…ね。オレに時間を頂戴? 一日…いや、半日でいいから。


これが最初で最後だから―――オレに狂う時間を頂戴?



もっと・・・



―――パァンッ


銃声が鳴り響き、辺りは沈黙。


…一瞬だけ。


すぐにまた、ざわめきが1.5倍増しぐらいで戻ってきた。


「な、てめ―――」


パンッ


またも五月蠅くなりそうだから、一番最初に口を開いた奴を撃つ。


今度は奴らも唖然とはせず、戦闘体勢に入った。


―――けれど。オレの準備はもう終わってるから。


彼が得意だったダイナマイトを投げる。


元から導火線の短いそれは。奴らに届く前に自身を爆発させた。


破片がオレにも跳んでくる。それは頬に掠り、けれど気にせず素早く避けた奴を撃つ。


パンッ パンッ


鳴り響く銃声。反動で上がる腕。漂う硝煙。全てが規則的で、まるで遠い夢の中―――


微かに動く影。そいつは既に致命傷を負っていたけど――オレはそいつに向かって歩いて行く。


血を多量に流しながら。そいつは近付くオレに敵意の視線を向ける。


「…何故、こんな、馬鹿な事を―――」


「お前たちがもっと馬鹿な事をしたからさ」


そう言ったオレの顔は、一体どんな顔をしていたのか。


奴の顔が、恐らく幾つもの修羅場を抜けて来たであろう彼の顔が、恐怖に歪んだ。


「狂ってやがるっ」


「悪いか?」


―――パンッ


けたけたと笑いながら撃って。ばたばたとやって来る奴等を出迎える。


なんてったって時間がない。オレが此処にいれる時間は、こうしてる間にも消えて行く。


―――オレが狂える時間は。こうしてる間にも。


オレの可愛くて。愛おしくて。とてもとても大切な彼を。


…オレの右腕を、引き離したこいつ等を殺せる時間は。



…ボンゴレ10代目なんてしていると、余計な敵も増えて。


彼はオレを街中から放たれた銃弾から庇って。


とてもとても小さな鉄の塊が、オレから彼を奪ってしまった。


そんな事をした奴等を許せる? ―――――許せないね。


けれど、やっぱりオレはボンゴレ10代目だから。たった一人の部下の為に時間を裂くなんて出来なくて。


…だから。オレは時間を貰った。


今のボンゴレ10代目はリボーン。


今のオレはただの―――何の肩書きもない、一人の狂ったマフィア。


ただし半日だけ。しかも条件付き。


けれど。それだけで十分。


オレは奴等を調べ上げて。つきとめて。そのままアジトへと乗り込んだ。


武器を用意する時間なんてなかったから、奴らのアジトから拝借。


数が多いから彼が愛用していたダイナマイトを使いまくった。


使ってみて分かる。なるほど、確かに大勢の人間相手にはもってこいだ。


ただこれは自身にも被害が出る。さっきから破片がオレにも跳びまくり。


そういえば、いつだったか見た彼の肌は傷だらけだったのを思い出す。なるほど、これだったのか。


―――さぁ、息吐く暇はないぞオレ。


オレの、最初で最後の、たった一回きりの我侭。


このアジトにいる全ての人間の命を彼に捧げよう。


最後はこのアジトを炎上させて、彼の墓標にしよう。


今だけは、ただの一人の狂人として。愚かな狂人として此処に有ろう。


…それが終わったら。オレはボンゴレ10代目に戻るから。


キミが命を懸けて護った、ボンゴレ10代目に戻るから。


狂人の殺戮ショーは、まだ終わらない。





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リボーンがオレに出した条件は "生きて。帰って。来ること。"