オレは獄寺くんを―――まるで恋人のように優しく―――抱きかかえ、少し考えて部屋を出た。
向かう先は彼の…獄寺くんの自室。
「じゅう、だい……」
獄寺くんが弱々しくオレを呼ぶ。
その眼に浮かぶ感情は、戸惑い。
まだ獄寺くんは、こんなオレを信じている。
何か納得の出来る事情があると、信じている。
なんて愛しい獄寺くん。
なんて愚かな獄寺くん。
…なんて悲しい、獄寺くん。
誰にも会うことなく、目的地へ。
扉を閉め、鍵を掛け…
獄寺くんを寝具へ放り投げた。
「………っ」
軋む寝具。
オレは獄寺くんにゆっくり近付き、そっと触れ―――その唇に、口付けする。
「ん―――!?」
獄寺くんは眼を見開かせる。
オレは獄寺くんの唇を舐め、そのまま舌を口内へ。
「んん…っ」
獄寺くんは口を閉じようとするけれど。
それは無駄な努力に終わる。
薬で身動きを封じられた、力の入らない身体。
抵抗など、ないに等しい。
オレはゆっくりと、時間を掛けて獄寺くんを味わう。
「ん、ん……ぅ…」
獄寺くんの眼からは拒絶の涙があふれて。
オレは口を離し、獄寺くんの涙を舐め取る。
「は―――ぁ…」
獄寺くんの口から吐息が漏れる。
オレは獄寺くんの衣類に手をかけ、脱がし始めた。
獄寺くんの身体が強張る。
「じゅ―――だいめ、やめ…っ」
オレは獄寺くんの言葉に耳を貸さず、一枚、また一枚と剥いでいく。
獄寺くんの白い裸体がオレの目前に広がる。
羞恥に染まる獄寺くん。
オレはロープを取り出して。
獄寺くんの両腕を後ろ手に回して、縛る。
きつく―――きつく―――――きつく。
「ぃ―――…っ」
獄寺くんの顔が、苦痛で歪む。
可愛いなあ…
オレは獄寺くんに頬擦りし、耳を舐める。
「ん―――ん…」
獄寺くんの必死の抵抗を無視し、舌をそのまま首筋へ。
吸い付き、白い肌に赤い花を咲かす。
獄寺くんが涙を零す。
「10代目…っどうして……こんな…」
………。
どうして、か…
オレは獄寺くんを見る。
獄寺くんと眼が合う。
「10代目…オレ、10代目に何かしてしまいましたか…? 10代目の気に障ることを…だから…こんな……」
「…違うよ」
そうとも。獄寺くんは何もしてない。獄寺くんは何も悪くない。
オレは獄寺くんの胸に口を落とし、飾りを吸った。
「や―――」
獄寺くんが身を捩る。
オレは獄寺くんの胸にも赤い花を咲かせながら、
「ただ…骸もしてたし、オレも、もういいかなって」
「―――え?」
オレは携帯端末を取り出して、操作する。あの日を映し出す。獄寺くんに向ける。
獄寺くんの顔が青褪める。
「な―――ぁ―――」
…あの日、獄寺くんの意識は幻術の世界に囚われていたから、現実の身体に何が起こっていたかなんて知らない。リボーンも告げなかった。
それをあえて、知らせる。見せつける。
獄寺くんの身体が恐怖で、嫌悪で、震える。
オレはリボーンが入ってくる寸前で画面を消す。獄寺くんには自分がどこまでされたのか分からない。
「10代目! 今のは…いつの……」
「さぁね」
オレは獄寺くんの脚を大きく開かせた。
「っ―――!!」
「綺麗だよ、獄寺くん」
オレはローションを取り出して、獄寺くんの秘部に塗りたくる。
「やめて下さい、10代目!!」
「気持ちいい?」
「気持ち悪いです―――…っ!!」
オレは獄寺くんの中に指を入れる。
獄寺くんは身を必死に捩じらせて。
「ゃめ……ぁ…っ! 抜い…て……くださ…!!」
オレは獄寺くんの声を聞きながら指を動かし、獄寺くんの中をほぐしていく。
辺りにはただ、獄寺くんの抵抗する声が響いた。
…ねぇ、リボーン。
どうして、獄寺くんから眼を離したの?
