リボーンさんが、オレを抱きしめた。


その力は強く、今までで一番強く。


その感触、ぬくもり、鼻腔をくすぐる香り。


ああ、リボーンさんだ。今度は、夢じゃない、本当の―――リボーンさん。





「…すまない、獄寺」





リボーンさんが謝る。


何を謝っているのだろう。


リボーンさんは何も、悪いことをしていないのに。





「…リボーンさん?」


「お前を…守れなかった」


「そんな…」





悪いのはオレだ。


易々と骸に囚われて、もてあそばれて。


これで10代目の右腕なのだから、リボーンさんの恋人なのだから、本当に情けない。


だからリボーンさんは、気に病む必要など欠片もないのに。





―――と、不意に先程までの蔓の感触が蘇り、オレの身体が震える。





「ん…っ」


「獄寺?」





リボーンさんが心配そうにオレを見遣る。


ああ、見ないで下さい。リボーンさん。


汚れてしまったオレを、骸に良いように扱われたオレを。





リボーンさんがオレの目尻を拭う。


…オレは、また泣いていたのか。





―――リボーンさんが触れた場所が、熱い。





頭が熱で浮かされて…身体が疼いて。


息が荒くなる。


ああ、なんて、はしたない。





「…オレに何か出来ることはあるか?」





リボーンさんがオレの異変に気付いた。


当たり前だ。この人に隠し事なんて出来るわけがない。





「ぁ………」





出来ること。してほしいこと。ある。もちろんある。それもリボーンさんにしか出来ないことが。


けれどもそれを言っても、望んでもいいのだろうか。





「リボーン、さん…」





悩むオレの思考と裏腹に、言葉が勝手に漏れる。


オレの望みを、オレの願いを、否定されるかもしれないと、拒絶されるかもしれないと怯えながら。





「上書き…して下さい……」





骸で汚れた身体のままだなんて、最後に深く身体に触れたのがリボーンさんじゃないなんて、そんなの我慢できない。


リボーンさんじゃないと駄目だ。オレが心から愛する人じゃないと。


見れば、リボーンさんは、硬い顔。





「あ―――」





オレの心を恐怖が支配する。


嫌われてしまっただろうか。


それもそうだ。当たり前だ。他の男で汚れたオレを上書きなど、出来るわけ―――





「獄寺」


「ん、んん―――」





オレの思考を遮るように、リボーンさんは唇を、オレの唇に重ねる。


いつもなら少し触れて、それで終わりだ。オレもリボーンさんも―――少なくともオレは―――それでよかった。満足していた。


けれど。





「ん…」





今日はいつもとは違う。


リボーンさんは何度も角度を変え、オレの唇に触れる。


そしてリボーンさんの舌先が、オレの口内へと入ってくる。





「ん…ぁ……」





オレもリボーンさんに応える。


舌をおずおずとリボーンさんの口内へ。舌と舌が触れて、絡まって。


身体が、顔が、熱くなる。


…やがて、どちらともなく顔を離した。





「リボーン、さん……」


「…不安にさせてすまない。お前を抱くのを嫌がったわけじゃないんだ…ただ、」





リボーンさんは再度オレを抱きしめる。その力は強く、それでいて優しく。


リボーンさんはオレの耳元で囁いた。





「…お前の身体の負担にならないように出来るか、それが心配だっただけで」





リボーンさんの心遣いに泣きそうになる。


そんなの、全然気にしないでいいのに。





「リボーンさん…」





思いを込めて、リボーンさんの名を呟く。


そして今度は、オレからリボーンさんの唇へとオレの唇を重ねた。


―――背に軽い衝撃。


気付けば、オレは寝具に押し倒されていた。





「ぁ…」


「…なるべく、優しくする。だけど苦しかったり痛かったりしたら、すぐに言うんだぞ」





真剣な表情で、リボーンさんが告げる。


リボーンさんの思いが伝わってくる。


オレは小さく頷いて。


オレたちはまた、唇を重ねあった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・