「そうだな」
と、オレは答える。そっぽを向いて。
「…何をそんなに怒っているわけ…?」
雲雀に呆れ顔で言われるが、そんなのオレの知ったことではない。そう思ってそっぽを向いたままでいたら、ため息を吐かれた。
「まったく、仕事の確認もろくに取れないとはね…。そんなに残してきた恋人が心配?」
「別に。お前が聞いてきた通りだ雲雀。だからオレは肯定した。それだけだ。あと言っておくが獄寺が心配なわけでもない」
ただ、あいつ朝起きてオレがいなかったら。オレが無断で出て行ったと知ったら。しかも帰ってくるのに月単位掛かるって分かったら。
…拗ねるだろうな。盛大に。
………気が重い。
「仮にも最強の名を持ってるとは思えないほどの落ち込みようだね」
「うるさい」
オレのところに仕事の連絡が来たのは、今からつい数時間ほど前だ。
ツナの少し気の落ちた声から、長期の任務だということは察しが付いた。オレは部屋から出て廊下で話を聞いた。
そしてオレは仕事の内容を聞いたあとすぐアジトを出て、今は車に揺られてる。別の任務を受けていて、行き先が途中まで同じだからと相乗りした雲雀と一緒に。
「で? 暗殺に陽動に殲滅にあと外交任務。それから親睦を深めるパーティにも行くんだって?」
「そうだな」
「人気者は大変だね」
台詞とは裏腹に、淡白な口調で雲雀が言う。
「向かう地区が一緒だったからな。ついでだ」
「そのついでで帰れる日が遅れても?」
「―――」
一瞬言葉に詰まるが、すぐに取り戻す。
「オレが戻るのが遅れて、何か問題でもあるか?」
「僕はないけど。キミの恋人の機嫌に問題が出るんじゃない?」
あっさりと言い放たれた。
が、
「別に。獄寺だってもう子供じゃない。オレがいないと言って寂しいと泣きもしないさ」
言って黙る。車が止まる。どうやら雲雀の任務先まで着いたらしい。
「じゃあね」
雲雀は先ほどの会話などなかったかのような態度で車から出て行った。そしてまたすぐに車が出る。
ふと窓から空を見れば、日の出が見えた。獄寺もそろそろ起きてる頃だろう。オレがいないのを知って、メモを見て少し拗ねている頃だろう。
「………」
なんだか獄寺に文句を言われた気がしたので、とりあえずメールで謝罪文を打って送った。
あいつはもう一人でも泣かないが、その代わり一人にしすぎると怒って。それが中々に怖かったりする。
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獄寺に怒られたらツナのせいだな。ツナてめぇ、なんとか言え。
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