Roman - 恋人からの伝言 -
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相手の名前を呼べば、僅かに反応する気配。そういえばクロームと会うのも思えば久し振りだな…こいつはこの騒ぎの中今までどこにいたのか。

つーか本当に何の用なんだ…見舞い…?まぁ、いいか。

これも何かの縁。と思っておこう。


「クローム」

「…何?」


もう一度名前を呼ぶと、今度はクロームも返答を返してきた。


「伝言を…頼みたい」

「伝言…?」

「そう…オレから……リボーンさんに……」


もうじき、目だけでなく口も使えなくなりそうだから。

もうじき、足だけでなく腕も動かなくなりそうだから。


―――もうじき、死んでしまいそうだから。


苦笑する。この嘘付きめ。

死なないと、あの人に告げたくせに。

なのにあの人と愛人なって…一週間も経たないうちに死にそうになってるなんて。


…リボーンさんに知られたら、愛想を尽かれそうだ。

そう、思いながらも言葉を紡いでいく。



「…忘れないで下さいって」



どうか、どうか。


あなたはどうにも簡単なことをすぐに忘れてしまいそうですから。

だから、どうか。忘れないで下さい。だから、どうか。覚えていて下さい。

それが…あなたの愚かな恋人の、最後の願いです。


……………。

………。



彼は私に言葉の限りを尽くすと動かなくなりました。

もう彼は苦痛に顔を歪めることもなく。呼吸で胸を上下させることもありません。死にましたから。

結局リボーンさんはようやく手に入れた最愛の人をも失くしてしまいました。


やはり呪いに対し何の耐久力もない人間には、荷が重かったのでしょう。

…それも、呪いを抑えるおしゃぶりがなければなおのことに。


―――私が…殺したようなもの……


私はポケットに手を伸ばす。中には色鮮やかな合計七つのおしゃぶりが。

骸様の命により、獣の姿となり奪い。あるいは弱った彼らを殺して奪った合計七つのおしゃぶりが。


これがあれば…きっとここにあったのは。もう少し別の結末だった…

真相を知らぬとはいえ、彼は私を信じ………そして伝言を託した。


それに応えられるのは、私だけ。

私は―――


1.伝言を伝える

2.伝言を伝えない

3.私はあくまで傍観者