- 自覚編 - ハヤトの知名度は着実に上がっていった。 初めこそは雑誌数冊とプロモーションビデオ。そしてその歌ぐらいしか出番がなかったのだが、ドラマ出演を機にテレビ出演も増えてきて。 そうして複数のテレビに出て、少しハヤトに変化が訪れた。 何故だか毎日牛乳を飲みだしたのだ。 しかも律儀なことに三食のお供に欠かさず。更に朝起きては牛乳。お昼休みに牛乳。お風呂上りに牛乳。寝る前にも牛乳。 こっきゅこっきゅと一生懸命に飲むハヤトはまぁ見ていて可愛らしいが、けれどその理由が不鮮明で。そもそもハヤトはあまり牛乳が好きではなかったはずだが。 不審に思った雲雀がどうしたの? と優しく聞いてみてもハヤトは曖昧に笑って誤魔化すばかり。 特に害はなさそうなので対処にも困る。納得の出来る理由もあれば引き下がることも出来るのだがそれも分からず。 「なんでもないんです。心配しないで下さい、雲雀さん。…ちょっと牛乳って美味しいなって。思っただけですから」 にぱっとそう微笑んで反されれば雲雀は何も言えず。頭を撫でて解放するのだった。 そしてそれから数日。 ハヤトの所に第二のドラマ企画が舞い込んで来た。 「今度は撮影場所で合宿するんですよ!」 嬉々としながら説明するハヤトに雲雀も嬉しそうに。 「ならちゃんと荷造りしていかないとね。着替えは余分に持っていくんだよ?」 「はい! って、あれ? 雲雀さんは今回は別行動ですか?」 「うん。…沢田がどうしてもって言ってきてね…本当はハヤトと離れたくなんてないんだけど…」 でも今回は骸はいないから大丈夫だよねとどうにか自分を納得させてる雲雀。 「でもいざとなったら僕に連絡しなよ。飛んでくるから。…15分ほどで」 微妙にいざというときに間に合わなさそうな時間だった。しかし本当は撮影場所にはここから二時間も掛かるのだ。 「僕のいない間はリボーンに任せるから。困ったことがあったら何でも彼に言いなよ?」 なんだか当人よりもマネージャーらしい雲雀であった。 「あ、はい。…でもリボーンさんに頼み事なんて、そんな…」 「彼は怖い?」 雲雀の問い。それはずっと前から気になっていたこと。 「…え?」 ハヤトは突然の問い掛けに驚いて。考えて。 「ん…とですね。怖いとかじゃなくて、その…傍にいると、すごく緊張するんです」 あの人が傍にいると身が凍って。でも奮闘して。けれどドジを踏んで。そんな自分が不甲斐なくて。もっと頑張ろうと思って。 「リボーンさんはとってもすごい人です。何でも出来る人です。…憧れかもしれません、これは」 えへへ、とハヤトは笑う。それと恥ずかしいですから、誰にも言わないで下さいね、とも。 「…そっか。憧れ、ね…」 雲雀は少し眩しそうに目を細めて。ハヤトの頭を撫でて。 「はぇ!? ななな、なんですかなんですか雲雀さん!?」 戸惑うハヤトが可愛くて。更に頭を撫で上げる雲雀。雲雀はくすくすと笑いながら。 「…ま、頑張りなよ。僕は応援してるから」 「?? はい、頑張ります!」 仕事のことだろうと思ってハヤトは大きな声で宣言する。雲雀はやっぱり笑いながらうん、頑張ってと返した。 そうしてドラマ現場に行って、泊り込みの撮影が始まってから数日経ったある日のこと。 リボーンがその音を聞いたのは、ハヤトの撮影が終わって彼女が部屋に戻って暫くしてからのことだった。 時間はそろそろ九時になって。お子様体質なハヤトのこと、そろそろ眠る頃合だろうに何かが落ちるような音がして。 「………?」 不審に思ったリボーンは様子を見てみることにした。まさかもう寝ていて、そして寝惚けてベッドから転げ落ちたのではあるまいな。 リボーンはすぐ傍に配置されていたハヤトの部屋まで赴いて扉をノックする。中から「はい」というハヤトの声。