□家庭教師−その実、真綿エンドレス−
夕方、俺は部屋の中でゴロンとベッドに転がっていた。
いつもの俺だったら明日のリボーンさんとのデートに浮かれて服を選んだり、何処に行きたいか考えたりしていただろうと思う。枕を抱きしめて、天井を見て、溜息を吐くのはいつもの俺じゃない。 ショックだったと言えばショックだ。リボーンさんに言うべきか、言わざるべきか。 リボーンさんの言葉通り、明日は休校になったから明日はリボーンさんとのデート。嬉しくて踊りだしそうなくらいだ、と思うのに。昼間の事がー…
昼間、あの後ー…リボーンさんとの電話が終わって、汚した手や地面をきれいにして教室に戻ろうとした。
手を拭いて、精液で汚れた性器を拭いてズボンをあげようとしたとき、辺りが暗くなった。
影。後ろに誰か立っている。
「なぁ、獄寺−…『リボーン』って、誰?」
「やっ・・・やまもと・・・いつ・・・いつから・・・」
「ん?最初から。」
振り向いたら山本が、いつものような愛想の良い笑顔を浮かべて俺の後ろに立っていた。
教科書で肩をトントンと叩きながら、俺を見下ろしている。
最初から全部見られていた。同性とは言え、自慰行為を見られるのは恥ずかしい。死にそうなくらいに。
「っ・・・」
何も言えなくて、ズボンを上げる事もできなくて、俺は制服のカッターシャツをひっぱって性器を隠す。
泣きそうだった。涙腺が緩んできて、目の前がぼやける。
山本がしゃがんで、目線を俺に合わせる。
俺は山本の顔が見れなくて目を逸らした。
俯いていたから、山本の表情が・・・笑顔だった事には気がつかなかった。
ピッと音がして、ノイズが混じった音。不鮮明な音ではある。
しかし、流れてきたのはーー…
「あっ・・・あ・・・それ・・・」
「ん?」
山本は携帯の画面を俺に見せ、ぷらぷらと携帯を揺らす。
俺はそれを奪おうとしたが、山本はひょいと携帯を持った手を上に上げ、携帯を俺から遠ざける。
聞こえてくるのは俺の喘ぎ声。流れる画像は俺の自慰。
「なっ・・・なんで・・・どうして・・・」
「さぁ?」
山本は俺の肩を掴み、俺を屋上の柵に押し付けた。
俺は柵に掴まり顔をぶつけない様にした。そうしたら、山本に尻を突き出すような格好になった。
恥ずかしい・・・少し大きめのカッターシャツのおかげで尻は隠れていたが、かなりキワドイところまで見えている。
「やっ・・・山本・・・」
「なぁ、お前さ。その『リボーン』ってやつと、SEXしたんだろ?」
直接的な言葉に、俺の頬は一気に真っ赤になった。俺は何も言えず、ただ俯いて柵を握り締めて震えていた。
「獄寺のココに、その『リボーン』ってやつのチン●入れてんだろ?」
「ひっ!」
山本が尻を隠していたカッターシャツを捲り上げ、自慰で物欲しげにヒクヒクとしていた場所へとふれる。
「すっげーのな。獄寺の尻の穴。俺の指入りそう。」
「やっ!やだっ・・!んっぅ!」
リボーンさんに慣らされた体は山本の指ですら貪欲に飲み込もうとする。嫌だと言いながら首を振って拒否しても、下半身はちっとも言う事を聞いてくれない。
「うっわ。すっげーずぷずぷ奥まで入ってく。」
「ひっんんっ・・・やだ・・・やめっ・・・お願い・・・」
山本は俺の制止などお構い無しに俺の尻の穴の奥まで指を入れた。
リボーンさん以外の人間の指が俺の尻の穴をかきまわしている。
「そんな事言って本当はキモチイイんじゃねぇの?」
「ちがう・・・本当に嫌・・・ああっ!」
山本の指が俺の中をグチュグチュとかきまわす。その動きは荒く、優しさの欠片も無く。ただ、俺の中を遠慮なく暴く。
「嫌だとか言いながらアンアン喘いで腰動いてるじゃねぇか。」
「あああぁ・・・言わないで・・・言わないでえぇ・・・」
山本の言うとおり、俺の腰は揺れていた。こんな事をされて、リボーンさんじゃないのに。体は快楽を覚えていて、それを与えてくれる相手が誰だろうとお構い無しだ。俺の中はぎゅううっと山本の指を締め付けてしまう。
「ほら、俺の指を締め付けて離さないぜ?」
