真実は絶望。希望は虚構。所詮現実なんてそんなもの。
良い事なんてありはしない。そんなものどこを探したって有りはしない。
…でも、それでも彼は笑っていたから。傷だらけのはずの身体でもそれでも生きていたから。
だからオレも、そんな彼に倣ってどこかに救いを求めてる。
Inconsolableness gathers you in it which is admirable when I watch you who are going to spin happiness desperately.
「ん…―――――」
目を開けた彼は、自分がどのような状況におかれているのかよく分かっていないようだった。
ぼーっとしながら天井を見ていて。ゆるゆると視線を移動させて。オレの方へと向く。
「…おはよう。獄寺くん」
我ながら不機嫌そうな声。しかし仕方のないことだろう。
「オレ―――…」
「獄寺くんは倒れたの。傷だらけの身体だったから。…ね。どうしてそんな無茶したの?」
「あ、あは…いや痛くなかったから大丈夫だと…」
「うそ。あれだけの傷。痛くないわけがないじゃない」
オレの遮るような言葉に獄寺くんは言葉を詰まらせて。目線を逸らして。
「あ…ああ、そうだな…痛くないわけないよな…えと、…我慢してて」
たどたどしい口調。その裏に隠されている真実を汲み取って。オレはやるせなくなる。
「…獄寺くん」
「なんだ?」
「嘘………。付かないで良いから」
「え?」
「痛み…もう感じれないんでしょう?」
驚く彼にやっぱり本当なんだと絶望する。
そんなこと、知りたくなかった。分かりたくなかった。
…知りたくなんて…なかった。
獄寺くんが倒れたあと。オレたちは駆けつけた二人と共にDr.シャマルの元へと急いだ。
服を取ってみると、獄寺くんの身体はそれこそ傷だらけで。…オレは血の気を失って。
治療だとシャマルは獄寺くんを連れて行き。…辺りに重苦しい雰囲気が漂って。
そういえばと、オレは何かを誤魔化すかのようにディーノさんに聞いてみる。
「…ディーノさんは獄寺くんに用があるって、それで日本に戻ってきたんですよね。…なんだったんですか?」
その言葉を聞いたディーノさんの表情が微かに強張る。…? それほどおかしいことを言ったのだろうか。
「それは―――」
口篭るディーノさん。何故だか感じる嫌な予感。
「スモーキンを止めに…来たんだ」
「止める…?」
分からない。止める。情報が少なすぎて。どうにも意図を汲みこめない。
「…まさか、例の馬鹿計画じゃねぇだろうな」
リボーンの言葉に目線を逸らすディーノさん。…馬鹿計画?
「ったく、…道理で何かがおかしいと思った」
リボーンには通じたみたいだ。しかしオレには分からない。一体何が起きているというのか。
「…? リボーン、一体なにさ。計画って」
「お前は知らない方が良い」
問い掛けるオレにリボーンはあっさりと切り離す。しかし引き下がれない。
「知らない方がって…何だよそれ! そりゃオレは部外者かもしれないけど、でも・・・!」
それでも知りたいと思うのは罪なのだろうか。彼が、獄寺くんが苦しむ理由を知りたいと思うのは。
口を開く様子のない二人に思わず泣きそうになる。所詮オレごときがかなう相手ではないのだ。
しかし助け船は思わないところから来た。背後からドアが開いて人数が増える。
「…部外者ってことはねーんじゃねぇの? 仮にもそいつはボンゴレ10代目で、隼人の主だ」
「Dr…シャマル……?」
意外な人物からの意外な言葉に思わず目を見張る。彼はオレをそのどちらとしても認めていない。
「お前にこそ関係はねぇだろシャマル。黙って獄寺の治療でもしていろ」
「うるせーよ。治療費まけてやるからオレにも話せ。関係はなくとも知る権利ぐらいあるだろ」
シャマルの言葉にやれやれと溜め息を付くリボーン。そして―――
「…話してやれディーノ。オレもあの計画のことはそんな詳しくねーんだ。中止になるだろうと踏んでたからな」
ディーノさんはその言葉に顔を歪ませて…
「分かったよ」
何かを諦めたかのように、そう言った。
「話す前にツナ。最後にもう一度だけ確認だ。…というよりも警告だな。オレはお前にこの話を聞かせたくねぇ」
「………」
真直ぐと見てくるディーノさんの目をしっかりと受け止める。オレは彼の、獄寺くんの話を聞きたい。
「…オレは、引くつもりはありません」
強い口調でそう言ってやる。オレの意思を伝えてやる。
「―――そうか。…じゃ、話すよ」
暫しの間のあと。ディーノさんはようやく重い口を開いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
知ってはならぬと。知らない方が良いと。彼はそう言った。
何も知らずにこのまま生きていけたなら。そうして彼がこのまま治ってくれたなら。もしかしたらそれは理想で。
…けれど。このとき既にオレはなんとなくもう分かっていた。
―――――そんな都合の良いこと、起きるはずがないんだって。
→