「エプスレッソ一つ」
午後の休憩にコーヒーを頼んだ。
あれから、オレはまぁ可もなく不可もなくぼちぼちに任務をそつなくこなしていった。いかんせん量が多いからまだまだ帰れないが。
ふと、そうだと思い立って携帯を開いてみる。
「………」
結局獄寺には、あの謝罪文以外何も連絡していない。
何か連絡をした方がいいか? 少なくともあいつは連絡寄越したら喜ぶだろう。目に浮かぶ。
つっても、オレから特別何も言うこともないんだが。
昔…どうしても外せない仕事が入り獄寺を残して任務に出たときは、暇を見つけては連絡をしていたけどな。
あの頃の獄寺は、心が本当に弱かった。例えるなら、一度床に落としてひびの入ってしまった硝子のコップのような。
何とか形を保っているものの、ふとした衝撃で壊れてしまうような。丁重に扱わなければひびが広がってしまうような。
―――もう一度落としてしまえば、二度と使えなくなるような。
だけれど、そんな弱々しい獄寺も昔の話で。今ではすっかりふてぶてしく育った。わざわざオレが連絡するまでもない。
…が。やっぱりあいつ、怒ってるだろうな。寝ているあいつを放置して、一人出て行ったオレに腹を立てているだろうな。それにふてぶてしいからといって連絡をしないでいいことにはならないし。
「……………」
…まぁ、帰る前に一言。今から戻ると連絡すればいいか。
そう思って携帯を閉じた。
注文していたエプスレッソが届く。
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オレは目を閉じて味を楽しむ。
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