「んなわけねーだろーが」
オレは電話に向かって怒鳴っていた。相手はツナだ。
『えー、でも結局ターゲット逃がしたんでしょ?』
「たまたまだ」
『そのたままたが今までに何度あった? ゼロでしょ? 初でしょ? やっぱり調子悪いんじゃ…』
「オレにだって一生に一度ぐらいそういうときもある」
つか相手を逃したことに一番ショックを受けているのはオレなんだからそう追い討ちを掛けるな。
―――あのあと、結局オレは仕事を果たすことは出来なかった。
慣れない街の中で、奴は人込みに隠れ。雨には視界を覆われついでに後ろの気配に気を散らされて。
…つーか。
オレは脇腹をさする。そこの服の下には乱暴に包帯が巻かれてある。
撃たれた。
…まったく、こんな怪我するなんて何年振りだろうな。いくら不意を付かれたからといって。いくらオレの前に子供がいたからといって。オレが避けたら当たるからといって。
『…リボーン? どうかした?』
「別に」
ツナにもこのことは告げてない。命を狙われるなんてオレにとっては日常茶飯事で、言うべきことでもないからだ。刺客に怪我を負わされたのは初めてだが。
「まぁ、明日の連絡を楽しみにしてろ。今日ターゲットを逃したのはたまたまで、心配事は杞憂だったと思わせてやる」
そう言ってオレは電話を切った。携帯を懐に仕舞おうとして………落としてしまう。
手の痺れが、酷くなっている。気がする。
けれど、呪われていようと調子が悪かろうと。仮にもオレは最強のヒットマンだ。
翌日。オレはツナに宣言したとおりに全てを杞憂に終わらせた。ターゲットを殺した。
ほらな。やはり何の心配も要らなかった。
さて、余韻に浸る時間はない。オレの仕事はまだ始まったばかりだ。
オレは死体を残して歩き出す。
その、ずっと後ろから………
やはり希薄な気配が一つ。
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ああ、うざい。
どこまで着いてくるつもりだ? あいつ。
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