―――――残酷なことを言っているのは、分かってる。


でも、これからこの人には、もっと辛いことも、苦しいことも待ち受けているだろうから――


オレがこれ以上役に立てないのなら、せめてオレの死をバネにして、高く飛び上がって欲しいと思った。


もう、それぐらいしかオレは役立てそうになかったから。


だから―――――けれど。


「っ……出来るわけ、ないじゃないかぁ!!」


次の瞬間、オレは10代目に抱きしめられていた。


いきなりのことに、オレは思考も何もかもがついていかなくて。


もう何の役にも立たなくなった身体が無駄に痛みを訴えてくるのにすら、暫く気付かなくて。


……だって、今までこんなことなかった。


人に抱きしめられるなんて、初めてだった。


今までオレは、"スモーキン・ボム"としてしか必要とされなくて。


つまり、ある程度の戦力の一つでしかその存在を認められなくて。


いつしか、それが当たり前になっていて。


だから。今のオレは、何の戦力にもならないから存在価値なんてなくて。


オレ自身が、そう思って疑わなくて。


だから最後にオレの命を捧げることで、オレの人生を終わらせようと思ったのに。


なのに、貴方は―――


こんなオレの存在を、認めて下さるんですか…?


「10代目って……温かいんですね」


「獄寺くんが冷たすぎるんだよ…っ」


「10代目って……いい匂いがします」


「獄寺くんだって…っ」


「………なんかいいですね、こんな死に方も」


「っ……そんなこと、言わないでよ!!」


「…すみません。でも」



本当に、そう思いましたから……



…今までオレは、ロクな死に方をしないと思ってた。


だってオレは、今まで散々人の命を奪ってきたのだから。


それでなくても、身体中に言葉通り爆弾を抱えているのだから。死ぬ時は心身共にばらばらに吹っ飛ぶと思ってた。


なのに。それなのに。


今、オレは。たった一人の、オレの唯一認めたボスに抱きしめられながら逝こうとしている。


こんな、こんな幸せなことってあるだろうか。


けれどこの目の前の人は、少しオレに意地悪なことを言う。もう、オレにはどうしようもないことを。





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でもそれが。この幸福の代償ならば。甘んじて受け入れましょう。

……応えられないのが、辛いですけど。