空を見上げれば、日は落ち掛けて。夕焼け空が広がっている。
オレは人気のない路地で一人黄昏ていた。
「………」
あれから早くも数ヶ月が経ち。オレにこの地で与えられた仕事も全てが終わった。
…いや、あと一つ残っているか。
オレは後ろに向けて発砲した。
…オレを、後ろからこそこそと付け回っていた奴。
あいつだけは殺して帰ろう。
あいつだってオレを殺したいだろうし。
まさか数ヶ月ずっと後ろから見てただけで気が済んだとも思えない。てか思いたくない。オレ一回撃たれたし。
ああ、思い出しても腹が立つ。
ここで一つ、落とし前を付けてもらおうか。
さぁとっとと出て来い。
尻尾を見せろ。
振り向いて、もう一発銃弾をぶち込んだ。
おめーの場所はもう割れてんだよ。
オレが分かってねぇとでも思っていたか?
若造が。
逃げ場を奪うように、もう一発。
さぁ出て来い。
狩ってやる。
遠くの建物から、影が一つ飛び出した。
オレの獲物がやってきた。
と、思ったら獲物はオレから遠ざかる。距離を置くというよりは、まるで逃げるように。
オレは逃げるものは追わない主義だ。
だが、奴のそれは逃げとは違う。一時撤退だ。時が来れば、機会があればまた来るだろう。
なら今殺す。今すぐ殺す。次の機会など与えない。
さぁ死ね。
オレを殺す気で来たんだろ?
なら、オレに殺される覚悟もあるはずだ。
こんな世界にいるなら、なおのさら。
殺すか、殺されるかの世界の住人ならば、なおのさら。
それに、オレが誰だか知った上でオレを狙ったんだろ?
これぐらいの覚悟、当然あるよな?
銃声が鳴る。
鳴り響く。
追い詰める。
あと少し。
銃に弾を詰める。
銃を構える。
引き金に指を掛ける。
人差し指に力を入れ―――――
指が痺れで、動かなくなっていることに気付いた。
指どころか、一瞬身体の全てが硬直して、動かなくなる。
波が変わる。
流れが変わる。
殺気が生まれる。
殺意を向けられる。
乾いた音が鳴る。
銃声が鳴る。
オレへと向けて。
オレの身体は、動かない。
身体が痛む。
じくりと痛む。
物陰に隠れて、やれやれとため息一つ。
また撃たれたよ…
傷口を手で押さえる。
押さえた手から、じわじわと血液が溢れ出ていた。
まったく、ここかよオレの終わり。
ま、いつかは来ると知っていたけど。
―――遠くに気配が見える。
銃に弾を詰めているのが分かる。
奴は銃をこちらに向けて構えている。
引き金に指が掛けられた。
オレの身体は、動かない。
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だけど、オレもただで死ぬつもりはない。
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