開けるとそこにはベッドの前で座り込んでるハヤト。 「…え、あ!? リリリ、リボーンさん!?」 「どうしたハヤト。なんか物音がしたから来てみたんだが」 「あ、いえその…ベッドから落ちちゃって…」 その台詞を聞いてリボーンはため息。なんだ本当にもう寝ていたのかと。 「そんなに疲れていたのか…そうなるまで無理しなくてもいいぞ」 「え…? そんなに疲れてないですよ?」 「? 寝ていたんじゃないのか?」 「?? 寝てないですよ?」 どこかで食い違いが発生しているようで。リボーンはなら何をやっていたんだとハヤトに問いた。 「えと…実はでんぐり返りをしていたんですけど、勢い余っちゃって…」 「は?」 でんぐり返り。あの小学校低学年の子供達が体育の授業等でやっているマット運動のひとつだろうか。あの頭から転がる奴。 「何故」 本当に意味が分からずリボーンは更に問う。ハヤトはしまったとばかりに慌てふためいた。 「えあ!? な、なななななんでもないんですよ!? そうです! なんでもないんです!!」 「何慌ててるんだ。やましいことでもあるのか?」 違うんです違うんですとハヤトは更に首を振って。リボーンは机の上に置いてあったあるものを目の端に捕らえて。 「…牛乳瓶? そういえばお前、朝も飲んでいたな」 「はわ!? あ、片付け忘れ…じゃなくて、そんなもの見ないで下さいよー!!」 突っ込み所の多さにリボーンは頭を抱えそうになる。暫しどうしようかと考えて… 「…分かった分かった。分かったか早く寝ろ。明日も早いぞ」 「あ、はい…」 リボーンはそう言って部屋を出ようとして…ドアの所で立ち止まって。振り返った。 「それとなハヤト。牛乳を飲むのは別に構わんが少し量を減らせ。流石に多すぎだ」 「は…え……」 パタン。リボーンはそれだけ言うと本当に部屋を立ち去って。 一人残されたハヤトは、はぅーとため息を吐いて。牛乳瓶を片付けてから眠りに付いた。 そして次の日から、ハヤトの牛乳摂取量が極端に減少した。 「んー…む………はぁ」 ハヤトは悩んでいた。 そのことは考えないようにしていた。 気にしてはいけない、誰もそんなこと気にしてないと。 でも…やっぱり駄目だった。 色々、自分なりに調べたりして頑張ってみた。 …けれど、何の成果もなくて。 はぁ、とため息。どうしよう、どうすればいいんだろう。 「…何をそんなに悩んでいるんだ?」 「山本…さん」 声に顔を上げればそこには優しく笑う山本の姿。 山本とはハヤトのファンクラブ会長で、何かと来ればスタジオや楽屋裏まで紛れ込んでくる一般人。 ちなみに今ハヤトがいるのは相変わらずドラマ撮影のロケ現場の近くのホテルの。ハヤトに割り当てられてる部屋で。 無論この情報は一般人には公開されてないはずなのに。ていうか女の子の部屋にノックもせず入るのはどうかって言うか色々突っ込み所が。 しかしハヤトはそこらへんの突っ込みはオールスルーだった。あまりに山本が自然すぎるのか、はたまたハヤトが天然だからか。 「オレ色々知ってるし、もしかしたらハヤトの力になれるかも知れないぜ?」 「………」 ハヤトは悩みました。言うか、言わざるか。 確かに自分だけの力ではこれ以上の発展は望めなくて。ならば誰かに力を借りるのが一番で。 「………実、は…」 ハヤトが口を開いた時。ポケットの中に入っている携帯の着信音が鳴り響きました。 はっと、ハヤトは慌てて携帯を取り出して。画面を見るとそこには「ひばりさん」との字が出ていて。 「あ、あわ、わわわ…っ」 ええとええととハヤトは携帯のボタンを押します。しかし慌てているのが災いしてか上手く出来ません。 見かねた山本がハヤトから携帯を取り上げて着信ボタンを押してあげます。 「あ、ありがとうございます…、あ、雲雀さん? ハヤトです!!」 