ふと窓の外を見ると、そこには快晴が広がっていて。


その天気は、あの人を思い出すから。好き。





- 遠い空の向こう側 -





と、オレのすぐ目の前を電灯が落ちた。


ガシャン、なんて音がして辺りを硝子が飛び散る。



僕のこと忘れないでよ。



そんな声が、聞こえた気がした。


…忘れてねーって…


オレはそう思いながら移動を開始する。さっきの音を聞きつけた人間が直ぐにやってくるだろう。





―――ここはイタリア。現在オレは、ある任務の為にボンゴレへと帰還していた。





イタリアへと戻ることになるのは幾度とあれど。今回のは少しばかり長期だった。


もう何週間日本の土を踏んでないのだろう。こちらは次いで次いでの任務で忙しいので寂しさを思う気持ちはないけれど。


ああ、けれど。…ふと出来た時間にそういえばあいつの声、聞いてないなと思い出して。そうすると…あいつのあの理不尽な言い分とかが少し。恋しくは…なる。





けれどこっちから電話やメールなんて出来ないし。(番号やアドレス知ってるけど)




する時間もないし。(作れば出来るけど)




あいつがオレの連絡に答えるとも思えないし。(期待してないけど)




何よりオレの柄じゃない。(恥ずかしくって出来るか!)





だからオレからは出来ないけど、あいつからオレに…ってのはオレがあいつに連絡すること以上に有り得ないから、つまりオレがさっさと仕事を終わらせて日本に帰る以外はあいつの声を聞けないわけだ。


やれやれと溜め息を付きながら手の中の銃の弾を入れ替えていく。


とりあえず今目の前の仕事を終わらせよう。全てはそれからだ。


こちらに気付いていない獲物に標準を合わせて引鉄を引くと、熟れたトマトのように赤いモノが弾け飛んだ。


―――もう暫くすれば、オレも帰れるだろう。


そしたら、まぁ、オレの方からあいつに会いに行ってやることもやぶさかではない。





ふと窓の外を見てみると、快晴は息を潜め代わりに雲が辺りを覆っていた。


その天気は、あいつを思い出すから嫌いではない。





…と、オレのすぐ目の前を今度は植木鉢が落ちた。


ガシャン、なんて音がして辺りを破片が飛び散って。



オレのこと忘れないでよ。



そんな声が、聞こえた気がした。


…忘れてない。忘れてないですよ10代目。





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オレはちゃんとふたりのことを考えてますから。