ふらり、と。
世界が、揺れた。
まるでスローモーションのようだと、人はよく言うけれど。まさかそれを体験する日が来るなんて。
ああ、なるほど。確かにコレは、よく似ている。
「―……!!」
あの人の顔が見える。驚いているようだ。不思議なことに、声が聞こえない。
あの人を安心させたいのに。まるで身体はいうことを聞かず、重力に沿って、堕ちていく。
まったく、オレの身体はもう少し堪え性というものを持つべきだ。あとたったの30分だったのに。
そしたら、この人と別れて、仕事に行って―――
―――そこで、死ぬ予定だったのに。
そこまで思考がいくと、急に目の前が暗くなって。
それと同時に、身体は地面に叩きつけられたのだが、そのとき既に、オレに意識はなかった。
事の始まりは、もう随分前になる。それはシャマルが日本に来て間もない、そんな時。
オレはボンゴレから仕事の依頼を受けた。日本に来て初めての殺し。
それまでは、向こうでファミリーの仲間と共同でやってたから、一人でやるのは今回が初めてとなる。
一人前に認められた気がして、でもまだ殺しに慣れていなくて。すごく複雑な気持ちだったのを、よく覚えている。
気を抜いていたわけじゃない。自惚れていたわけでも。
でも、オレは敵の攻撃を喰らって、それが結構シャレにならない怪我で。
…様子見に来たリボーンさんがいなければ、オレも周りの連中と同じ末路を辿っていただろう。
まぁ結局は、それが早いか遅いかの、違いしかなかったわけだけど。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
だからオレは、今を精一杯生きようと思ったんです。
―――いつ死んでも、悔いのないようにと。
→