雪が降って、雪が舞って。


今日はホワイトクリスマス。





獄寺がいつものようにツナの家へ向かうと、そこに見知った顔はいなかった。


いるのは黒尽くめの小柄な少年ただひとり。


…誰だ。


「…ん? 獄寺か」


声を掛けられた。


何故オレが知られている。と獄寺は思わず怪訝な顔をするが…すぐに思い直す。


なんとなく、獄寺はその少年を知ってる気がした。


その格好、その雰囲気。その口調に、その目線。


それら全てを混ぜ合わせ、この場所にいても違和感のない人物を導き出す。それは―――


「………リボーン、さん?」


「そうだぞ」


少し疑惑を抱きつつ、それでも確認を取ってみればあっさりと返ってくる正解。


…なるほど、10年バズーカ。


「ツナはオレが蹴飛ばしたランボを探しに出ている。少ししたら戻ってくるだろうから、待ってろ」


「あ、はい」


返事をしつつ、その目線はリボーンから引き剥がせない。


10年バズーカということは、このリボーンは10歳ぐらいだろうか。それくらいの年相応よりは小さく、幼く見える。


「…どうした? オレがそんなに物珍しいか?」


「あ、その、いえ…」


苦笑して見上げてくるリボーンに、獄寺は言葉に詰まる…が、やはり目線は外せない。


何故か、どことなく、庇護欲を感じさせるその身体。


愛らしさを感じるその雰囲気。


どうしてだろう、守ってあげたくなる。


「リボーンさん」


気が付いたら、獄寺はリボーンの手を掴みその目を真っ直ぐ見ていた。


「ん?」


リボーンは素直に見上げてくる。手の小ささ、身体の小ささが顕著に見て取れる。





「オレと―――結婚を前提としたお付き合いを、してください」





気が付いたときには、告白していた。


リボーンは暫し呆然とし、そしてすぐに「ああ、」と納得した。という声を出した。


獄寺はハッと正気に返り、慌てて弁解の言葉を出そうとする。が、それよりリボーンの方が早い。


「10年、待て」


「10年……ですか?」


「ああ」


リボーンはクックと笑う。長年の謎が解けた。という顔をしている。


「今から返事をしに行ってやるよ。それがいい返事か悪い返事かは……お前のこれからの行動に掛かっている」


「………それって…」


「ああ、10年掛けて、オレを落として見せろ」


リボーンは不敵に笑い、そして姿を消す。


代わりに現れたのは、見慣れた赤ん坊のリボーン。辺りを見渡し、獄寺を見上げる。獄寺は屈む。


「未来はどうでした?」


「お前がいたな。何か含みのある笑いをしていて、気持ち悪かった」


未来のオレ一体何してくれやがってるんだよ馬鹿野郎。殺すぞ。


獄寺は未来の自分に毒付き、それはそれと気を改める。


「リボーンさん」


「なんだ?」


「今度、オレと一緒に出掛けませんか?」


「お前と? なんでまた」


きょとん、とした顔を向けられた。


…負けるな、自分。と獄寺は自分を叱咤する。


「…いえ、最近リボーンさんとあまり話してないなと思いまして……」


「ふーん…ま、いいぞ」


「本当ですか!?」


「ああ」


意外にもいい返事をもらえて獄寺の気分が上昇する。心が踊る。


しかし浮かれてばかりはいられない。


猶予は10年。目の前のリボーンは知らないとは言え、既に告白は済ませた。


獄寺の脳裏に不敵な笑みを浮かべる少年の姿のリボーンが映る。


リボーンのことは以前より好いていた。そして、あの姿を見て気持ちが爆発した。


ドストライクだった。


我慢など、出来るはずもなかった。


告白したあと、後悔……ではないが、せめてもう少し言葉を選べなかったかと思った。


が、時間をもらった。無駄には出来ない。無駄にはしない。


「じゃあ、明日でいいか?」


「ええ。楽しみにしてますね」


微笑み、脳内で計画を立て始める。


全ての答えは10年後。


それまで全力で、全身全霊を掛けて、リボーンを落としにかかろうと、獄寺は誓った。





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そしてその10年後。