「ひっ・・・ひっ・・・いや・・・本当に嫌ぁ・・・いや・・・いやだ・・・助けてっ!・・・リボーンさん・・・リボーンさんっ!」
無意識のウチにリボーンさんに助けを求めてしまう。俺のその言葉に気を悪くしたのか、山本が俺の尻をグイッっと強く掴む。
「ひっうぅんっ!」
「おとなしく犯らせろよ。」
「え?」
俺は目を丸くしていたのではないかと思う。山本は同級生で、話しやすくて良い友人だと思っていたのに。まさか、そんな事を言われると思ってなかった。
「だっ・・・だめ・・・やだ・・・!っだって俺・・・っ!ふあぁあ!んっ、あぁっ!やっ、やぁ・・・指がひぅっあああ!」
「男同士だからって俺には関係ないぜ。」
「ひんっ!やっ、やめって!いやっ!」
「俺、お前のケツに俺のチン●いれてーんだ。」
「やだっ!それだけは・・・いやっ・・・」
俺の必死の哀願は、山本の機嫌を損ねてしまったようだった。
「っるせぇなぁ!お前はおとなしく俺に犯されればいいんだよ!」
「ひっぅ!」
山本が俺の頭をフェンスに押し付け、足で俺の閉じた脚をこじ開ける。
こんな明るい太陽の下で、同級生で友人である男に一番恥ずかしい部分を見られている。
恥ずかしくて、情けなくて涙がぼろぼろとこぼれた。
悲しくて情けなくて嫌でたまらないのに、後ろの穴はヒクヒクと男を欲しがっていて、
前だって恥ずかしいぐらいに自己主張を強めている。
「入れるぜ・・・」
「!!!!駄目!いやっ!お願い許してぇえええええええ!!!!!」
「黙れよ!女じゃ無いんだから妊娠する心配もねぇだろ!?」
「やだ…誰か…リボーンさんっ!たすけて…!」
山本は俺の尻の穴を指で広げ、ガチガチに硬くなった山本のペニスの先端を俺の穴の中にぐりぐりとねじ込む。先の方、ちょうとエラの部分まで入りかけた時に、背後でバサリ、という鳥の羽ばたくような音が聞こえた。
「僕の前で嫌がる人間を強姦するなんて良い度胸してるね。」
「え?」
次の瞬間、トン、という軽い音がして、それから間髪入れずにゴッという重いものが硬いものにぶつかる音がした。俺の背後にいた山本の気配が消える。そして、ガシャンという大きな音が聞こえる。
「・・・あ・・・」
恐る恐る後ろを振り向いた俺を、鳥が見下ろしていた。
「ねぇ、大丈夫?」
「あっ…あの…」
俺はガクッ、とその場に倒れこんだ。
「凄い格好。とりあえずコレ、着てなよ。」
俺を、助けてくれただろう人は俺に自分が着ていた学ランを俺のむき出しの白い脚にかけてくれた。
「ひゃっ!あっ、りがとうございま・・す。」
「ゴメンね。本当は、最初からいたんだけど。」
「え?」
「給水塔。僕のお気に入りの昼寝スポット。」
「あっ・・・じゃぁ・・・えぇっ!」
最初から、というのはおそらく、山本から襲われたそのはじめから、ではなく。
俺がはしたなくも自慰をしていた時からだろう。
今日はなんて日なんだろう。リボーンさんでない男、しかも2人に自慰を見られるなんて。
恥ずかしくて消えてしまいそうだった。
顔を真っ赤にしてうつむいた俺に、彼は少しあいまいに笑って俺の肩をポンと叩いた。
「学校では控えるようにね。誰が見ているか分からない。」
「はっ・・・はい!本当にすいません・・・」
「まぁ、聞き耳を立てていた僕も趣味が悪いとは思ったんだけど、知らなければそれでいいかなって思ったんだ。下手に注意するとさ、された方も恥ずかしいでしょ?」
「おっ・・・お気をつかわせてしまって・・・」
「最初は、そういうプレイ、なのかなって思ったんだけど。」
「ぷっ、プレイ?!」
「邪魔したら野暮だなって。でもそうじゃなかったみたいだから。」
彼は切れ長の目を弓なりにしならせて、俺の頭を撫でた。
ああ、もう恥ずかしい。恥ずかしくて消えてしまいたい。
「彼は、何?」
「彼・・・」
彼が指を指した方向にいた人間。それは先ほどまで俺を強姦しようとしていた山本。
下半身丸出しでフェンスにぶつかり大の字に倒れていた。思い切り一本勃った性器が目に入り物凄くはずかしくなって顔を背けた。
「どっ、同級生・・・です。同じクラスの友人・・・・です。」