『ああ、ハヤト? 今回は出るの早かったね。前は間違えてよく切ってたのに…ようやく慣れたの?』 「ええとですね、山本さんが出て、手伝ってくれて…って…雲雀さん?」 ハヤトが名を呼ぶも携帯の向こうからはもうなんの返答もなく。ハヤトは「?」と首を傾げて。 「あ、それで悩みなんですけど…って山本さん? なんで息が荒いんですか? あ、ご病気ですか!?」 「い、いやなんでもない…そ、それで悩みと言うのは…?」 「あ、はい………笑わないで、下さいね? 実は―――――」 ハヤトの悩み。ハヤトはやっぱり恥ずかしいのか、頬を赤く染めて。俯いて。小さな声で告白した。 しかし山本はそんなハヤトの告白をあっさりと笑って飛ばした。 「なんだそんなことか。簡単に解決出来るぜ」 「ほ、本当ですか!?」 ぱぁっと顔を輝かせるハヤト。山本は爽やかに笑って。 「ああ。全部オレに任せておけって」 ああ、やっぱり大人の人は違う。ハヤトはどんなに頑張っても成果を上げられなかったのにこの人は簡単だと言う。 「ど、どんなのなんですか、それは!」 「まぁ落ち着けって。これは人の協力が必要なんだ」 「そう…なんですか?」 あぅ、どうしようとハヤトは困ります。こんなこと一体誰に協力を求めればいいのでしょうか。 「大丈夫だって。オレが協力してやるから!」 「山本さんが?」 なるほど、それなら大丈夫だ。他の誰にも相談しなくていいなんて。 「は、はい。よろしくお願いします…」 しかし何をするというのだろう、ハヤトは未だ具体的方法を聞いていない。 「まず、ハヤト…目を瞑って」 「あ、はい…」 ハヤトは言われた通りに目を瞑りました。視界が真っ暗になります。 目を閉じると視界以外が鮮明になるような気分になります。例えば…遠くから何か走ってくるような音が聞こえるような気が。 いや、それは気のせいじゃなくて。確かに何かが走ってきている。しかも複数。 そしてそれはハヤトの部屋の前まで来て。バターンと大きな音を立てて部屋の中まで雪崩れ込んできた。 「リボーン! 手筈通りに!!」 「分かってる!」 入ってきたのは雲雀とリボーンで。ハヤトは何か強い力に押されて流石に目を開ける。 そこには彼女のマネージャーであるリボーンの顔がアップで広がっていた。 「リボーンさん…?」 「ああ。大丈夫か? ハヤト。まだ何もされてないな?」 「は、はい…?」 何もされてないも何も目を瞑っていたので確信を持っては言えないが、多分されてないだろう。…と思う。 そういえば山本さんはどうなったのだろう。そう思ってハヤトは部屋を見渡すと… 「雲雀さん?」 そこには山本をトンファーで床に縫い付けている雲雀の姿があった。 「やぁハヤト。近くまで来たから寄ってみたよ」 「あ、ありがとうございます」 とりわけ何もされてなさそうなハヤトを前に雲雀は安心したように微笑んで。よかったと安堵のため息を吐いた。 「びっくりしたよ。ハヤトに電話したら山本が近くにいるみたいなこと言ったんだもの。急いで来て正解だったみたいだね」 ちなみにリボーンとはロビーで会ってそのまま引っ張ってきたんだと誇らしげに言った。 ハヤトはリボーンを見る。 いつも完璧なこの人が、雲雀さんに引っ張られる? 想像が付かない。 「…それはどうでもいいことだろう。で、そいつはハヤトに何をしようとしていたんだ?」 「そうだね。それは僕も気になるね」 「え…っと」 山本は冷や汗を掻きながら。 「ハヤトがさ、胸が小さいって悩んでいたからさ。揉んででかくしてやろうかと」 バキィ!!! クリーンヒット。リボーンが呟く。その向こうでは雲雀が「ハヤトの前では下ネタ厳禁!」とか叫んでいた。 「え、も…で…って、えぇ!?」 「どうやら危ない所だったようだな。