みなさんこんにちは。三丁目の三浦ハルです。


本日はリボーンちゃんが企画したクリスマスパーティで交換するプレゼントを買いに来たのです…がっ


先ほどとあるカップルを見つけて思わずプロ顔負けの尾行をしてしまっています。


そのカップルというのは…


「なぁ、これなんかどうだ?」


いっつもむっつり顔で、無愛想でランボちゃんに乱暴ばかりする獄寺さんと。


「うーん…こっちも良いと思わない?」


笑顔がとっても可愛らしくて、ハルともかなりの仲良しさんな…京子さん。


―――って、その二人がなんで一緒にいるんですか!!



恋する乙女の奮闘記



あわわわこれは事件です! 大事件です!!


だって、あのお二人がそんな、まるでデデデ、デートみたいに仲良くしてるんですよ!?


あ、獄寺さんが今笑いました! ツナさんがいないのに笑うなんてレアです! 超レアです!!


あああああー、京子さんも笑ってますー! とっても楽しそうですー!!


…お二人はどうやらウィンドウショッピングしているみたいです。窓の外からあれこれ見ては次のお店へ歩いて行きます。


――こうして見るとよく分かるのですが…お二人が並んでいるととても絵になります。


なんと言いますか…お似合いのカップルです。


―――…くやしいです! ハルも京子さん見たくもっとおしとやかで可愛ければ…!


…可愛ければ…なんというのでしょう。


……え、あれ…? 何でハルは悔しいのでしょう?


だって、ハルはツナさんのことが…


―――そう、そうです!


京子さんが獄寺さんに取られたような気がして、それで悔しいんです! そうに決まってます!!


だからこの尾行は…そう、獄寺さんが京子さんに不埒なことをしでかさないように見張ってるんです!!


少しでも獄寺さんが京子さんにおかしな行為をしでかしたらもうハルは飛び出します! 二人の間に割って入ります!!


―――――って、えっ!?


少し見ない間にお二人が腕を組んでますー!?


しかも獄寺さんが照れていて京子さんが笑ってるって事は京子さんから腕を組んできたって事ですかー!?


そんな、そんな…ちょ、ちょっと待って下さいっ!?


え、つまり…どういう事ですか!? お二人はもしかして、少なくとも京子さんは獄寺さんに好意を持ってるって事ですか!?


――む。京子さんが楽しそうです。…獄寺さんも何で迷惑そうな顔をしながらも振り払わなんいですかっ


……何でしょう、このもやもやは…


あー! もー! 自分で自分の気持ちが分かりません!! 何なんですかこの気持ちは!!


―――あ、しまったです! お二人の姿を見失ってしまいました!!


えっと、一体どこに行ってしまったのでしょうか。きょろきょろ辺りを見渡してもお二人の姿が見えません。


…京子さんはまだともかく獄寺さんはすぐに見つけられる自信があるのに、です。


――あ、これは別に深い意味はなくて…えっとそう! 獄寺さんって目立つじゃないですか! あの銀の髪とか綺麗でいつか梳かしたいなぁって思って…って。


だからなんで思考がいつの間にか獄寺さんの事だけになってるんですか!!


……最近、いつもそうなんです…気がつけば獄寺さんの事を考えていて…


最初はツナさんのことなんですけどいつの間にか獄寺さんになっていて…


むー! ハルは一体どうしちゃったんですか!? あのツナさん大好きっ子だったハルはどこに行っちゃったんですか!?


…いえ、それよりも今はまずは獄寺さんと京子さんです! 早くお二人を探さないと!!


と、意を決した時です。


「―――わ!!」


「ひゃわー!?」


は、背後からいきなり大きな声を出さましたよー!?


この、聞き覚えのある声は…


「な、な、な、一体何するんですか! 京子さん!!」


「あはははは! ごめんねハルちゃん!」


「ぼけっとしてるお前が悪いんだろうが、ハル」


あ…


獄寺さん…


「…ん? 何見てんだ? オレの顔に何か付いてるか?」


「いいいいいいえ! 何でもありません!!」


「あはは。ハルちゃん顔真っ赤ー」


っ!? そ、そんなに真っ赤なのですか!?


「あ…そうか? 言うほど赤いか?」


「うーん、やっぱりそうでもないかな?」


ごめんね、と謝る京子さん。…え、もしかしてハル…からかわれました?


「―――京子さん!」


「ごめんねハルちゃん。でも、怒るって事は何か赤くなるような出来事があったのかな?」


―――!!


そ、そうですよ? おかしいですよ?


何でハルは怒ったんですか? 何か苛立つような事ってありましたっけ?


………。ない…はずですよ? 京子さんが少しふざけただけで、何も…


でも、じゃあ…なんでハルは怒ったのでしょう。


分かりません…解りません。


「…ハル? さっきからお前、おかしいぞ」


おかしい…なんだか獄寺さんのその物言いに、少しカチンときました。


「――そうです! ハルはおかしいんです!」


気がついたら、口から言葉が飛び出ていました。


「…ハル?」


「ハルちゃん?」


お二人が怪訝な顔をします。けれどハルの口は止まりません。


「さっきからそう…街中で、仲の良さそうなお二人を見つけて」


とても楽しそうに、歩いていて。


「追っていたら、いきなり腕を組んでいて」


それを見たら、なんだか胸の中がもやもやして。


「お二人を見失って…京子さんに驚かされただけなのに。何故だか凄い怒ってしまって…」


もう、何がなにやら……


―――と。


ぐいっと、腕を引っ張られました…京子さんに。


「笹川?」


「ごめん獄寺くん! ちょっとそこで待ってて!!」


京子さんに連れられて、ハルは少し離れた路地にやってきました。


「…ごめんね、ハルちゃん。ちょっと、ふざけすぎちゃったね」


京子さんが謝りながらハンカチでハルの顔を拭いていきます。


………ハルは、いつの間にか泣いてました。


―――むー…うー。これはかなり格好悪いですー!


