某月某日。
ヴァリアーファミリー一行は祭へと訪れていた。
祭りがあると聞きつけたベルが獄寺を誘ったのだ。
ベルは獄寺と二人で行きたかったのが残念ながら(獄寺の)門限は午後4時。
出歩くにはザンザスの許可が必要だった。
そして始まった会議の結果、ヴァリアー全員で祭りに行くことで落ち着いた。
その事に不満を顕にするベルだったが、獄寺が自分の贈ったアクセサリー(髪飾り)を付けたことで上機嫌になった。
なお浴衣はマーモンから贈られたものを着た。何故か女物だが誰も気にしない。
とりあえずレヴィカメラマンの元全員とのツーショットを撮り、ヴァリアー一行は祭りへと出掛けるのだった。
そして今に至る。
初めて見る屋台に出店に胸を踊らせる獄寺。
その姿にはヴァリアーだけでなく周りの人々すら魅了させる。
ヴァリアーがいなければナンパの嵐で獄寺は祭りどころではなかっただろう。
そういう意味ではザンザスの決めた全員で行くというのはあながち間違いでもなかったかも知れない。
獄寺は早速たこ焼きイカ焼きと祭りの雰囲気を味わっていた。
「おい隼人! 射的あるぞ!! やってみろよ!!」
「オレは銃は使わない主義だが…いいだろう」
獄寺は見事大当たりのぬいぐるみをゲットした。
「あら、獄ちゃんおめでとう!! ほら、お祝いのりんご飴よ!!」
「んまいなこれ」
りんご飴を食べるだけで絵になる獄寺。
カメラマンレヴィがパシャパシャ撮っていた。
それからも獄寺は祭りを楽しんだ。
楽しさの余りに笑顔を振り撒き周りの通行人に写メを撮られそうになってはザンザスが睨む。
そうこうしていたら神社の境内まで来てしまっていた。
神社ときたらお参りにおみくじである。
「見ろよボス! 大吉だぜ!!」
「良かったな」
そう言うザンザスは凶を引いていた。ザンザスはおみくじを握り潰した。
そして鳴り響く音。一瞬だけ明るくなる空。
花火が始まった。
ヴァリアーも、周りの人々も釣られて空を見る。
色とりどりの火薬の花が咲き乱れている。
「…綺麗だな」
呟く獄寺に、お前の方が綺麗だ、と誰もが呟いた。
「…こんなこともあったよな」
と、獄寺が囁きながら見ているのはアルバムだ。
懐かしい。まだ若い頃。自分がヴァリアーに入ったばかりの頃の写真だ。
こうして見ると遊んでばかりいたような気もする。訓練もしていたはずなのだが。
レヴィカメラマンならザンザスの写真が多そうだが獄寺の写真も中々多い。気を遣われていたのだろうか。
みんなとの集合写真。誰かとのツーショット。何気ないスナップ写真。
自分は笑ってばかりいる。周りも。誰もが。
ヴァリアーに入る前、自分は笑っていただろうか。毎日を楽しんでいただろうか。
…そんなことはなかった。少なくとも、ヴァリアーに入ってからの方が笑っていた。
ページを捲る。ボンゴレとの写真も出てきた。ボスも写っている。不機嫌で、ぶっきらぼうな顔。
ボスはボンゴレと関わるとあまりいい顔をしない。でも自分がボンゴレと交流することに反対もしなかった。同世代の彼らと遊ぶこともまた、楽しかった。
ルッスとの写真が出てきた。一緒に料理をしている写真だ。
ベルとの写真。ベルが自分に肩を組んできている。
スクとの写真。いつの間に撮られたのか、訓練中の写真だ。スクには未だ身長も、剣の腕も勝てたことはない。
マーモンは大体の写真に居た。獄寺の胸元に抱きしめられて。
誰が撮ったのかレヴィとの写真もあった。何かを話している写真だ。
こうして見るとよく分かる。自分がどれだけ大事にされているのか。
全く、暗殺部隊だというのにどうしてこんなに暖かいのか。身内になると甘くなるのだろうか?
笑みを浮かべながら獄寺はアルバムを閉じ、仕舞う。
そして思った。今日はカメラを買ってこよう。
そして今日は、今度は自分が、みんなを撮るのだ。
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そしてそれもまた、アルバムの新たな一ページに。