生まれることが罪ならば 夢見る事さえ罪なのだろう。
そんなことすら―――忘れていた。
分からなかっただろう?
―――夢。……また夢を見た。
昔の夢。あいつよりも後にあった、けれど遠い昔の、夢。
………。
………。
………………。
………………。
………………なんだよ、お前。
少し休ませて貰ってるだけだよ。気にしなくていい。
……でも、お前、怪我してる…
へぇ? 魔物なのにそんなことが気になるんだ。変わってるね。
んな・・・! 目の前で死なれたら胸くそわりぃだけだ!!
へぇ………
なんだよ…何笑ってんだよ。
いや。……うん、良いよ。悪い魔物じゃないみたいだし。
はぁ?
―――手当て。されてあげても良いよ?
何でそんな偉そうなんだよ!!
良いじゃない? 目の前で死なれると胸くそ悪いんでしょ?
……………。
ん? どうしたの? やっぱり僕に死んで欲しい?
っ――分かったよ! 手当てしてやろうじゃねぇか!!
大声出さない。傷に響くでしょ?
―――ったく。
うわー、キミって不器用だね。
うるさい! 文句言うな!!
はいはい。
―――ねぇ。
あん?
退屈だから、何か話でもしてよ。
はぁ?
良いでしょ?
………分かったよ。ったく。そうだな、じゃあ――
ある魔物の、罪の話でも。
その日から。お前と少し変な生活が始まって。
何日かを、お前と過ごした。
そう、たった、何日かを。
………ねぇ。
ん?
……少し、面白いことを考え付いた。
なんだ?
キミの呪いを、解く方法。
はぁ?
教えて欲しい?
―――別に。
わぉ。信頼ゼロかい? 悲しいね。
………じゃあ、聞かせろよ。
……………。
―――?
やっぱり止めた。
はぁ?
だって、これが正しかったら、僕は何の役にも立たない、無力な存在ってことになるから。
おい、ちょっと…お前……?
なんかそれって、ムカつくね。だから。やっぱり止めた。
おい―――おい!!
何?
お前……傷が?
ま、誰かさんのおかげでここまで生き延びられたけどね。もう無理っぽい。
なっ!?
――ああ、そういえば一応命の恩人のキミに名乗ってもいなかったね。忘れてた。……僕は雲雀恭弥っていうんだけど。キミは?
………獄寺。獄寺、隼人…
ふーん…ま、冥土の土産に、覚えておくよ。
雲雀……
何そんな泣きそうな顔してるわけ? …やっぱりキミは変わってるね。僕が元気だったら、手を出していたかも。
んな・・・!!
うわ。真っ赤になっちゃって。紅葉みたい。可愛いね。
な、な、な…
―――………あ。落ち葉。
………え?
ああ、ずっと雨が降っていたけど、ようやく止んだんだね。うん。良い天気だ。
――雲雀。
……そうだ。どうせだからキミに教えてあげてから、いこうかな?
え?
へぇ、ここからだと色取り取りの花が見えるんだね。…ほら、見えるかい? あそこの白い花。
………ああ。
知ってる? あれはコスモス。花言葉は純潔、真心、調和――
…花なのに、言葉があるのか。
そう。花だって一言ぐらい話すのさ。それで、次にあれ…分かる? あの薄い赤の。
――ああ。
あれは撫子。花言葉は純愛、才能、無邪気……
ちっさい花のくせに、随分と良い言葉持ってんだな…
かもね。それから―――そう。あの真っ赤なの。紅葉。
……………ああ。
あれは………
……………
……………
…おい、雲雀……?
……………
おい、おい雲雀、なんだよ、寝るなよ! 紅葉の花言葉は何なんだよ!!
―――ちゅ。
――!?
……やっぱり、手、出しとけばよかったかなぁ?
んな、んな…!?
――紅葉の、花言葉はね…
「―――でらくん、獄寺くん!!」
「………ん」
「ああ良かった獄寺くん! 来たらいきなり倒れてて……」
「………」
「どうしたの獄寺くん? どこか具合でも悪いの?」
「………いや。…なぁツナ。知ってるか?」
「――え?」
オレは手にしてたそれをくるりと回しながらツナの前に持ってきて――
「紅葉の、花言葉」
「え、いや、知らない…けど」
戸惑うツナが面白くて。オレは笑いながら教えてやる。
「紅葉の花言葉はな―――」
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"大切な思い出"
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