「京子さんー…ハルは、一体どうしちゃったんでしょうか…」


「うーん…えっとね、ハルちゃん…」


京子さんは、こそっと。ハルに耳打ちしました。


「実はね…私、獄寺くんのことが好きなの」


………って、え?


「え、え? それって、どういう意味…」


「うん、だからね?」


京子さんはいつものあの。可愛らしい笑顔で。



「―――獄寺くんは、渡さないってこと」



そんなことを、言い出しました。


「は、はえー!?」


わ、渡さないって、獄寺さんは物ですかっ!?


心なしか京子さんが子悪魔さんに見えますー!!


「……それだけだから、じゃ、獄寺くんのところに戻ろうか!」


京子さんはまたハルの手を引っ張って、獄寺さんのところに戻りました…が。


「ごめんね獄寺くん、お待たせー!」


「ん…いや、構わねぇけど」


京子さんは、ハルを獄寺さんの方に押し付けると。


「突然で悪いんだけど、私急用が出来ちゃったから! 代わりにハルちゃんと一緒に選んでて?」


「え、え? 何をですか?」


「ツナくんのうちでやるクリスマスパーティのプレゼント。…ハルちゃんも買いに来たんじゃない?」


え…じゃあお二人が見てたのって、クリスマスプレゼント…


「…じゃあ、何で腕なんか組んだんですか?」


「笹川がお前を驚かそうって、いきなり組んできたんだよ」


ごめんね? と謝る京子さん。


……ばれてたですか。


「そ、そういうことでしたら仕方ありません。獄寺さんと選ぶ事にします」


「何でそこまで言われないといけないんだ…」


「まぁまぁ。それじゃよろしくね。何を買ったかあとで教えてね、ハルちゃん」


―――と、京子さんはいきなりハルに近付いて。こっそりと。


「…今日一日獄寺くんといて、気持ちに気付かなかったら…本当に獄寺くん貰っちゃうから」


「―――っ!? き、京子さんっ!?」


「あはははは! じゃあね二人とも!!」


京子さんは笑いながら行ってしまいました。


「………何言われたんだ?」


「獄寺さんにだけは言えないことです」


獄寺さんはなんだそりゃ、って言って。けどそれ以上は追求してきませんでした。


―――横風が吹いて。獄寺さんの髪を撫でます。


遠くを見つめる眼がとても綺麗で。見てると切なくなって…


…ハルは、獄寺さんの事を―――どう思ってるのでしょうか。


最初はなんとも思ってなかったはずです。だっていきなり現れては爆弾を投げられたんですよ?


むしろ第一印象は最悪じゃないですか!


でも。綺麗だと…思いました。


うー、でも、でもでもー…!


「…しっかし――笹川も良い奴だよな」


―――え…


ずきっと、胸が痛みました。


獄寺さんが京子さんの事を言っただけなのに、です。


え、ちょ、なんですかこの気持ちは…


「よく分からんがお前の相談に乗ってくれて気まで遣ってくれたんだろ?」


そ、そうですけど、そうですけどーっ


確かに京子さんはお綺麗で可愛くてでも気も利いてけどぽわっとしていて護ってあげたいタイプなまさに理想? な方ですけど!!


―――って、あれ? 自分で言っておいてあれですけどもしかして京子さんって完璧超人じゃないですかっ!?


っあー! もぅ勝ち目ないじゃないですか! って、勝つって一体何の話ですかー!!


思わず頭を抱えてしまうハルにも気付かないのか、獄寺さんは未だ京子さんの走って行った方向を向いていました。


…む。ここにいるハルはアウトオブガンチューって奴ですか? そんなに京子さんが気になりますか? その微妙に微笑んでいる顔も京子さんのものなんですかー!?


とか思っていたら。


「10代目が惚れるのも、分かる気がするな」


―――何て言ってきて…って、へ?


ツナさん……が?


…………。


ツナさんが京子さんを好きな限り、獄寺さんが京子さんになびくなんて事は有り得ませんね…


…なんか、安心してきましたよ?


―――むぅ。


…分かりました。解りましたです。観念します、諦めます、認めます!


ハルはリボーンちゃんもツナさんも好きです、大好きです!!


………けど。


――獄寺さんの方が、もっと好きみたいです…


…京子さん。


ハルの気持ちに気付かせて下さったこと、感謝いたします…

でも。


この勝負、勝つのはハルです。


ツナさんの純なお気持ち、そのツナさんを大切に思う獄寺さんのお気持ち、その他もろもろ利用させて頂きます。


チャイルドデビル・ハルの誕生です!!


ぐっと握り拳をして夕日に誓うハルをいつの間にか獄寺さんが見つめていて…そして言いました。


「お前も。頑張って10代目が振り向くような良い女になれよな」


………。


―――はぅっ


そうでした、そうでしたよっ!? 獄寺さんの中ではハルはツナさんが好きな女の子な認識なはずですよっ!?


じゃあ買い物の続きでもしに行くかなんて言う獄寺さんの後ろで、まずはこの獄寺さんの認識を正しく修正するのがハルの任務だと。


そう思ったクリスマス数日前の出来事でした。





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目標! 来年までに獄寺さんに告る!!