歩き出した先に、視線を感じた。
けれどそちらに意識を向けようとすると、視線はまるで溶けるかのように消えてしまった。
「………」
無視して先に進むと、また視線。
だが、オレが見つけようと探りをいれるとすぐにまた溶けて消えてしまう。
「………」
無視して進むことにする。
再度視線を感じるが、完全無視だ。
―――視線からはピリリとした辛く、尖ったものを感じる。けれど暫くすると、それも完全に消えてしまった。
…昔から、この手の輩には事欠かない。嬉しくもないが。
オレの命を狙う奴は、それこそごまんといる。いくら返り討ちにしても無限にいるのかと錯覚してしまいそうになるほど次から次へと沸いてくる。
まぁ、それでもオレ本人を狙ってくるのならまだ可愛いほうだ。ああゆう連中の中には嫌がらせで身近な人間を狙う奴も存在する。
例えば、家族だとか、友人だとか―――恋人とか。
「……………」
獄寺を思い出す。
オレと関係があった。たったそれだけの理由で襲われ、結果喉を潰されたあいつを。
初めの頃は、付きっ切りだった。あの弱い獄寺に。
守っていた。守り続けるつもりだった。出来ることなら、あいつが望んでくれるなら。一生。
だが―――
オレは自分の手を見る。
オレの手が痺れて。そしてそれが取れなくなって。もうどれくらい経つだろうか。
今のところは、痺れも軽いものだから何の問題もない。銃を撃つことも弾を込めることも出来る。箸を持って食べることもな。
だけど、これから先はどうなるか分からない。
オレはいつまでもあいつの傍にはいられない。
その日がいつか来ることは分かりきっていた。
だからオレはあいつが落ち着くと、少しずつあいつに一人の時間を与えていった。
オレがいついなくなってもいいように。
あいつがオレなしでも生きていけるように。
…つっても、オレもまだ死ぬ気はねーけどな。
オレは意識を切り替える。
さて。今日の仕事はどれぐらいで終わるだろうか。
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オレの頭上の日はまだ高い。
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