獄寺くんの顔色が悪くなってきているのには、気付いてた。


獄寺くんの顔から汗がだらだらと流れて来ているのには、気付いてた。


獄寺くんが痛みを堪えているのには―――……気付いてた。


獄寺くんがオレに気付かれないようにしているみたいだったから、気付いてないフリをしていた。


………けど、もう、限界だった。


―――――オレが。


シャマルを―――きっと彼なら何とかしてくれる。


あれほど怒鳴り合いをしたあとだけど、気不味いなんて言ってられない。言ってる場合じゃない。


そう思って立ち上がろうとするオレの腕を、獄寺くんが掴んで止める。


「……あの馬鹿医者なら、呼ばなくていいです」


その言葉は苦しそうで。きっと言葉を喋るだけでも、負担が掛かって。


……それでも、彼は笑っていた。きっと…オレを安心させるために。ただそれだけのために。


そして、その笑顔のまま、彼は絶望的な言葉を吐く。それがどれほど残酷なことなのか、きっと彼は分かっていない。


「……あいつ呼んだって、もう無駄です……もう、意味、ないんです」


それを聞いて、オレの目の前が真っ暗になる。


「じゅ……だいめ」


それに嘆く暇もなく、彼は、獄寺くんはさらにオレに追い討ちを掛ける。


「オレ…痛いの、苦手なんです」


ああやめて……それ以上は、聞きたくない。


「……オレを、殺して頂けませんか?」


世界から音なんて消えてしまえと、そう思った。





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けれども世界から音は消えてはくれなくて。

だからキミの願いも消えてはくれなくて。