どこにいるの? いつもオレの傍にいてくれたあなた。


いじわるしないで出てきてよ。お願いだから。



嘘だと言って



また意地悪された。ゴクデラに。…まぁ、オレが先に手を出したんだけど。


ここのゴクデラは、嫌い。いっつも怒ってて。オレを蹴るから。


…でも。あっちのゴクデラは、好き。


オレが10年バズーカ使うと、いつもすぐ傍にいてくれて。


オレが泣き止むと頭を撫でてくれて。


いつもふんわりと笑っているから。だから大好き。


だから。きっと。オレが10年バズーカを使うのは、痛い目に遭って泣くからじゃなくて。



「…また来たのか? ランボ」



呆れ顔をしながらも、いつもオレに構ってくれる、大好きなこの人に逢うため。


今日もまた、ゴクデラに泣かされた。だから。オレは10年バズーカを使う。大好きなあの人に逢うために。


もくもくと煙が漂って。でもそこはいつもと違って暗い部屋で。


……あの人が。いなくて。


探しても。探しても。いない。どこにも。


五分なんてあっという間に来て。オレは泣いたまま10年前に戻ってくる。


…ゴクデラが、怪訝そうな顔をした。いつも泣き止んで戻ってくるオレが、泣いて戻ってきたから。


「…? どうしたんだよ」


こんな時に限って、ゴクデラは優しい。


ゴクデラはオレが泣き止むまで、オレの頭をずっと撫でてくれてた。


次の日も。オレは10年バズーカを撃つ。あの人に逢うために。


……でも。いない。どこにも。何回やっても。いない。


あの人に逢えなくて。それが悲しくて。オレはまた泣く。


するとゴクデラが慰めてくれる。ここが10年後なんじゃないかと思わせるぐらい。優しく。


「…そんで。なんで泣いてるんだ? ランボ」


「……10年後に行ったら、いつもいてくれた人が。いないの」


ある日。ゴクデラにそう聞かれて。オレはついに答えてしまった。


ゴクデラは一瞬止まって。でもまたすぐにオレの頭を撫でてくれて。


「そっか」


「ね。なんで? なんであの人はいないの?」


ゴクデラは困ったように頭を掻いて。唸って。


「…お前もマフィアやってんなら、分かるだろ?」


……それは。分かりたくもない、可能性。


「…だから、その……そいつは―――」


「―――いやだ!!」


大きな声で、力いっぱい叫ぶ。認めない。認めたくない。


「そんなの嘘! やだ! やだやだ!! あの人が死んだなんて、絶対いやだ!!」


また泣く。涙がこぼれる。ノドが潰れるほど、大声で泣く。全てを否定するように。


むぎゅっと、ゴクデラに抱きつく。その間にも、オレはわんわんと泣く。


「死なせない! 殺させない! 絶対、絶対オレが守る!!」


「あーあー。そうだな。守ってやれ。そいつを。10年もありゃあ、お前も強くなれるだろ?」


「なる! 強くなる! 強くなって、オレは、絶対に………」


ぽろぽろと、オレは未だに涙を流しながら。誰にも聞こえないような小さな声で。


貴方を。絶対守って見せるから―――と。密かに。誓った。





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誓いが守れたかどうかが分かるのは、10年後。