おかげで獄寺くん、泣いてるじゃない。
まあ、リボーンをそう動かせたのは、獄寺くんを泣かせているのはオレなんだけどさ。
オレは指を引き抜いて。
自分でも驚くほど膨張していた自分自身を、獄寺くんの中へと押し込んだ。
「ぃた―――ぁ…っ」
嫌がる獄寺くんを無視し、無理やり中に入っていく。
ほぐしが足りなかったのだろう、獄寺くんの中は狭く、きつかった。
「やめ…抜ぃ………ぁあ!!」
獄寺くんの懇願を無視し、オレは激しく動き出す。
獄寺くんの口から苦悶の声が漏れる。
襲い掛かる痛みに、苦しみに、獄寺くんに出来るのはただ耐えることだけ。
やがてオレは、獄寺くんの中に欲望を弾けさせる。
獄寺くんの中に―――すべて出し切る。
「は―――ぁ…―――」
息も絶え絶えな獄寺くん。
今自分が中に出されたことも分かっていないみたい。
ああ、なんてこと。
欲しいものを手に入れるだなんて、こんなにも簡単。
誰もが二人に気を遣っていただけで。
ほんの少し倫理を外すだけで、欲しいものはこんなにもすぐ手に入る。
きっと二人は、純粋に運が良かったんだ。
こんな世界で、奇跡のように純愛だった二人。
こんな世界で、夢のように幸せだった二人。
―――そんな時間も、もう終わった。
オレは体勢を変える。
自分を獄寺くんの下に。
獄寺くんをオレにまたがらせて。
また、入れる。
「ぅ―――あ…」
先程よりは、すんなりと入った。
獄寺くんは、苦しそうだったけど。
これから、もっと苦しめちゃうけど。
「…いい眺めだよ、獄寺くん」
「ぇ……」
獄寺くんが、呆然とした様子でオレを見る。
オレが何を言っているのか、分かっていないみたい。
あるいは、無意識のうちに理解を拒絶しているのか。
させないけれど。
「リボーンは、こんないい眺めを眼にしていたんだね」
「ぁ…」
「流石にこのアングルからのカメラは仕掛けてなかったからさ。生で見れて嬉しいよ」
汚された身体を、愛する人の手で清めてもらった思い出。
二人の愛の記憶。
獄寺くんが思い当たったらしい。一瞬で顔が青褪める。
オレは獄寺くんに更に傷を。
獄寺くんの中の神聖な場所に、穢れを。
「…上書きの上書きに、なるかなあ?」
「あ―――駄目…駄目ぇ!!」
獄寺くんが狂ったように暴れだす。
オレから抜け出そうと、もがき出す。
オレは獄寺くんの腰をしっかりと握っていたから、それは無駄な動きに終わるんだけど。
むしろ。
「ああ、自分から動いてくれるの?」
リボーンにしたように、と放てば獄寺くんはぴたりと動きを止めた。
獄寺くんは身を震わせ、硬く眼を瞑り、歯を食いしばる。
もう、それぐらいしか出来ないんだ。
抵抗は無駄に終わり。
むしろ、オレに奉仕しているような状態となり。
かといって何もしないでいると、自分の中に入っているものにより一層意識が向いて。
…八方塞がりだね。
オレは強く獄寺くんを突き上げる。
「――――あぁ!?」
獄寺くんが驚きに、衝撃に、甲高い声を上げる。
…なんて愛らしい。
オレは獄寺くんを何度も何度も突く。
…そろそろ、また中に出そうかと考えていると。
―――辺りに薄い霧。
覚えのある気配。
…ああ、来たんだ。
まあ、来ないはずがないよね。
「クフフ―――楽しそうですね」
「…まぁね」
骸が現れる。
あの日から、獄寺くんに手を出した日から姿を消した骸が。
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