隠れていた物陰から飛び出した。


玉砕覚悟で銃弾ぶっ放してやろうと思っていたら、懐から振動が。


オレは今一度敵と距離を置き、携帯を取った。


こんな時。他の誰から来ようと―――それこそツナから着信が来ようと9代目から連絡が来ようとオレは目の前に集中しただろう。


だが、この着信は…獄寺の携帯からだった。


取らないわけにはいかない。



「どうした?」



そう言えば、電話口から声が。



『なんだ。生きてたのか』


…シャマルかよ。



「…なんで獄寺の携帯からお前の声が聞こえるんだ?」


『むしろ隼人の声が聞こえた方が驚くだろうが』



それもそうか。



『ツナがお前からの定期連絡が来てねーって隼人にぼやいたんだよ。それで隼人が心底心配してんだ。安心させてやれ』


ああ………そうか。そういえばしてなかったな。すっかり忘れてた。



「オレだってたまには忘れる時ぐらいある」


『そーかい。…早く戻ってきてやれ。隼人がお前の為に盛大なドッキリを用意して待ってんだ』


「…それ、オレに言ったら意味なくないか…?」



それにしても…ツナの奴。なに勝手に獄寺を心配させてんだ。しかもオレのことで。


許せねぇな。帰ったら折檻するか。



…帰ったら、とか。



ついさっきまで相打ち狙ってた奴の思考とは思えねぇな。


ククッと、思わず笑い声が漏れる。



『…んだよ気色悪ぃ。どうしたお前』


「なんでもない。…ああ、そうだ。獄寺に代われ」



少しして、獄寺が電話に渡ったってあろうタイミングを計って、喋りだす。



「獄寺か?」


声の代わりに動揺したような、動転しているような。そんな気配を感じる。



ああ、獄寺だな。この気配は獄寺だ。昔を思い出す。なんだ、あいつ変わってないじゃないか。昔のまま、かわいいままだ。



「随分と一人にさせて悪かったな。寂しかったか?」


こくこくと、首を振っている気配。目を閉じれば自然とその風景が浮かぶから不思議だ。



「もう少ししたら帰ってくるから。それまで大人しく待ってろ。オレが戻ったら、二人で何処か出掛けるぞ。準備しとけ」



そう告げて電話を切った。と同時にその場から飛び出す。オレが今までいた場所に銃弾が降り注がれる。


―――悪いな。


もう、オレの命をお前にくれてやる訳にはいかなくなった。


オレにはやることがあるんだ。


さぁ波はどっちのものだ? 場の流れはどっちのものだ? そうか。お前か。



なら、オレが今から巻き返す。



懐から筒状のものを取り出して。投げる。


筒から黒い煙が溢れ出す。煙幕だ。…これはお前の戦法だったな。獄寺。


さぁ身体はまだ動くか? …動くな。ならまた動かなくならないうちにとっとと片付けるか。



…獄寺が待っててくれてることだしな。


とはいえ、ああ、指が震えて上手く照準が合わないな。こりゃ。



なら、こうするか。



オレはダイナマイトを取り出した。


火種は持っていないので、銃で撃ってそれで導火線に火を点ける。


暗雲とした煙が濛々と立っているそこへとダイナマイトをぶん投げた。



爆発が起こる。



爆破の勢いは周りを巻き込み、辺りの建物にも被害を与える。


壁が崩れて支えを失い、煙の中へと倒れこむ。



おお。


獄寺。お前の武器も中々使えるな。


まぁ、確実に殺すにはやっぱ銃の方がオレは慣れてるが。



………生きてるな。あいつ。


あれで頭が潰れてくれればよかったんだが、そこまで上手くはいかないらしい。


けど、まぁ。あれで足は潰れたっぽいな。



さて。またオレの身体が動かなくなってきた。


あいつの留めを刺したいけど、それしようと思ったら間違いなくカウンター喰らって死ぬな。オレ。避けきれる自信がねー。


さっきまでのオレなら、まず間違いなくそれでも構わんと殺しに掛かっていただろうけど。


とりあえず死ぬわけにはいかなくなったからな。



運が良かったな、お前。


見逃してやる。



どちらにせよ潰れた足では満足に動くことも出来まい。


オレはその場から立ち去った。



さぁ帰るか。





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獄寺のところに。