貴方は行ってしまった。遠くまで行ってしまった。


僕の手の届かない所まで……いってしまった。



彼方へ・・・



僕と貴方は敵同士。


……そんなこと、僕が生まれる前から決まってて。


そんな僕が貴方に恋をするなんて、それはどれほど滑稽な話だろうか。


報われない恋だって分かっているのに。それでも貴方を想う僕はどれほど滑稽だろうか。


だって、僕たちは男同士で、歳の差もあって。


―――そして、それ以前に敵同士。


一体何処に、幸せな結末が待っているというのだろうか。


…でも、それでも。僕は貴方に恋焦がれて。


…だから。これはその天罰だと、そう思った。


いつまでも貴方に報われない恋をして。


いつまでも貴方を想い続けて。


―――いつまでも訪れるはずのない"いつか"を夢見た僕に当たった、天罰だと。


……10年前に来る度想う。貴方を攫って行けたらって、そんな馬鹿馬鹿しいことを。


貴方を抱きしめたまま、10年後に連れて行けたらって、そんな馬鹿馬鹿しいことを。


……だって、そうでも思わないとやってられない。


―――貴方のいないこの世界で生きていくなんて耐えられない。


この五分の逢瀬の為に、僕は生き続けてる。


だから僕は、その日が来るまで生き続けるのだろう。


……最後のその日が訪れるまで、生き続けるのだろう。


だから。最後の逢瀬が終わったその時には。


僕はあの日と同じ方法で、自分にけりをつけますから。


……貴方にしたのと同じ方法で、自分にけりをつけますから。


だからどうか、獄寺氏。


それまで僕が、この世をのうのうと生き続けることを、どうか許して下さい。


そしてどうか、獄寺氏。


僕が貴方の所まで逝った暁には、またあの時と同じように僕をいじめて下さい。


………そして、もしも。


生まれ変わりというものがあるのなら。その時は。


今度は同じファミリーで、仲間として。貴方を想わせて下さい。





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それは起こりえない物語かも知れないけれど、それでも夢を見させて下さい。