「そう。あぁ、あと。」
「え?」
「この携帯には君の恥ずかしい映像が入ってるんだよね。」
「!!!!」
「あぁ、そんなに警戒しないで。脅そうとかそんなんじゃないから。」
「・・・あっ、すみません。」
「で、入ってるの?」
「・・・・はい・・・」
「そう。分かった。」
彼はスっと立ち上がると携帯を屋上の地面の上に落とし、思いっきり、そう。トンファーを叩きつけて壊した。俺はその衝撃にビクっと体を奮わせた。
目をぱちくりと瞬かせて、携帯を壊した鉄の棒。トンファーを見つめた。
この学校で、トンファーを持って、そう。学ランを羽織って腕に「風紀委員」の腕章をつけているのは、ただ一人。
「雲雀・・・恭弥・・・先輩・・・?」
「うん?そうだよ。」
顔を上げて、俺に目線を合わせる。俺は体を震わせ雲雀先輩を見つめた。
「どうしたの?」
「あの…雲雀先輩は…その…」
「『不良の頂点に立つ、最強の風紀委員長。気に入らない人間がいるとトンファーでぐちゃぐちゃにする』ってとこかな。君が知っているのは。」
「はっ・・・はい。」
「うん。僕は正直者は嫌いじゃない。それで、君は僕が怖い?」
「・・・すっ、すこし・・・でも。」
手をぎゅっと握り締めて、雲雀先輩の目をまっすぐにみた。
「悪い人じゃないと思います。…俺の事、助けてくれましたし…」
「そう。君は素直で頭の良い子だね。」
「あっ・・・」
雲雀先輩は俺の頭を撫でる。そして、俺のズボンや下着を引き上げて乱れた制服をカッチリと、綺麗になおしてくれた。
「あの…」
「うん?」
「すっ、すみません…ご迷惑をおかけして。」
「そうだね。普段の僕ならこんな事はしないけどね。」
「え?」
雲雀先輩は俺を立たせると、膝についた砂埃をパンパンとはらってくれた。
雲雀先輩は俺の頭を撫でて、優しく微笑んだ。
「不謹慎だけど、君に一目ぼれしたみたいだ。」
「え・・・ええ!?でっ、でも。」
「さっきの話、全部聞いてるから知ってるよ。付き合っている人間がいるんだろう?僕はさっきの事をたてに付き合えとも好きになれとも言わないよ。でも、君と一緒にいたいと思うのは事実だから、君さえ良ければ僕の、そうだな。友達、にでもなってくれないかい?もしかしたら君は僕の事好きになるかもしれないし。可能性ってやつだよ。」
「雲雀先輩・・・」
俺はその言葉に、手に持っていた学ランをきゅっと抱きしめてしまう。
「改めて自己紹介しようか?僕は並盛中学3-A、雲雀恭弥。風紀委員長をやってる。」
「あっ、1-Aの獄寺隼人です。よろしくお願いします!」
俺はおろおろとしながら雲雀先輩に向かって頭を下げる。雲雀先輩は「顔あげて。」と言った。
俺は雲雀先輩を見て、頬を赤くしてしまう。 リボーンさんも相当にカッコイイ大人の男の人だと思っていた。
雲雀先輩はリボーンさん程の年の差なんかを感じる事はないけれど、それでも俺より2つも年上で、俺には無い経験と余裕のようなものが感じられた。
それに、雲雀先輩も、よくよく見れば、リボーンさんとは系統がまったく違うけれどかなり整った顔をしている。きっと女の子に人気があるだろう。キャーキャーまわりが言わないのは物騒な噂のせいだろう。いや、噂じゃなくて真実だろうけど。そんな噂さえなければ引く手多数だろう。
「隼人、って呼んでいい?」
「え?」
「僕、君の事は名前で呼びたい。嫌なら苗字で呼ぶよ。」
「いえ!それくらい全然大丈夫です!」
「そう、良かった。これから、よろしくね。困った事があったら僕に言いに来なよ。」
「え?」
「力になれる事があったら、力を貸してあげる。惚れた弱みってやつ。僕としては頼られた方が嬉しいから。」
「ありがとうございます…雲雀先輩。」
「じゃぁ、早く教室に行くといいよ。そろそろHRが始まるよ。」
「はい。あっ・・・あの、山本は・・・」
「僕が片付けるから心配しないでいいよ。」
「あ・・・あの!痛い事とかその・・・暴力は・・・」
やめてもらえますか?と小さい声で言うと、雲雀先輩は目を丸くしてきょとんとしていた。
「隼人は人が良いね。」
