数日経って。リボーンさんから連絡が来た。
"今から戻る"と。
オレの胸の奥がほわっとあたたかくなり、嬉しくなる。
やっと会えるんだ。
リボーンさんに。
メールを見てからずっとそわそわしてしまい、10代目に「落ち着きなよ」と苦笑される。恥ずかしくて、オレも苦笑いする。
何事にも手が付かなくなり、集中出来ない。雲雀に「うざいよキミ」と言われ、頭を殴られる。いてぇよ雲雀。何怒ってんだ馬鹿。
10代目が雲雀に「何拗ねてるんですかー」と言っている。え? あれ拗ねてるんですか?
雲雀が10代目に「何馬鹿なこと言ってるの?」と怒り狂った声で言う。10代目に馬鹿とかお前…
けれど流石の10代目は顔色一つ変えず、「だって獄寺くんが入院してから雲雀さんアジトに戻ってきて、獄寺くんの姿が見えないーって探し回ってたじゃないですか」と言い返す。
って、え?
そうなのか? 雲雀。
オレが酷く驚いた顔で雲雀を見ると、また殴られた。ガンッ! と。だからいてぇよ馬鹿。
10代目は笑みを崩さないまま「雲雀さん暫く拗ねてて大変だったんだからね」とオレに告げた。
………は?
拗ねた…って、こいつが?
信じられない。
てか、それはないでしょ10代目。
いくらオレだって、騙されませんよそんな嘘。
あっはっは。
と、つかつかつか。と。雲雀がオレの方に向かって歩いてきて。
ガンッ!! とまた殴りやがった。だからいてぇつってんだろ馬鹿野郎!!
10代目が安全圏で「雲雀さん照れてるー」と言っている。…これ、照れてるんですか?
……ともあれ、これ以上ここにいても雲雀に無駄に殴られるだけな気がする。
時計をちらりと見れば、さっきとまったく進んでない。
………。
そわそわ…
「うざいよ、キミ」
雲雀がトンファーを構える。
まさかの無限ループか!?
10代目がまた苦笑する。
「そんなに気になるならさ、獄寺くん。外までリボーンを迎えに行けば?」
そう10代目が提案してくれるが、そ、そんな! 一応仮にも現在リボーンさんが戻ってくるまで10代目の右腕のオレが私用で10代目から離れるわけには…!!
いや、行きたいですけど!!!
「………今色んなものがごっちゃになって獄寺くんの口から出てきたなぁ…まぁ、いいから行っといで。護衛とかならほら、雲雀さんがやってくれる」
「ふざけてんの? キ…」
マジか雲雀!? と、オレは目を輝かせる。
「………」
きらきらきら。
「……………」
きらきらきら。
「………はぁ、これ以上うざいキミを見たくないからね。いいよ」
よっしゃ。
じゃ、オレ、行ってきます!!
片手を挙げてそう告げて、オレは廊下へと躍り出た。
待ってて下さい、リボーンさん!!
廊下から外へと走り出す。ああもどかしい。窓から外へと出てしまいたいぐらいだ。
途中数人と擦れ違う。皆最初こそ少し驚くものの、すぐに事情が分かったのか苦笑で応えられた。
中にはシャマルもいて、「ガキか」と突っ込まれた。うっさい、馬鹿。
オレは外に出る。
日はもうとっくに落ちていた。月明かりも頼りない程度で、けどこの程度でオレの勢いなど止められない。
でも行き違いになっても悲しいから、もう少し先まで行って。そこでリボーンさんを待とう。
走るオレの目の端が、何かを捉えた。
暗闇に隠れてよく分からないが、物陰に何かがいる。
……………?
足を止めてよく見れば、それは人だった。大柄の男。
そいつは何の前触れもなく、唐突にナイフをオレへと投げてきた。
「うお!?」
とっさに避けるが、先を読まれたかのように足に銃弾をぶち込まれる。
痛みが走り、その場に縫い止められそうになりながらも何とか距離を置こうと身を引いた。
と、鬼のような形相でそいつが走ってくる。―――何故か足を引き摺りながら。それでも速いスピードで。
オレは懐からナイフを取り出し、男へと投げる。男の片目をぶち抜くが―――相手は怯まない。
いや、少しは怯めよそこは!!! あの野郎頭飛んでるのか!?
更に2、3ナイフを投げるが、男は避けようともせず身体に貫かせる。そしてそのまま速度を落とさずこちらへと走ってくる。
オレが更に攻撃をするか、それとも逃げに入るか。一瞬だけ迷った。その時。
男がまたオレへとナイフを投げた。つか、さっき投げたオレのナイフ。
思わずオレが避けた先。
そこでは重い拳がオレの腹を待っていた。
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まったく、こんなんで10代目の右腕が出来るのか?
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