事実知らず
大好きだよ獄寺くん。
好きなんだ。キミが、キミだけが。
ずっと傍にいてほしい。もう離れないでほしい。
…それは駄目です10代目。
オレなんかにそんな想いを抱いてはいけません。
一時の遊びとしてなら、恋人として振舞うことも出来るのですけど…
獄寺くん。どうしてそんな悲しいことを言うの?
オレはキミをそんな風に、仮初の恋人のように見れないよ。
オレはキミの傍にいたいが為に10代目になる決意をしたのに。
どうしてそんな悲しいことを言うのさ。
―――分かって下さい。
オレは、使い捨ての駒なんです。
そんなものに愛着を抱いてはいけません。
…分かって、下さい。
分からない、オレには分からないよ獄寺くん。
愛しいキミをどうしてそんな、物扱い出来るっていうの?
出来るわけないじゃないか!!
…10代目。
獄寺くんは…
はい?
獄寺くんは…獄寺くんの気持ちは、どうなのさ。
オレの…ですか?
そうだよ! 獄寺くんの、獄寺くん自身の気持ち!
ボンゴレもマフィアもファミリーもボスも部下も関係ない、獄寺くん個人の気持ちはどうなのさ!
………。
…お慕い、申してますよ。
―――え?
好きです、と言いました。
大好きです。10代目。
愛してます。
ずっとお傍にいたいです。離れたくないです。
いつまでもあなたの隣にいたいです。
獄寺くん…
これがオレの想いです。
…でも。
ここはマフィアの世界ですから。オレの気持ちなんてものは紙くずよりも軽い。
だから、オレにそんな純粋な想いなんて抱かないで下さい。
今の話も…忘れて下さい。
―――いやだよ。
せっかく獄寺くんの、本当の気持ちを聞けたのに。
どうしてそれを忘れないといけないのさ。
………10代目。
こんなに近くにいるのに。
――――10代目。
触れることも出来るのに。
……。10代目。
互いに想い合っていることも分かったのに。
―――10代目。
オレたちは愛し合っているのに!!
10代目!
なのにどうして!!
「10代目!!」
「……え? あ? 獄寺くん…?」
「どうしたんですか…? うなされてましたよ…?」
「え? えっと、えっとね…」
「…怖い夢でも、見ましたか?」
「夢―――ん…そうだね。夢、見てた」
「―――…10代目」
「ん?」
「大丈夫ですよ、10代目」
「え?」
「怖いものなんて何にもないです。平気です」
「オレが10代目を、悲しい想いになんてさせませんから」
「………獄寺くん」
「えへへ…」
ぺしっ
「あいた!?」
ぺしぺし!
「じ、10代目! 痛いです痛い! いきなり何するんですか!?」
「いいから暫くこのままにされる!」
「へ? は? は、はい。分かりました…え? なんで10代目泣いてるんですか!?」
「むーっうるさいうるさいうるさいー! 獄寺くんのばかー!」
「え、え、えー!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ばーかばーか! 獄寺くんのバカー!!