夢を見た、夢を視た。 遠い、遠い昔の夢。


オレなんかに興味を持つ、馬鹿で愚かで救いようのないような奴らの、夢を。



光の差す場所



最初に来たのは、そう、あの馬鹿だ。



――なんだお前。そんなに鎖が絡みついて、痛くないか?


………。


おい、無視するなよ。それとも口が利けないのか?


………。


それにしてもその鎖ホント重そうだなー…ってお前、怪我してんじゃん!! ちょっと待ってろ…


バシッ


……さわんな。


…て。って、なんだ。お前口利けたのか。


………。


おいおい。まただんまりか? ま、いいや。まずはその怪我を――


バシッ


いてぇ……


さわんなって。


………。


………。


―――――あ。


ん?


捕まえた!!


なっ何しやがるっ!? 離せ!!


やーだ。ぜってぇその怪我手当てしてやる。ほら、暴れんなって。


やめろ、コラ、離せ!!



―――呪われるぞ!!



………え?


――オレは魔物だ。人間が触れると、何があるか分かんねぇ。


もしかして…それでさっき、オレに触らせまいと……?


………。


お前って良いヤツだなーっ


はぁ!? 何でそうなるんだよ! わけ分かんねぇ!!


うんうん、そーなのなー


…分かったら、離れろ。


――その前に。お前に触れた奴って、どうなったわけ?


知らねぇよ。オレに触れたことがあるのは両親だけだ。母方は同じ魔物だったし、父方は陰陽師だかなんだかで呪いに耐性あったし。


はぁ? じゃあお前、本当に呪いがあるか分かんねぇじゃん!


あったら大変だろ!!


………。


……なんだよ。


やっぱお前っていいヤツだなー!!


引っ付くなー!!!



その日から。少しずつ、鎖が短くなっていったんだな。


あまりに些細な変化だったから、オレは気付かなかったけど。


――お前に言われるまで、気付けなかったけど。



あれ? お前、鎖短くなってねぇ?


ああ? ……そうか?


そうだよ! やったな、お前の親父さんとお袋さんがきっと何かしてくれたんだ!!


――なんでお前がそんなに嬉しそうなんだよ。


え? だって呪いが解ければ、お前そこから出られるんだろ?


……たぶん。


それって良い事じゃん!


だからなんでそれでお前が喜ぶんだよ!!


え? だって友達が自由になったら嬉しいじゃん。


なっ!? とも…?


そ! ダチ! むしろマブでも良いぜ?


んな・・・! 馬鹿! オレの名前の知らねぇのにんな事よく言えるな!!


だってお前、名前教えてくれないんだもんよ。


………。


んだよ…教えてくれないのなら、オレが勝手に名前付けちまうぞ? ハニーとか。


何でそんななんだよ! ……獄寺だ。


ん?


獄寺隼人! それがオレの名だ! いいか! 二度は言わねぇからな!!


おう! サンキュー!! なんだ良い名じゃねぇか。オレの名は――


…山本武だろ? 何回も聞いた。


なんだ。聞こえてたのか。あそこまで無視されると少し悲しかったぞ。


―――けっ



それは。夢。


「………」


もう、何年も、何十年も……何百年も前の、夢。





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思い出しては、切なくなる。