…というかそうか。お前そんなことを気にしていたのか」 「あ、あぅ…」 そんなこと。そう言われたハヤトはちょっとショックで。 確かに、誰にとってもくだらないことかもしれない。 でも…それでも、ずっとずっと前から気にしていたことで、悩んでて… 「女ってのは胸じゃねーぞ。ハヤト」 「…え?」 「そんな周りの下らない価値感に振り回されるな」 なんだか今までの拘りが溶けていくような感覚でした。何故でしょう。ただ彼に言われただけなのに。 「…はい。ハヤトが間違ってましたです。…リボーンさん」 「ああ。…まったく、さては牛乳もバストアップの一環か。ん? じゃあでんぐり返りもか?」 しかしでんぐり返りとバストアップの繋がりが見えない。まぁそんなに詳しいわけでもないのだが。 「あ、はい。実は…」 「わたしが教えたの」 声が聞こえた。高くて美しい声。ハヤトがぴくんと反応する。リボーンも振り向いてその姿を確認する。 「はぁい。ハヤト」 「お姉ちゃん!!」 ハヤトはリボーンの胸の中から抜け出して。お姉ちゃん…現トップモデルことビアンキに抱き付いた。 「お姉ちゃん、お姉ちゃん、おねーちゃん!!!」 「あらあら。ハヤトったら相変わらず甘えん坊なのね」 ああ美しき姉妹の抱擁。二人は暫しきゃあきゃあと抱き付き合って。けれど不意にハヤトは正気に返って。 「…そういえばお姉ちゃん? なんでここにいるの?」 「ふふ。ハヤトを驚かそうと思ってやってきたのよ」 どうやらこのトップモデルは本当にたったそれだけの理由でここまで来たようだ。いいのだろうか。 「あ。いけないわわたしったら。…ご挨拶が遅れまして。わたくしハヤトの姉でビアンキと申します。いつも妹がお世話になってますわ」 言って。ビアンキはリボーンの顔をじっと見つめる。流石のリボーンも少々怯んで。 「…何か?」 「―――いいえ。何でもございませんわ…ハヤトをよろしくお願いします」 「………?」 その言葉全ての意味を汲み取れなかったリボーンだが、頷いておいた。 「…で、ハヤト。結局誰に言われてバストアップを図ったんだ?」 「えと…この間のテレビでご一緒になった「トマゾ」っていうグループのリーダーのロンシャンさんって人に…」 「へー! キミが獄ちゃん!? やっぱり実際で見たほうが可愛いね! それにしても…獄ちゃんて胸ないよね!!」 「って…」 「…分かった。潰しておく」 「へ!?」 …その後実際にお笑いグループ「トマゾ」が潰れたのかどうかは、秘密。 ビアンキは一度ハヤトに会うと留めがつかなくなってしまったらしく、何かあるとちょくちょくとハヤトへと会いに来た。 ハヤトはハヤトでずっとビアンキに会いたかったらしく。ビアンキが来る日を毎日待ってて。 ハヤトが喜ぶのは嬉しいし、精神面としてもハヤトの手助けになってくれるのだからこちらとしても何も言うこともない。 …いや、ただ一つだけ。困った事があるのだが。 彼女が毎回「お土産」と称して持ってくる手作りのお菓子の数々。 ………どう控えめに見てもそれをお菓子といって食すには抵抗があり、実際にそれにはかなりの毒物作用が確認された。 初めて頂いたときは思わずなにかの嫌がらせだろうかと疑ってしまったものだ。しかし彼女に悪気はどうやらないようで。 悪気がないならないでも困る。一体どう処理すればいいのか。 いや、一番対処に困っているのはハヤトだ。 彼女はビアンキの料理は美味いのだと何故か信じきっており、お土産を処理しようとしていた所にやってきて「食べさせて下さいー」と言ってくることもしばしばで。 これを食べさせるだなんてとんでもない。 こんなものをハヤトの口に入れたが最後。 何ていうか…恐らくショックのあまりにぐれるんじゃなかろうか。