10日振り



ある日の夜。


綱吉が山積みされてる大量の書類を片つけていると、こんこんと軽いノック音がして。一呼吸後にガチャっとドアが開かれて。


「失礼致します」


「ああ、お帰り」


そうして現れた己の右腕に、綱吉は素っ気無い対応を取る。けれど獄寺は特に気にした様子もなく、事務的に任務の報告を返してきた。


同盟マフィアの様子、敵対ファミリーへの対応、獄寺に与えられている任務は重いもののはずなのに。獄寺は失敗などしたことはない。故に報告内容も完璧なものであった。


綱吉はそれを黙って聞いている。手は、目は。忙しなく書類の対応に追われているのだけれど。


「―――以上で報告は終わりです」


「うん。ありがと」


短く、分かりやすくと略された獄寺の報告はあっという間に終わって。獄寺がここにいる理由はなくなる。


「これが今回の報告書です。…では、失礼致します」


資料を机の上に置いて。離れていこうとする獄寺は、けれどその足を止める。


…綱吉に、その黒のネクタイを掴まれたから。


不思議そうに綱吉を見つめてくる獄寺。綱吉は獄寺をぼんやりと見ながら、まるで独り言のように呟いた。


「何日振りだっけ?」


それをお互いに逢えなかった日々の事だと直ぐに察し付いた獄寺は、瞬時に計算して。


「丁度10日ですね」


とおか。綱吉は声に出さずに唇を動かして。


ぐいっと。タイを引っ張った。


「ん…!?」


突然のことに獄寺はろくに逆らうことも出来ず。綱吉に口付けされる。


驚く獄寺のことなんて気にも留めず。綱吉は更に獄寺の唇を貪った。


「ん…ん


どれほど、そうしていたのだろうか。


綱吉は飽きたのか、いきなり獄寺を解放する。酸素が急激に入ってきて。獄寺は咽てしまった。


「ん――…けほっ…いきなりは…驚きます」


少しだけ非難の入った口調で言う獄寺。しかし綱吉は全く気にした様子もなく。「うん」とこれまた素っ気無く返すのみだった。


綱吉はいつの間に片付けたのか、書類の束をとんとんと正して。机の上に綺麗に置いて。


「明日は休みだったよね」


獄寺は自分のスケジュールを少し混乱している脳内で思い出そうとして。けれど綱吉にとってはそれはあまり関係ないみたいで。


「オレも久々のオフだから。今日は一緒に寝ようか」


寝ようか、なんて。意見を聞いているようで、実は全く聞いていない (聞くつもりもない) 綱吉はさっさとドアの近くまで歩いていってしまう。


「じゃあ隼人。オレ待ってるから」


パタンと軽く扉を閉じて行ってしまった綱吉を獄寺は目で追って。


「…仰せのままに。―――綱吉さん」


そう呟いて。綱吉のせいで皺になってしまったタイを解き放って。


大切で愛しい彼の後を、緩やかに追いかけた。





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せいぜい甘えさせてもらいましょう。


リクエスト「大人付き合いなツナ獄」
こもたけ。様へ捧げさせて頂きます。
リクエストありがとうございました。