最初は、友愛だった。そのはずだ。そのはずなんだ。


最初の友達。


こんな自分を慕ってくれる彼。


一心に向けられる好意の塊は、その感情の大きさに最初こそ戸惑ったもの…次第に慣れ、心地良いものとして感じるようになった。


二人、他愛のない話をしているだけで楽しかった。幸せだった。本当だ。





けれど。





ある日、気付いてしまった。


彼が、あいつを見る視線。


自分に向けられるものと、意味合いの異なる好意の眼差し。


その違いに気付いた時、自分もまた、彼へ抱いている本当の気持ちに気付いた。





そして、気付いた時には遅すぎた。





その頃には、彼はもう、あいつの事しか考えてなかった。


そして、あいつもまた…彼の思いに、応えて。





オレは嬉しかった。そのはずだ。


オレは二人とも好きだったから。





大好きな二人が、思い合って、結ばれて…幸せになることが、嬉しくないわけがない。


きっと、それは間違いない。オレは二人を祝福したんだ。心から。





だけど。


だから。





気付けなかった。





二人の幸せな姿を見る度…自分の心が、軋んでいったことに。


それは少しずつ。蝕むように。苛むように。





だってオレは、どうしようもなく彼が―――獄寺くんが、好きだったから。





たとえその思いが、報われないものだとしても。


たとえその気持ちが、誰にも伝えられないものだとしても。





オレはその気持ちを隠したまま、彼らと同じ道へ。


オレは二人の一番近くで、二人を見続けた。


幸せそうだった。事実、幸せだったのだろう。


二人はお互いがいればそれで満足そうだった。二人きりでも手を触れあい、抱きしめあい…小鳥がさえずるようなキスをして、それで終わり。同じベッドに入っても眠るだけ。





獄寺くんは性というものにあまり興味がなさそうだった。それは彼の複雑な家庭環境に関係しているのだろうか。


あいつはよくこれまで我慢していたものだ。獄寺くんとしたいという気持ちはあっただろうに。





だけど。


なのに。





ある日、獄寺くんは襲われた。





獄寺くんの身体は、無残にも他の男に汚されたのだ。


でもまあ、これまでよく持った方とも言えるだろう。





獄寺くんは魅力的だった。魅力的過ぎた。





獄寺くんを慕わない者はいない。獄寺くんを思わない者はいない。


それは純粋な親しみから…下卑た肉欲の対象としてまで、様々で。





…ふと、思う。


もし、獄寺くんの隣にいるのがオレだったなら。





絶対に、守り抜いたのに。





そんな有り得もしないイフを、なんとなく思っていると…部屋に響く、ノック音。


失礼します、という言葉と共に扉が開かれ…


彼が。


獄寺くんが、入ってきた。





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