姉のことなんて大嫌いになるんじゃないのだろうか。 煙草とか吸うかも知れない。目付きとか悪くなるかも…ああもう何を言っているのか。けれどなにやらそんな未来視が。 とにかくそんなわけで。暫くの間ハヤトとビアンキのお菓子をどう距離を置こうかという悩みに打ち暮れる雲雀とリボーンであった。 けれどそれは…これから起きる小さな騒動の、幕開けでしかなかった。 それはある日の晩のこと。 ハヤトは会社の食堂の端っこのスペースを借りて。真剣な表情で作業に取り込んでいた。 それは…どうやら料理―――いや、正確には菓子作りのようで。ボウルの中には生クリーム、湯煎されたチョコレートなどが入っていて。 その一帯だけ甘い香りが一杯に広がっていた。 ハヤトは一生懸命にレシピとにらめっこしながら作業を進めて。ハヤトはそれに集中していて。 …だから。背後に誰かが来たことも。その人に声を掛けられるまで気付かなくて。 「…こんなに遅くまで何やってるんだ?」 「はゎ!? あわわわわわわ!?」 びっくー! とハヤトは驚いて。そして続いてざくっと嫌な音がして。 「あぃったー!?」 どうやらチョコレートを微塵切りにしようと手にしていた包丁で指を切ってしまったらしくて。 「………何してるんだ? お前」 「あ、あぅう」 今度は先程と意味合いの違う口調で。呆れ返ってしまったかのような言葉で。ハヤトは思わず涙目になる。 しかしリボーンは素早くハヤトの手を取り。膝を折って、その一筋の赤い線が走る指を口に含んだ。 「っ!? リ、リリリリ、リボーンさんんんんん!?」 「傷が残ったら困るだろ。消毒だ」 お前は会社の商品なんだから、傷物になったら困る。と言ってリボーンは傷口を舐め上げる。 その声を聞いて、ハヤトは何故か感情が冷えるような感覚に陥って。 …何故? リボーンは何も間違ったことなど言ってない。 何かあるとハヤトの様子を見に来てくれるのも、なんだかんだ言ってハヤトの体調を思ってくれるのも、全ては仕事だからだ。 ハヤトはその事を無論理解していて。…けれど。何故。こんなにも―――それを想うと胸が痛むのか。 「…どうした? ハヤト」 気が付くと、リボーンはハヤトの指から口を離して。ハヤトを見上げていて。…近い距離。少しだけ近付ければ、触れられそうな。 ハヤトはリボーンを真っ直ぐに見る。その整えられた顔にどきどきが止まらない。 …けれど、ハヤトは知っている。彼がただ格好良いだけじゃない事を。 リボーンは仕事に厳しくて。妥協も半端で終わらせることも絶対にしなくて。 何度涙で枕を濡らしたのか分からない。(けれど、それはいつもハヤト自身にプラスになって帰ってきて) リボーンが傍にいるといつも緊張して。気を張って。 でも。…彼と離れると胸の奥が切なくなるような感覚に陥ったのは、いつ頃からだっただろう。(傍にいたら、身体が熱くなって。遠のいたら、寂しくて) 最愛の姉にこの事をそっと相談したら、笑って教えてくれた。それは――― 「…リボーン、さん…」 「なんだ?」 ハヤトは静かに深呼吸をして。意を決して… 「リボーンさんは…ハヤトのこと。…見てくれるのは、仕事だから…ですか?」 リボーンが不思議そうにハヤトを見つめてくる。ハヤトはそんなリボーンを見ながら更に口を開く。 「ハヤト、は…ハヤトは。………リボーンさんのことが…!!」 それは、告白。 一人の少女の、愛の告白。 彼を見るとどきどきが止まらない。 彼が近くにいるととても熱くて。そして遠ざかると何故だか悲しくて。 最愛の姉にこの事をそっと相談したら、笑って教えてくれた。 それは――― それはね、ハヤト。 きっと恋よ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ → |