ずっとずっと眠ってた想いが、目覚めと同時に、一緒に起きてしまった。
それはきっと、いつ爆発してもおかしくないほど大きな、けれど近過ぎて分からなかった、そんな想い。
目覚めた想い
オレの近くにはいつもキミがいて。
いつからか、それが当たり前になっていて。
オレはキミの事をあれほど怖がっていたというのに。なのに勉強のときだけキミを頼っていたり、結構酷い事もしていたのに。
なのにキミは。それでもいつも、オレに笑い掛けてきてくれて。
―――この気持ちを。一体何と呼ぼう。 (―――たとえば、それは恋情)
キミはオレの他の奴には、敵意剥き出しで。オレがいないときは、まさに一匹狼って単語が似合って。
…そんなキミが山本に初めて笑いかけたのを見たとき、感じた違和感。
やがて。それが。痛みを発するようになってきて。
やがて。それが。キミが他の男といるだけで感じるようになってきて。
―――この気持ちに、一体どんな名前をつけようか。 (――たとえば、それは嫉妬)
どんどんどんどん湧き上がる、溢れ出す。止まらない――気持ち。
気が付くと、目の前には獄寺くんが。いつものあの笑顔の獄寺くんが、立っていて。
オレは思わず獄寺くんに話し掛けた。
…ねぇ、獄寺くん。
今更、なのかも知れないけど。
オレのこと、嫌いにならないで下さい。
今まで散々怖がっておいて。
今まで散々オレのいいように利用しておいて。
こんなことを言うのは勝手なのかも知れないけれど。
でも。
オレのこと、嫌いにならないで下さい。
オレがそう言い終わると、獄寺くんは笑いながら。
何言ってるんですか10代目。
オレが、10代目を嫌うはずないじゃないですか。
なんて言ってきて。
ああ、駄目だ、違うんだよ獄寺くん。
違うんだ。オレが言ってるのは10代目を嫌わないでじゃなくて。
オレを、沢田綱吉を嫌いにならないでって。事で。
オレがそう言っても、獄寺くんは不思議そうな顔をするばかりで。
どうしたんですか? いきなり。
10代目と沢田さんは、どう違うんですか?
オレと10代目は全然違うよ獄寺くん。
キミにとっては、同じものなのかもしれないけど。
オレにとっては、全然違うもの。似て非なるもの。
――だって。10代目はキミを部下としてしか見ることが出来ない。
けれど、オレは―――
「―――10代目。起きて下さい」
「………ごくでらくん?」
目の前に。獄寺くんがいた。さっきのまま、オレに微笑みながら。
「10代目、おはようございます。そろそろ帰らないと、お母様が心配なされますよ」
状況を少しずつ判断する。ここは学校。時は夕暮れ。目の前には獄寺くん。
…そっか。オレ、寝てたんだ。
さっきまでのは、全部夢。
全部、夢だったけど……
でも、どうやら夢だけに終わらない気持ちまでもが起きてしまったみたいで。
ずっとずっと眠ってた想いが、目覚めと同時に、一緒に起きてしまった。
それはきっと、いつ爆発してもおかしくないほど大きな、けれど近過ぎて分からなかった、そんな想い。
けれど。もう気付いたから。
「獄寺くん」
「はい?」
気付いたら。もう迷うことはなく。
「…一緒に、帰ろうか」
「あ、はい」
夕暮れの帰り道を、彼と一緒に歩いて。自分の想いを再確認する。
それは何で今まで気付かなかったんだと言えるような。そんな単純なもの。
「ねぇ獄寺くん?」
理解する。これは一時の気の迷いなんかじゃなく。ある意味、救えないほど―――本気な想い。
「はい?」
オレは無防備な彼に。愛おしい彼に。
「好き」
今の自分の、正直な想いを。告げた―――
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顔が赤いのは、夕焼けのせいなんだから。