任務から戻って、ボンゴレに足を踏み入れた瞬間に嫌な予感がした。


肌に感じる悪意の塊。


それはオレに向けられているようにも、別の誰かに向けられているようにも感じた。


思わずオレは走り出した。


悪意だろうが憎悪だろうが、オレに向けられている分には良い。他の誰であろうとも。





―――あいつでさえないのなら。





けれども嫌な予感というものは当たるもので。


当たってほしくない予感ほど当たってしまうもので。





あいつの部屋に踏み入る。





そこで見たのは、骸があいつを…獄寺を組み伏せている姿。


獄寺は裸に剥かれ、その身体はピクリとも動かない。


オレは迷わず骸を撃った。





「クフフ…思ったよりも早いじゃないですかアルコバレーノ。…ああ、惜しい。もう少しで隼人くんの身も心も…僕の物に出来たのに」





骸は笑みを浮かべたまま、塵となって消え去る。


あれは幻術か。


次に会ったら絶対に殺す。


何なら今すぐ骸を探し出して、見つけ出して、息の根を止めに行きたいところだ。


だが、今はそれよりも―――何よりも優先しなければならないことがある。





…獄寺。





身も心も、と骸は言っていた。


身が今の行いだとすれば、心は……幻術による精神汚染を指すのだろう。


獄寺を見れば、その眼は薄っすらと開いていた。


けれどその視線は、どこを捉えることもなく彷徨っている。





…今まで獄寺は……骸に……


身体だけでなく、心まで―――





「…獄寺」





オレの声に反応してか、獄寺の眼に光が宿り―――オレを捉える。


獄寺は泣き顔で、微笑んで。





「…リボーンさん」





オレの名を、呼んだ。






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