「え?」
「普通だったら、あんな事した相手、ボコボコにしてくださいっていうもんだと思ってた。」
「だっ、駄目ですか・・・?」
「ううん。ますます隼人に興味が出てきた。好意もね。分かったよ。注意だけにして教室に戻らせるから。」
「ありがとうございます。あの…お礼を…」
「入らないよ。…そうだ、良かったら、携帯電話の番号とメールアドレス、教えてくれない?」
「え?」
「友達、からだから。メール交換?だめ?」
雲雀先輩は携帯を手に持って、穏やかに微笑んでいた。
「そんな事ないです!喜んで・・・あの、お願いします。」
俺は雲雀先輩と赤外線で携帯電話のアドレスと番号を交換した。
「じゃ、そろそろ戻らないと。」
「はい、ありがとうございました。」
俺は何度か振り返り。雲雀先輩に会釈をすると、教室へと戻った。
その後、しばらくして教室へと戻ってきた山本は俺の方を見ないで別の友人と話をしていた。
俺とは一言も話をしなかった。まぁ、当然だろうなと思った。
俺達は担任教師の休校中は遊びほうけずに自主学習に励むようにとの注意を受けたりして早々にHRは終わった。山本は別の友人たちとゲームセンターに寄って帰るような事を言っていたのが聞こえてきた。もちろん、その誘いが俺にかかることはなかった。
もともと山本を通じて他の人間との付き合いがあったわけだから、山本が俺を誘わなかったら誰も俺を誘わないだろう。
これから1年、俺は一人でこの教室で過ごしていかなければならないのかもしれない。
…それはそれで仕方の無い事なのかもしれない。と、思った。
HRが終わると同時に携帯が震えた。この震え方はリボーンさんじゃない。誰か別の人間だ。俺にメールをしてくる人はリボーンさんと山本を除けばほとんどいない。山本が送ってくるはずはないから、誰だろう?と首をかしげながら携帯を取り出した。
「あっ…」
思わず小さく声が漏れた。メールの送信者名は『雲雀恭弥』さっき、俺を助けてくれた、雲雀先輩だった。
内容は「良かったら、途中まで一緒に帰らない?」と言うものだった。
俺は、一人で帰宅する事の寂しさを感じていたので迷うことなく「一緒に帰ります」との返事を出した。
それから30秒たたない内に、「教室でまっていて。」と言う返事が来たから「分かりました」という返事を返した。それから2、3分して雲雀先輩が教室へと入ってきた。制服がブレザーの学校でさすがに一人学ランを着ていたら目立つ。教室に残っている人間は少なかったが、残っている人間がみな驚いたように雲雀先輩を見て、すぐに目をそらした。
あぁ、やっぱり雲雀先輩って、噂の人なんだなって思った。
「少し公園に寄って話をしてもいいかい?」と言う雲雀先輩の言葉に頷いて、途中大判焼きとジュースを買ってもらって公園のベンチに座った。
「一緒に帰ってもらえるなんて思わなかったよ。もしかして、今日の事で気を使ってる?」
「そっ、そんなことは無いです!」
俺は首をブンブンと横に振った。
「俺、今日は…一緒に帰る友達、いなかったから。」
「皆、用事があるの?部活は今日はないはずだけど。」
「いえ…俺、いつも一緒に帰ってたり遊びにいってたりした特定の友達って、山本だけだったんです。他のクラスメイトは、山本を通じて話してたみたいなものだったから…」
「その山本が隼人を無視したら、隼人は友達が…その、上手い言い方が見つからないんだけど、いない、ってことかな?」
「…そういう事に…なります。」
「そう…」
雲雀先輩と俺は大判焼きを食べながら、しばらく無言だった。
「雲雀先輩は…雲雀先輩は、俺と一緒に帰らなくても、お友達いらっしゃるんじゃ…その、雲雀先輩と一緒に帰りたいってお友達とか・・・」
「僕に、友達なんていないよ。」
「え?」
「僕は人と群れるのが嫌いだからね。」
「でも…」
では、雲雀先輩は何故俺と一緒にいるのだろう?と不思議になった。
「そうだね。隼人は友達、だけどチャンスがあれば「恋人」にしたいと思っている人だからね。」
「…え?えぇ!?」
