目を開けたら、見慣れた天井が飛び込んできた。
オレはゆっくりと身を起こして、意識を覚醒させる。
「………」
よく思い出せないが…夢を見ていた気がする。
ずっと昔の夢を。
と、ふと横に目をやれば……隣で寝ているはずのリボーンさんがいなかった。
シーツにもぬくもりは残っていない。随分と前に出て行ったみたいだ。
こんな時は、度々ある。
というか、リボーンさんは凄腕のヒットマンなのだから、常にあらゆる仕事に引っ張りダコだ。
テーブルの上を見れば、置手紙が残されていた。内容は急な仕事が入り、すぐに行かなければならなくなったと。そして数ヶ月は帰ってこれないと書かれてあった。
………数ヶ月、とは珍しい。
今までは数日とか、数週間とか、その程度の日数だったのに。
…それほどの仕事を任せられるとは、流石リボーンさん……
つーか…そんなに会えなくなるのならお見送りをしたかった…そんなオレの気持ちぐらい、リボーンさんなら分かってるくせに。
なのに放置だなんて。電話でもして文句でも言ってやろうか。なんて思う。
オレは携帯を手に取って。履歴からリボーンさんの名前を出して。けれどそれ以上は何もボタンを押さないで。口だけ動かした。
―――リボーンさんの、ばか。
そんなオレの言葉が届いたわけでは決してないだろうが、タイミングよく携帯が振動した。見ればメールが来ていた。タイミングよくリボーンさんから。
内容を見てみれば完結に一言、「すまない」とだけ書かれてあった。
あの人絶対、読心術以外にも色んな技を持っている。
オレは思わず笑みを浮かべ、いいんですよ。と口だけ動かして答えた。その声は音とならない。言葉は出ない。
オレは無意識のうちに喉元に手をやっていた。
―――オレの喉は10年前に潰れてしまって。
オレの声は、もう二度と出ないだろうと告げられている。
………と、告げられていたのだが。
「おい、隼人」
なんだよ。
仕事をしようと部屋を出てから三分後。
聞き慣れた声に呼び止められて、振り向けば声の通りにシャマルがいて。
「お前の喉。もしかしたら治るかも知れねーぞ」
と告げられた。
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…リボーンさん。
医学の進歩って、時折凄まじいものを感じますよね。
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