ある日の夜。


獄寺はリボーンを自室に呼び、束の間のひと時を楽しんでいた。


最初はソファに身を寄せて座り、語ったり笑ったり。


菓子を摘んだり、コーヒーを飲んだり。


そうして穏やかな時間を過ごした。しかし楽しい時間というものは早く過ぎるものであっという間に日付が変わる。


「ん…もうこんな時間か。獄寺、じゃあオレは……」


時計を見ながらソファを立ち、部屋を出ようとするリボーン。しかしその行動は止められる。


「リボーンさん、つかぬことをお聞きしますが、オレたちの関係って一言で言うと何ですか?」


…少し怒ったかのような、獄寺の声によって。


対して、言われたリボーンはきょとんとした顔を作り獄寺に答える。


「…何って、恋人じゃないか?」


「ええ、オレもそう思います。同じ意見で嬉しいです。では更に聞きますが、恋人の部屋で夜に同じ時間を過ごしておきながらお話だけして帰るとか………何考えてるんですか?」


「何って……」


「オレはそんなに魅力がありませんか?」


「そんなことはないし、まあオレもお前と一晩過ごしたい気持ちはあるが…お前、疲れてるだろ」


実は獄寺は今日まで連日連夜働き尽くしであった。なので休息が必要なはずだった。


といっても、そんなリボーンの気遣いなど獄寺にとって余計なお世話でしかなかったようだが。


「期待させておいてお預けだなんて生殺しですか!! こんな気分じゃ眠れませんよ!!」


「期待してたのか…」


明け透けにものを言う獄寺にリボーンは頭痛を覚え頭に手をやった。


対して獄寺は「悪いですか!?」と言わんばかりに胸を張っている。もしかしたら酔っているのかも知れない。酒は飲んでないはずなのだが。


「リボーンさんは知らないかもしれませんが、オレは明日からまた任務です」


「知ってる」


「リボーンさんは知らないかもしれませんが、任務に出たらまた暫く帰って来れません」


「それも知ってる」


「そんな中…一晩だけ空いて、あなたと過ごせる時間が出来て……あなたはオレの部屋へ来て……でも帰るんですか!! 馬鹿ですかあなたは!!」


「そこまで言うか…」


やれやれと、リボーンはため息一つ。目の前には構ってほしいと全身で訴える可愛い恋人約一名。


リボーンは盛大に拗ねている獄寺を引き寄せ、口付けた。


「―――――ん、」


途端に大人しくなる獄寺。触れる身体は熱い。…本当に期待してたのか。


深く、深く唇を重ねる。漏れる吐息は熱を帯び、お互いを求め合う。


長い時間、そうして啄み合い、二人は離れた。獄寺の力が抜けリボーンに寄り掛かる。リボーンは受け止める。


「…言っとくがな」


「…はい?」


少し怒っているようなリボーンと、少し放心している獄寺。リボーンは獄寺を睨み付けながら、


「オレは我慢しようとしたんだ。お前のためにな。それを無碍にしやがって……手加減してやれると思うなよ」


「全力でリボーンさんに愛して頂けるんですね。嬉しいです」


「明日の任務に支障が出るかもな」


「ここでお預けされても任務に支障が出ますから」


ああ言えばこう言う。とリボーンは毒付きながら獄寺を立たせ、ベッドまで進む。


押し倒してやろうとしたところで、獄寺に逆に押し倒された。獄寺の豊満な胸がリボーンに押し付けられる。


「…何の真似だ、獄寺」


「…我慢出来なくて、つい……」


つい、で押し倒される最強のヒットマンリボーン。最もそんな真似を許すのは獄寺のみだが。


胸が離れ、代わりに獄寺の顔が近付く。間近に迫るそれを見て、リボーンは変わらず綺麗な顔だと思った。


そう思い、息吐く暇もなく。


「ん……」


今度は獄寺からリボーンに口付けした。獄寺は口付けが好きだった。出来ることならずっとしていたいとも言っていた。


リボーンも嫌いではないのだが、それ以上をしたいとも思う。なので獄寺の服を脱がせていく。


とろんとした目をしながらも、獄寺はリボーンの意図を知り自分からも服を脱いでいく。白い肌が露になる。


吸い込まれるように肌に指を這わせれば、獄寺の身体が震えた。肌は熱く、火照っていた。


「…熱があるんじゃないのか?」


「あなたに浮かされてるんですよ」


愛おしい口調で獄寺が言う。リボーンの手が腕から胸へと移動する。


「んん……ふふ。くすぐったい、です」


身体を震わせ、笑う獄寺。


リボーンは押し倒されてる状態から身を翻し、獄寺を下に敷いた。少し驚く獄寺。


「おお―――なんという早業、あ……」


軽口を叩こうとする獄寺を黙らせるように、リボーンは獄寺の胸に吸い付く。喘ぐ獄寺の声を聞くうち、リボーンの体温も高くなっていった。


「リボーン、さん……キス…」


ねだる獄寺に、リボーンは一旦胸から顔を離し獄寺の望むように熱く深い口付けを交わす。


獄寺の腕が伸びリボーンの首に手を回し強く抱きしめる。


―――溶けてひとつになってしまいそうだ。とリボーンは思う。


深く交じり合い、熱く溶け合い。どこからが獄寺でどこまでが自分か分からなくなる。


もっと交ざりたい。もっと溶けたい。そう思いリボーンは獄寺の戒めから抜け出し(この子供の身体では一度離れなければならない。早く成長したい)足を開かせる。手で触れてみると……


「濡れてるな」


「当然でしょう」


何か問題でも? と言いたげな口調で言われ、リボーンはため息を吐いた。


「お前は…」


「リボーンさんと過ごせて、リボーンさんに触れられてるんです。…こうならないわけがないでしょう」


ふいっと、顔を背けながら獄寺が言う。…獄寺は獄寺なりに照れてるようだ。


そうだと分かると途端に愛おしいさが込み上げてくる。リボーンは悪戯をするような手付きでそこを慣らしに掛かる。


「あっ……ふぁ…」


びくびくと身体を震わせ、艶の掛かった声を出す獄寺。


「リボーン、さん……」


潤んだ瞳で見上げられ、リボーンは獄寺の腿を持ち上げ―――




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獄寺の中に入ってくる。