「もちろん無理強いはしない。隼人が僕の事を好きにならないならそのまま友達として付き合ってほしい。でもチャンスはあるだろう?」
「ど…どうでしょう…?」
「僕は気が長い方だからね。」
少し笑って、大判焼きを食べ終えた雲雀先輩。俺が食べ終えるのを待って「帰ろうか?」と言ってくる。
「もし・・・」
「え?」
「もし、これから君が一緒に帰る友人がいなくて、迷惑じゃないのなら僕と一緒に帰らない?もちろん、隼人が嫌でなければ、だけど。一緒に帰る友人が出来たなら、僕とは無理に帰らなくても良い。」
「あ・・・」
頬がボッ、と赤くなる。雲雀先輩の表情が物凄く切なそうで、なんだか胸がぎゅっと締め付けられてしまう。もしかしたら、俺もリボーンさんにこんな表情をしているのかもしれない。
「・・・少し気持ちが戸惑っています。」
「そう。」
「雲雀先輩を恋人として好きになれないかもしれないんです。可能性としても・・・確率的にはとても低いのかもしれません。」
「・・・」
「俺には、もう。」
「いいよ。そんなのは最初からわかっていることだから。」
思わず、俯いてしまう。
雲雀先輩は俺の頭を撫でて、ぽん、と肩を叩いてくれた。
「帰ろうか。日も落ちてきたし。」
「・・・はい。」
俺はそれから、雲雀先輩に家までおくってもらった。
雲雀先輩の家は知らないけれど、おそらくはかなり手前で分かれるはずだったんじゃないだろうか。
俺が部屋に戻って窓から外を見ると、雲雀先輩は今来た道を戻っているのがみえたから。
きっと、俺の事を気遣って家までついてきてくれたんだろうと思う。雲雀先輩みたいな人に助けてもらえて良かった。
でも、俺が雲雀先輩を好きになる事はないだろう。もちろん、恋人としての「好き」だ。
俺はリボーンさんが好きだから。
(リボーンさんが、あの時・・・)
付き合い始める切っ掛けになったあの時から俺の心は全部リボーンさんの物だ。
(あの時、リボーンさんが言ってくれたから…)
ぎゅっとカーテンを握り締めて、夜になる前にカーテンを引いた。
妙にセンチメンタルな気分になる。雲雀先輩の表情が、酷く切なかったから。
俺も、胸がぎゅうっと締め付けられた。
(あぁ、俺もあんな顔してるんだ。)
リボーンさんも、今の俺のように胸が締め付けられたりするんだろうか。
リボーンさんに、あいたい。
宿題をして、学校の用意をして、風呂に入ってから明日着ていく服を選ぶ。
なんだかんだ言って、俺はリボーンさんとデートできる事に浮かれていた。
「リボーンさん、お忙しい人だから昼間にデートなんて滅多に出来ないもんなー。」
もっぱら会うのは夜。平日の昼間はリボーンさんは講義やバイトがある。
日曜日も俺は休みだけどリボーンさんはバイトが入ってる。
リボーンさんのご家庭の事は聞いていたけれど、今まで裕福な生活をしていた人が独立するために切り詰めた生活をするのはとても大変な事だと思う。
リボーンさんは甘える事なく自分の目標に向かって努力をしている。
それは玉に、リボーンさんのスタイルを損なわせる時もある。でもそれを気にせずに努力を出来る人は本当にカッコイイ人だと思う。
「リボーンさん・・・」
ハンガーに明日着ていく服をかけて、電気を消してベットに入る。
時間は9時。寝るには少し早いけれど遅刻しないように早めに寝る。
「リボーンさん。」
布団を鼻先まで被って、クスクスと笑う。今日の出来事が気にならなくなるくらいに明日が楽しみだ。
また学校が始まるのが憂鬱ではあるけれど。
「リボーン、さん。」
リボーンさんの事を思い浮かべる。電気を消した部屋の中で思い浮かぶのは、やっぱりアノ時の事だ。
(あっ・・・)
不意にゾクッとした感覚が背を走り抜ける。
(・・・うわぁ・・・)
思わず勃ちあがりかけたソコを手で押さえる。
「っ・・・」
ビリ、っとした感覚。ここまで、こんな風になってしまったらもう最後までしてしまうしかない。
深呼吸をしたって収まってはくれない。
「んっ・・・・」
パジャマのズボンと下着を膝まで下ろして、直接性器に触れる。
ふにゃふにゃの状態ではなく、少し硬くなった性器を優しく掴んで、上下に手を動かす。
