら、リボーンを量の手で抱きかかえる……ってリボーンちっちゃ!! 軽!! え、赤ん坊ってこんなにか弱い生き物なの!?


「どうした?」


「ど、どうもしないよ!?」


…やっぱりこいつはオレが守ってやらなければ…!!


そう、決意を新たにしオレはリビングに降りた。


そして試練は続いた。


「………ツナ」


「ん?」


「箸が……使えねえ」


見ればリボーンは箸を握れてはいるものの構えきれないでいた。


…そりゃあ、赤ん坊が箸を操る方がシュールだよな……


「まあリボーン! 食べられないの? 大丈夫よ、私が食べさせてあげるから!!」


ビアンキがリボーンを抱きかかえ、朝食を掴む。ああ、テーブルの上が見る間に毒物になっていく………


と、リボーンがオレの方を見た。


その瞳は、どこか潤んで見えた。


きゅん!!


ってきゅんじゃなくて!! ええとそう、いつものリボーンならともかく赤ん坊程度の力しかない今のリボーンが毒物に耐えられるとは思えないし、ここはオレがどうにかしなければならない!!


「ごご、ごめんビアンキ!! 今日は朝からリボーンと修行する約束があるから!!」


「あら、そうなの…? でも朝食はしっかり食べないと身体に悪いわ」


あんたの料理の方がよっぽど身体に悪いわ!!


そう言いたいのを何とか堪え、オレはビアンキからリボーンを強奪し走る。


「…ちょっと。ツナあんた何するのよ。ふざけないでよ殺すわよ」


マジで殺気入ってるー!!


オレは命の危険を感じながら玄関を走り抜けた。





「はー、はー…死ぬかと思った」


「朝からデンジャラスだな」


「誰のせいで……って、」


言いながら振り返り、オレは固まる。


リボーンが、オレがコンビニから買ってきたサンドイッチを両手で掴んでもふもふと食べていた。


か、可愛い…!! リボーンマジ天使…!!


「ん?」


「な、なんでもない!!」


ええいそのクリッとした瞳でオレを見つめるな!!


「学校には行かないのか?」


「そんな状態のお前を放って置ける訳ないだろ」


「んな大袈裟な」


「大袈裟じゃねえよ」


「この過保護め」


「まだ足りないぐらいだよ」


「そう心配すんな。オレは平気だ」


そんな訳ないだろ…!!!


もうお前置いてどっか行ったら10分ぐらいで大惨事になってるよ…!!


「いいか? リボーン」


「ん?」


「今日のお前は力がないし、力が戻るまでは、オレが守ってやるよ」


「はっはっは」


オレとしては恥ずかしいのを我慢して言ったというのに、リボーンには笑われた。


「な…なんだよ」


「だってお前それ…クク、オレが守ってやるとか、プロポーズかよ」


「ぷろ……!!」


「そう言う台詞は好きな奴にこそ言ってやるもんだ。オレに言ってどうする」


「え、いや、その、オレはそんなつもりじゃ……!!」


「分かってる分かってる。そんな必死に否定するな。逆にマジなのかって疑われるぞ」


「まま、マジじゃねーよバカじゃね!?」


「はっはっは」


笑うリボーンに、ツナはそっぽを向いて顔を隠す。


こんな赤い顔、絶対に見せられない。


―――と、背後から鳥の羽ばたく音。


振り返れば、リボーンの姿がなかった。


空を見上げると、カラスに銜えられたリボーンが空を飛んでいた。


「…10分どころか10秒すらも持たなかったか!! ええい待てそこのカラスー!!」


オレはハイパーモードになって空を飛んでリボーン救出に向かった。


リボーンを無事に助け出したあと、オレは一生を懸けてリボーンを守り抜く決意をしたが、翌日には無事リボーンの力は戻っていた。


だが、それでもオレはもうリボーンから目を離すことが出来なくなっていたのだった。


それからのオレの世話焼きっぷりにリボーンが根を上げ、家出するまでそう時間はかからなかった。


あ、ちゃんと泣いて引き止めて連れて帰りました。リボーンは凄い嫌な顔していたけど、仕事だからって諦めました。





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仕事に真面目な赤ん坊…すごいなあ、リボーン流石だなあ。


リクエスト「気が向いたらリボ獄以外も…」
リクエストありがとうございました。