手のひらの擦れる感覚がゾクゾクする。背が知らないうちに反ってしまう。
「はっ・・・ふ・・・」
布団の端を噛んで、右手で性器を擦りながら左手でお尻の穴に指を入れる。
(ここに・・・リボーンさんの大きいのがいつも入ったり出たりしてる・・・)
(それで・・・今日は・・・山本のも・・・入ったんだ・・・)
先端部分だけではあるが、リボーンさんにしか見せたことの無い、リボーンさんしか入った事のないお尻の穴に、クラスメイトである山本が入ったのだ。
少なからずショックではあった。
(山本は、俺が嫌いなんだ。)
良い友達だと思っていただけに、ショックだった。山本なら見て見ぬフリをするか、冗談めかしてうやむやにしてくれるだろうと心の何処かかで思っていたから。
『なぁ?お前いつも一人で昼飯食ってるのな。』
『・・・あぁ。』
『俺も一緒に食っていい?』
『・・・どうして?』
『え?』
『山本君には、一緒にお昼を食べる友達がたくさんいるのに。どうして俺と?』
『いや、その、なんつーか。』
『?』
『お前と友達になったら楽しそーだな、って。』
『・・・』
『駄目か?』
『・・・食べるよ。』
『・・・え?』
『お昼。』
『マジ?やった!』
山本と一緒にいると、リボーンさんとはまったく違った楽しさがあった。同年代の友達とああいう風にふざけたり話したりする事なんてそれまではほとんど無かったから。
「ふ・・・くぅ…ぐすっ・・・」
自業自得だと思う。それでも悲しくて悲しくて。気持ちよくて。
体が震えて、手の中に精液を吐き出した。
昼間出していたからそれほど量はでなかった。
ティッシュで拭いたけれど手がベタベタしていたので、洗面所へと手を洗いに行った。
洗面所で手を洗い、部屋に戻ろうとした時、廊下のカーテンの隙間から家の外の外灯の下に人影が見えた。
−−−こっちを見てる?
気のせいかとも思ったけれど、どうにも視線を感じる。
カーテンの隙間から、そっと覗いてみる。
−−−変質者か?気持ち悪ぃな。
変な奴だったらシャマルに言おう。と、思って目を凝らして見てみた。
−−−え?
見間違いかもしれないと、目を瞬かせた。
ゴシゴシと目を擦って、もう一度。その、人影を見た。
−−−何で…?
何で、いるのか。
何で、知っている? 学校の連絡網には、電話番号しか載っていないのに。
一度だって、遊びに来たことも、
ましてや住所を教えた事も無かったのに。
「やま・・・もと・・・」
怖くなった。
怖くなって俺は部屋に逃げ帰って、布団を頭から被った。
どうしてあんな場所にいたのか?
それに、今はまだ9時かもしれないが、外はもう暗い。
まだ中学生になったばかりだし、部活だって大会も何もないのだからこんなに遅くまではやらないだろう。
それに何で家が分かったんだ?
何時からこっちをみていたんだ?
何時間そこにいたんだ!?
「どうして・・・」
怖くて怖くて。
俺は眠りにつくまで恐怖に体を震わせていた。
一番怖かったのは、山本の表情が遠目にも尋常じゃなかったから。
その時の俺は、これから学校で始まる地獄の時間を知らずにいた。
NEXT
熊さんへ捧げるリボ獄小説。ここで第1話終了。相変わらずもっさんが怖いですが彼はリボ獄を引き立てるための道化でしかないのです。・・・リボ獄じゃなくてヒバ獄引き立ってない?ワーーォ。こんなに長いのにリボーンさん本体がまだ出てないよ。
と言うわけで頂いております。もぐもぐ。相変わらずもっさん怖いですね☆
一話長! と突っ込みを入れる前に連載モノを頂いちゃって良いのかな・・・!? と言う気持ちで一杯です。
はぅ…それにしても雲雀さんが良い男で困る。ちょっとときめいてしまったじゃないか・・・!!
だだだ、大丈夫だよね!? リボ獄だよねこれ! 雲雀さんサイド行っちゃわないよね!? ね!?(熊さん慌てすぎ)
鈴木様ありがとうございました! は…早く二話を!!(お前ー!)
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